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みりけん!改~ようこそ聖パペロミアン公国海軍県立三島高校司令部へ  作者: かいちょう
発令!第六号作戦「夜戦突入!超大型戦艦を撃滅せよ!!」
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今回はそんなにヤバイ相手なの?

チンピラから手渡しで渡されたチケットを見ていろはが「は?」と言った顔を見せるが、チンピラは意味もなく鼻で笑うと元いた場所までゆっくりと戻っていく。

そして何事もなかったかのように仕切り直した。


「きみがこの世界で行ってきた疑似海戦で雌雄を決しよう!それはそのために用意した最高の舞台だ」


チンピラが成金サングラスをくいっと指で押しあげながら言ったが、なんだろう?さっきの光景がフラッシュバックして真面目にやってるんだろうが笑えてくる。


いろはも似たような感覚なのだろう、若干顔が引き攣っている。

たぶん笑いを堪えているが、相手が相手なだけにいつものようにじったりはしない。

本当にいろはらしくない。まぁ、それだけ下手に刺激したくないってことなんだろう。


そんないろはは渡されたチケットに目を落とす。

それは何か入場チケットのようなものだった。

そして、そのチケットに書かれている施設名は。


「クラブ アウトロ?」

「そう、オレがこの世界で拠点にしてるクラブの入場券だ。そこに特設ステージを用意しよう!」


そう言ってチンピラはわざとらしく両手を高々と掲げ、空を見上げた。

なんだそのナルシスト全開なモーションは?

こいつやべーな、自分に酔ってそう……


そんなチンピラの言葉にいろはが反発する。


「は?ふざけないで!要するにそっちの都合のいいステージってことじゃないの!罠があるってわかってるところにわざわざ殴りかかりにいくわけないでしょ!!バカなの?」


そんないろはの言葉に、チンピラは再びくいっと指で成金サングラスを押しあげてキザったらしい低い声で囁く。


「それでもくるかしかないよ……きみはね?」

「は?ふざけるな!何で胡散臭い所に行かなきゃならん!」


いろはは反発するがチンピラは気にせず要件を告げる。


「時間はこの世界の学校を満喫してるきみに合わせて放課後にしといてやろう。乗員は学生なんだろう?では戦場で待ってるよ」

「ふざけるな!まだ戦うとは言ってないぞ!」


いつもならすぐにでも海戦だ!と騒ぐいろはにしては珍しく戦う気がないと怒鳴った。

さっきからこいつ変だな……槍でも降ってくるんじゃないか?

まぁ、冗談言ってられないぐらいの相手なのかもしれんが……

と、今まで黙っていたオメガが口を開いた。


「来なければこの学校を吹き飛ばす。学校だけじゃなく街もみんな……」

「オメガ……本気か?」


いろはが珍しくごくんと唾を飲み込んで緊張の面持ちを見せる。

そんないろはとは対照的にオメガは至って平穏な調子で問う。


「冗談だと思う?」

「そんな脅しに屈するとで思ってるわけ?そもそも、この学校がどうなろうが、この街がどうなろうがうちにも聖パペロミアン公国にも関係ないんだけど?」


いろはが冷や汗たらたらな表情で吐き捨てた。

うむ、極めて聞き捨てならんセリフだ……それなら今夜我が家から追い出そう。

そう思ったが、誰がどう見てもハッタリなのは明らかだった。


いろはの言葉にオメガは一切反応しない。

逆にいろはは冷や汗が滝のように顔から滴っている。

やがていろはが折れた。


「く……」


今まで見てきた中でいろはにしては本当にレアな苦渋の表情を見せる。


「街を人質に取るとは悪党らしい!いいだろう!!相手になってやる!!そして正義は勝つと!!大和魂を見せてやる!!」


いろはが叫ぶと、チンピラは満足そうに片手を振って姿を消した。

そしてオメガもいつの間にかいなくなっていた。

せめて何か一言言って去ればいいのにと思っていろはを見るとやたらと渋い顔で。


「しまった……聖パペロミアン公国が貴様ら毛唐どもに負けるわけがない!と言うの忘れた」


と言っていた。

あぁ、いつになくシリアスだなと思ったがこいついつも通りだったわ。


「ちょっとちょっと!いろはちゃんなんか面白いことになってるじゃん!!」


変態メガネが目を輝かせていろはに近寄ってきた。

鼻息も荒く興奮している。

そして「あの新しい子もいたずらしがいがありそうね!」と犯罪宣言までしている始末だ。

ダメだこいつ……もう相手はこの変態メガネだけ滅してくれたらいいと思うよ。


「晃代、オメガにはあまり関わらない方がいいよ」


変態メガネの興奮具合にいろはが珍しく真剣なトーンで注意する。

言われた変態ネガネも真面目な顔になった。

なんだこいつら真面目な顔もできるんだな……できない人種かと思ってたわ。


「あの子そんなにヤバイの?それと一緒にいた男のほうも」

「ヤバイとか言うレベルじゃない……あれは手の付けようがない悪魔級だよ」


そう言うといろはがオメガの大まかな出自を語り始めた。

あのオメガという少女は生まれたときから強力な魔力を持ち、幼少期から頭脳明晰だったためホパチョメリ王国で建国以来最も有能な神童ともてはやされてたようだ。

ところが、とある魔導実験で国土の4分の1を消滅させてしまうと評価は建国以来最悪の人災って恐れられるようになる。


うわー、それは手のひらクルーだね~

てか国土の4分の1が消滅って国として大丈夫なのそれ?

