そんなこと言われてもトーシローにはわかりませんよ?
変態メガネがいろはが指さした艦船模型を見て目を丸くした。
伊勢を製作した今井先輩が慌てて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと!!あれは浮かべられるし航行はできるが安定性が悪い!ドローンを乗っけて運用するにはあまりお勧めしない!」
「じゃあさっさと調整して」
いろはは何でもない風に言った。
今井先輩はその言葉に呆れかえる。
「伊勢を修理してるところに追加であれの調整までなんて無理だ!」
「伊勢は家で修理してるんでしょ?じゃあ学校にいる間あれを調整すればいいんじゃない?」
やはりいろはは何でもない風に言った。
そこまで言うならいろはが調整すればいいんじゃないの?と思うのは気のせいか?
「じゃあ調整は任せるからその他は艦載機の購入に出掛けましょうか!」
いろはが鼻息を荒げながら言った。
というか、まだ誰も金を出すとは一言も言ってないんだがさきほどの部費徴収って完全にカツアゲな気がするんだが気のせいか?
「ていうか、そもそも根本的なことから聞いていい?」
お金の問題以前に気になっていることがあるので一様聞くことにする。
ろくでもない答えが返ってくるのはまず間違いないだろうが、そもそもの問題なので。
「どしたの睦月ちゃん」
「だからその名で呼ぶなと……あのさ、ドローン増やすって操縦する人どうするの?現状でも、もう手が空いてる人いないんでしょ?ドローンが増えても操作できなきゃ意味ないんじゃないの?」
根本的な疑問を口にするといろはは一瞬ぽかんとした表情になった。
そしてすぐに変態メガネに確認する。
「晃代、この学校って確かラジコンサークルあったよね?」
「えぇ、あるわね~」
「じゃあ問題ないね!」
いろはは云々と頷くと、それでは部費の徴収にと話題を元に戻した。
「いや!ちょっと待て!!今の会話のどこに問題ないって言い切れる要素があった?」
「何?睦月ちゃん別段心配する要素何もなかったでしょ?」
「いや、大有りだろ!ラジコンサークルって別にミリ研と何の接点もないんでしょ?」
「そだね」
「じゃあそのサークルを当てにしてるのおかしくない?」
「大丈夫でしょ、ラジコンやろうぜ!って言ったら無条件で仲間になるよ」
ものすごく人をバカにした顔でいろはが言った。
小学生じゃあるまいし、それはないだろ。
「というかラジコン好きだからって無条件で協力してくれるわけないでしょ?」
「ラジコンに乗り込んで操縦できるなんて知ったらすぐにでも飛んでくると思うけどな~」
いろはが何でもない風に言うがラジコン好きはラジコンを動かすことが好きなのであって、小さくなってラジコンに乗り込んで戦艦に乗艦してる気分を味わいたいわけじゃないと思うぞ?
そう思っているといろはが更におかしなことを言い出した。
「大体赤紙でも出せば喜んで志願してくるよ!」
「あんた、いつの時代の話してるんだ?」
「聖パペロミアン公国海軍がこのしがない県立高校で徴兵制を布いてやると言ってるんだ。ありがた~く徴用されるのが筋ってもんでしょ?」
「ごめん、何言ってるか全然わからない」
ほんとこの異世界魔法少女の脳みその中身は一体どうなってるんだ?
なんでこうも軍事方面に思想が回転するんだろうか?
魔法ばっかりの世界で過ごした人間にとって地球の科学技術のミリタリーは魅力的に見えるのだろうか?
「とにかく!ドローンの操縦は当てがあるから今はドローンを増やすことだよ!」
ドンドンと机を叩くといろはは再びミリ研部員たちにカンパを募りだした。
ほんと度し難いなこいつ……
「う~~ん、睦月ちゃんが脱ぐって言うなら考えなくもないけど~」
変態メガネがやらしい顔でこちらを見つめてくる。
うわ、キモっ!!
「いいよ~睦月ちゃん、はい脱いで」
「あ?殺すぞ」
笑顔でいろはが答えてこちらを向いたのでつい反射的に言ったら変態メガネといろは以外の部員がドン引きした顔になった。
自分ではわからないがどんな顔で言ったんだろうか?
