初夏の幻影
梅雨も終わりに近づき、今日は晴れ。
空には湧き上がるような雲が浮かんでいる。
降り注ぐ太陽の光は強い。目が焼けるほどの強さではないけれど、外にいると目を細めたくなるような日差しが地上に降り注いでいる。
そんな昼下がり。
僕が縁側でラムネを飲んでいると、門の向こう側に一人の少女が立っているのが見えた。
年齢は十五か十六くらいだろうか。
僕は十六で、門の向こう側に立っている少女がクラスメイトの女子と同じくらいの年代に思えることから、大雑把に年齢を導き出してみた。
それにしても、彼女はとても魅力的な人物だ。
当然、知り合いではないので性格は知らない。ただ、容姿が僕の好みに一致していたのだ。つまり、僕から見て魅力的、ということである。
何といっても、その黒い髪。前髪はピンで留めているのかあまり見当たらないが、後ろ髪はとても長い。その髪は肩甲骨より下の辺りにまで達している。しかも、不思議なくらい直毛。表面には艶があり、黒髪ながら重苦しくは見えない。
体は華奢めで、心なしか病弱そうな雰囲気もある。
しかし、それでいて、身にまとっているのは白いワンピースだ。それも、キャミソールをワンピースにしたような形のもの。その色みゆえ派手ではないが、意外にも露出は多い。
彼女の目的は我が家への訪問なのだろうか。門の前に立っているのだから、恐らくそうなのだろう。ただ、そのわりには動きがない。少女は、薄い唇に微かな笑みを滲ませたまま、門の前に佇んでいる。
ワンピースの裾からは出ている脚が見たくて、僕はさりげなく立ち上がる。
少女が僕の動きに気づいた様子はない。
僕は青みを帯びた瓶を片手で握ったまま、眼だけをぬるりと横に動かし、少女の脚へと視線を向ける。
そして気づくのだ。
彼女が人ならざるものであることに。