よくわからんけど……


と思ったが、どうもホパチョメリ王国の国土の大半は人口密集地が少ない荒野らしい。

なら、そんなとこぶっ壊したところで問題ないのでは?と思うが、軍の基地やら研究所やら王族の別荘やらが一切なくなってかなりブーイングを受けたようだ。


なんでも軍の施設が消えたことは王族としてはクーデターのきな臭い噂もあった軍部だけに、そこは腹を抱えて三日三晩笑い続けて腹筋が崩壊して公務に支障が出たらしいが、王族の別荘や避暑地消滅には大激怒したのだという。

特に国王と皇太子が楽しみにしていた「ドキ!ベニヤ板で作るあなた好みのキュートなオートマタメイド(仮)」が完成前に消滅してしまったことに相当腹を立てたのだとか。


……何それ?ベニヤ板で作るあなた好みのキュートなオートマタメイド?意味がわからん……


とにかく、この事態にオメガの家族はお家取り壊しを恐れて今まで断っていた王家の無茶な実験や命令にも積極的にオメガを参加させるようにしてお上のご機嫌をとろうとした。

するとその実験でオメガは何食わぬ顔で隣国を3つくらい消滅させたという……


その実験には木製メイドの恨みがいまだ消えない国王と皇太子も立ち会っていたが、国を3つ消滅させた後にオメガが国王に笑いながら「次はどこ壊せばいい?」と尋ねたという。


うわ~何あの子、結構かわいい顔してたけどサイコパスね……


実験の結果を見て恐怖に駆られた国王は王族と王家の領地には手が出せない呪いをオメガにかけて、ほぼ国外追放に近い形で同盟国のウルスラ連邦の有力軍人の家へと嫁がせた……というのがオメガの経緯らしい。


なんというか、いろはの敵国の王族色々とツッコみどころ満載だろ!


「つまりあのオメガってのがマジヤバなわけね?」

「ウルスラ連邦もガチヤバだけど……」

「というと?」

「ウルスラ連邦は国土も広いし、軍隊規模デカイし、ウルスラ軍強いし、鬼畜だし、洒落にならない」

「うん、その言葉だけでなんとなく想像つくけど、想像つかない」


変態メガネの真顔の返しにどっちだよ!と突っ込みたくなったが、まぁ言いたいことはわかる。

国土広い国の軍隊はそりゃ規模もでかいし、鬼畜になるんじゃないの?知らんけど……


「そうだね~ウルスラ連邦を地球で例えると……」

「例えると?」

「冷戦最盛期のソ連軍」

「ほう」

「それに最盛期のナチスドイツ軍」

「ふむ」

「そこに最盛期絶好調のモンゴル帝国に七つの海を支配して最も輝いてた時の大英帝国がブレンドされた最も血気盛んだったローマ帝国って感じかな?」

「いや、余計に何のこっちゃわからん!」


時代も何もかもバラバラな国が挙げられたが、まぁとりあえずそういうことなんだろう。知らんけど……

うん、深く考えるのはやめた。要するに危ない国ってことだね?


「まぁ、そんな危ない女の子と危ないお国が今回宣戦布告してきたってことね」


変態メガネの言葉でようやくちょっとした危機感が湧いてきた。

なるほど、いろはが珍しくシリアスモードになったのも納得だ。

というか、そういうのはあんたらの世界に帰ってやってくれないか?

巻き込まれるこっちが迷惑だ!


とはいえ、今回は脅し文句で来なければ学校と街を吹き飛ばすと向こうは言っている。

人質にされている以上、戦場に行かざるを得ないのだ。


「しかも海戦の場所はウルスラ連邦のアジトだ。こんなの目に見えすぎた罠でしかない。広い国土のくせに狭い心のこすい手を使いやがる」


いろはが吐き捨てるように言うと変態メガネは大丈夫大丈夫!といろはの背中をぽんぽんと叩いた。


「相手が誰だろうと、どこで戦おうと大和魂で戦う、そうでしょ?」

「晃代……そうね、うちらがやつらを鉄底海峡に沈めてやるわ!」

「その意気その意気!」


変態メガネが楽しそうにいろはを煽て、いろはが精神論を叫びだした。

おい……大丈夫かよこれ?


「ところで、その対戦場所であるこのクラブ アウトロってどこ?」


言っていろははチンピラに手渡しされたクラブの入場券を見せた。


「クラブ アウトロねぇ?クラブなんかまず行かないから場所はわからないけど……たぶん駅前の繁華街かな?」


言って変態メガネはスマホで場所を確認しだす。

そこでふと疑問を口にした


「ところでそこって未成年入れるの?」


この疑問にいろはと変態メガネは揃って妙な顔でん?と唸った。


「クラブって未成年が入っちゃダメなの?」

「いや、酒飲んで踊り狂いながらドラッグするところでしょ?まず無理なんじゃないの?」

「睦月ちゃん、さすがにそれは偏見が酷すぎでは?」


いろはがまるで偏屈爺さんを見るような目で見てきた。

偏見なのは認めるが、あんたには言われたくないぞ?

と思っていると変態メガネがスマホを見ながら教えてくれた。


「ん~昼間のイベントは高校生でも入場できるみたいね~たぶん放課後来いってことだからこの手の未成年OKイベントでしょ?」


変態メガネはスマホの画面を見ていた顔を上げるとニターと笑った。

あぁ、なんか嫌な予感しかしない……

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