う~ん、自分じゃよくわからないなー。
どことなく棒読み風なのは気のせいだろう、うん。
「も~睦月ちゃんほんと痺れるわ~」
「黙れ変態!」
とりあえずそこら辺にある適当な本を投げつけておいた。
変態メガネにはこんなことしても喜ぶだけとわかってはいるが……
そこでふと疑問が生じる。
「ねぇどんだけドローン増やすつもりかしらないけど、2隻目の戦艦に乗っけられるの?」
この言葉に部室内全員が反応した。
いろはは動きを止め、こいつ何言ってるんだ?って顔でこちらを見てくる。
なんだよ突然?
「今、何って言った?」
「は?いやだから戦艦に乗っけられるのかって」
「せ……戦艦?」
いろはがわなわなと震えている。
そして信じられないと言った表情で棚に置かれたラジコン船を指さす。
「あ、あれが戦艦に見える……のか?」
「へ?」
指さされた船を見てもさっぱりだった。
「平べったいね、タンカー?」
「た……タンカーだと?」
いろはは哀しみに暮れた顔で下を向くと首を振って手で頭を押さえた。
「一般人はなんでもかんでも軍艦を見たら戦艦と言っちゃう病気を患っているが……フラットな甲板の船を見るとタンカーと言っちゃう……これはもう手の施しようがないよ」
「普通の人は軍艦はみんな戦艦って思ってるわよ。なんか違いでもあるわけ?」
言うといろはは目の色を変えて怒鳴ってきた。
「あるよ!当然だろ!!あれは空母だよ、く・う・ぼ!」
「空母?あ~なんか聞いたことあるわ」
「あるわーじゃねーよ!航空母艦も知らないなんて日本人失格だよ!!」
「なんで異世界人に日本人失格って言われなきゃならないのか聞きたいんだけど?」
根本的なことを言うといろはがやれやれと肩をすくめた。
ほんと殴りたい態度取るなコイツ!
「南雲機動部隊を知らないなんて~もう日本人ダメダメじゃ~ん?そんなことだから~GHQの押し付けられた歴史観を丸々信じる日教組のお犬ちゃんになっちゃうのよ?ワンワン!あな~た真珠湾攻撃も日本の航空隊は特攻したとか超おまぬけ発言しちゃう~の?ヤダヤダ」
超絶バカにした顔で挑発的に言ってきたから本気で殴ろうか迷うところだが、なんだそのネットに蔓延する典型的な極右な発言は……
こいつ本性はネトウヨか?
「はいはい、で、戦艦じゃなくて空母ね。わかったわよネトウヨ」
「おい!だ~れがネトウヨだ!!」
「あんただよ!」
いろはがムキーって顔で地団太を踏んだ。
どうでもいいが本当はこいつ日本人だろ?
「で、戦艦じゃなくて空母だとドローンは運用できるけど砲撃できないんじゃないの?」
「そりゃね」
変態メガネがものすごい笑顔で答えた。
なんだ?この変態メガネ、解説料金で何かセクハラする気じゃないだろうな?
「実際問題、火力の面では航空戦艦の伊勢で十分こと足りるからね。欲しいのは倍の数の航空兵力を運用できる艦載機搭載能力だから……相手が潜水艦と巡洋艦である以上、戦艦の数を増やす意味はないのよね」
変態メガネがペラペラと語りだした。今のところセクハラしてくる気配はない。
普段から解説役に徹してくれてセクハラしないならありがたいのだがな?
まぁ、解説されたところでさっぱりだが……
「そういえばさっきから気になったんだけど巡洋艦って何?」
「は?」
「へ?」
疑問を口にすると再び部室内の時間が止まった。
あれ?何か変なことでも言ったか?
「睦月ちゃん、巡洋艦を知らないの?」
「だから何それ?戦艦に潜水艦、飛行機を乗っける空母はわかったけど」
「これだから一般ピーポーは……軍用車両に砲塔乗っけてたら何でもかんでも戦車と言っちゃう人種は嫌いなんだよな」
いろはがブツブツと言った。
似たようなことを部室内の他の部員も口々に囁きだす。
あれ?どうした?空気がおかしくなったぞ?
う~む、どうやらミリタリーオタク達にとっての地雷を私は踏んでしまったらしい……
助けて!ひとみ先輩ー!!




