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62の舟券  作者: 広瀬修一
3/22

雨の琵琶湖競艇場


広瀬は三重県で働いていた時に競艇好きの先輩から津市にある競艇場に

よくつれていってもらったことがあった。


ちり紙交換の仕事は雨がたくさん降ると仕事が出来なくなる

そこで暇をもてあました広瀬は、隣の滋賀県にある琵琶湖競艇場に

よく出かけるようになっていた。


広瀬は榊原に


「競艇行かへんか おもしろいでぇ」


と、ときどき声をかけるが、まじめな榊原は「いやぁ俺はええわ」と言って 

ほとんど乗ってくる事はなかった。


その日は朝からどしゃ降りの雨だった。


「きょうはすごい雨やで、いっしょに行かへんか」


どうせまた断られるだろうと思いながら挨拶代わりに榊原に声をかけた。


「そぅやなぁ1度は行ってみよか、社会見学にもなるしなぁ」 


思いがけない返事が返ってきた。


広瀬は


「なにかあったのかな」


と思ったが聞き出そうとはせず榊原が仕事で使っている一台の軽トラックに

乗りあわせてアパートを出た。


京都から山科そして琵琶湖にぬける通行量の多い国道1号線はどしゃ降りの

雨のせいで大渋滞であった。


のろのろと走る前の車を見ながら広瀬は


「こんなんやったら1レースは間に合わんわ、もうしゃぁないなぁ」


と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


なにげなく前の車を見ていた広瀬が突然


「あ!」


と声をあげた。


「どないしたんや」


「いやなんでもない」


「はっきり言えや気になるやんか」

 

「うーん気のせいかもしれんけどな前の車のナンバー見とったらなんや

煌めいた言うんか、光ったようなぶわぁと大きいなったような妙な感じに

なったんや」


その車のナンバーは京都55.な.45-62だった。


ようやく琵琶湖競艇場の前にある駐車場に着くと二人は降りしきる雨の中を、

傘も差さずにスポーツ新聞を頭にのせて走り出した。


場内に着くとすでに1レースは終わっており、2レースの締め切り

5分前が近づいたことを知らせる軽快な音楽が鳴り響いていた。


少し焦りながら電光掲示板を見て1レースが本命1番人気の4-5で

決まっていることを確認した広瀬は


「あれ!」


っと思った。


「1レースが4-5ならもしかすると次のレースは6ー2で決まるかもしれない」


さっきの車のナンバーを思い出していたのだ。


オッズを見ると60倍と出ている、この当時は1レースから

4レースまでは1着と2着が逆でも的中になる2連勝複式の舟券だけの発売で、

5レースからは1着2着を順番に当てる2連勝単式の2種類しかなかった。


「さっき見た車のナンバーのひらめきはこれやったと思うんや、

だまされたと思て2-6を200円券1枚でも買うたほうがええでぇ」 


榊原にそう言うと広瀬は特券売り場まで走って行き穴場に千円札を1

枚入れて


「6-2いや 2-6を1枚」 


と告げた。


当時は特券と呼ばれる1000円券とバラ券と呼ばれる200円券の

2種類しかなく穴場と呼ばれる窓口も別々だった。


榊原は200円券を1枚買ってきて


「なんも知らんからお前の言うたとおりに買うたわ」


と広瀬に告げた。 



二人はプールがよく見渡せるスタンドに向かった。



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