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62の舟券  作者: 広瀬修一
4/22

62の舟券その1


広瀬はいつになく高ぶりをおぼえていた。


いつもは200円のバラ券を2点から3点で買うと決めていて、

それをかたくなに守っていた広瀬だが、締め切り間際の一点買い

だったので勢いで一枚1000円の舟券を買ってしまったのだった。


その時の広瀬にとっては特券の1000円1点買いは勇気がいったのである。

たった400円ぐらいの差だと思うかもしれないがギャンブルをやる人間が

自由になる金額はそれぞれ決まっていて、一度それを越えてしまうと

的中した時の喜びも大きいので歯止めがきかなくなる、そしてそれを

くりかえすうちに最後は破滅の人生を歩むことになる、大げさに言えば

広瀬にとってはたった1000円がその後を決めることにもなる

勝負でもあったのだ。


競艇は競技の特性上、内側が有利であり、一般的に6コースを選んだときは

不利であるが左回りの競艇では6号艇が一番外側の6コースになることが多い。


2レースの6号艇はデビューしてから3場目で、いまだに勝ちの無い

新人の大竹で、今回も5着と6着でまったく人気が無い。


ところがレースが始まると指定席の6コースからトップスタートを決めて

内側の艇をいっきにのみこんでしまった。


2着も2号艇岡本が本命の1号艇の木下にせり勝ち、

6番―2番で入着、広瀬の興奮は6号艇のスタートで高まり

2号艇と1号艇のせりあいでハラハラドキドキし、2号艇が2着でゴールすると


「よっしゃぁとったでぇ」


と大声を出していた。


さすがに普段から冷静な榊原も興奮気味に


「配当はいくらぐらいつくんや」


と言った。


「締め切り5分前は60倍ついとったから200円買うとったら

一万二千円や、そやけどちょとぐらいは下がっとるかもしれんなぁ」


当時は集計の関係で5分前になるとトータライザーが消えてしまい

その間のオッズの変動がはげしかったので予想外の結果になることが多く

2レースの配当金は少しあがって6800円になっていた。


二人で払い戻し窓口にならんでいると


「6番が1着やから連単やったら万舟やったなぁ」


高配当の的中で興奮した声が聞こえてきた。


100倍以上の配当金がつくと100円に対して1万円の払い戻しになるので

競馬の万馬券に対し競艇では万舟券、略して万舟マンシュウと呼ばれている。



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