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6.魔物を倒そう


 前回のあらすじ 元華の女子大生が覚えたのは泥魔法だった。


 ▼


 バチュンと右手から勢いよく弾けた水は土壁を凹ます程の威力があった。


「次は土魔法……ああ、そういう。 ……やっぱり泥魔法を挟まないとダメって事か」


 泥魔法を覚えた次の日から魔法の試行錯誤が始まった。 キッカケになったのは全身を埋め尽くす泥を処理した後、念の為右手シャワーを使おうと水魔法を使うと、泥魔法と同様の魔力循環が起こり、自分自身に凶悪とも言える水の攻撃を加えてしまった。 完全に油断していた私は自分の魔法によって首に深刻なダメージを負うという自爆をやらかしたのだけど、治癒魔法で何とか命を取り留めた。

 

 まさか僅か数分の内に2回も死にそうになるなんて思わなかった。 どっちも自分の魔法のせいなので本当に笑えない。


 どうしていきなり水魔法が使えるようになったのかという検証を行っていくと、どうやら泥魔法を使った直後なら水魔法でも土魔法でもほぼノータイムで魔法が放てるという事がわかった。


「だけど今やったみたいに水魔法から土魔法の連続使用はできなくて必ず間に泥魔法を挟む必要がある、と」


 これも制約かと言われたら確かにそうなんだけど。


 これまでの制約とは比べ物にならないくらいには軽い。 今は咄嗟の判断が必要になった時、水魔法とか使っちゃいそうになるけど、泥、水。 泥、土。 と使うクセを付けていけばそう遠くない内に無意識に使えるようになるはず。 

 私は僅かな魔力で泥魔法を使い手から微量の泥を出す。 直後土魔法を使うとやはり体内を循環し、円錐状の鋭い土槍が土壁に突き刺さった。


 こわ。


 撃ったのは自分なのにその恐ろしい威力を目の当たりにして、若干引いた。

 ちなみにやはりというべきか泥魔法の直後に治癒魔法を使おうと濃度を変えない水の魔力を循環させてみたけど治癒は発動していない。 空腹感が消えないのが何よりの証拠だと思う。 私のような特殊体質でもない限り魔力濃度を変えるという発想すら生まれないだろうし、世界唯一の治癒魔法の使い手という話も納得出来た。 

 ここに来て一気に召喚された5人に並べた気もするけど、私の事を切り捨てた彼等の元へ戻るつもりはない。 別に恨みとかそういう感情もない。 もし私が彼らの立場なら同じ事をしたのだろうから。


 私がこのダンジョンに引きこもる理由は奴隷商に見つかりたくないというものが大半を占めていたけど、これくらいの力があれば、仮に見つかっても強引に突破出来る気がしなくもない。 怖いから確実に突破出来るとわかる強さが得られるまでは外に出る気もないけど。


「そもそも見つからないのが一番だよね。 その為にも衣類の入った宝箱を探さないと。 そのついでに木材も」


 現在の手持ち服は奴隷が着る布の服3着のみで武器は……強いて言えば蟻の足? ……うん、魔法が使えるとはいえ、正直よくやってこれたね私。

 

 魔法の検証も終わり、未だ魔力も8割以上残っていたけど、昨日二度も死にかけたので念には念をで明日から行動すると決め、その日は早めの就寝を取った。


「よーし、今日からの目標は上層に行けるようにこの層の魔物は片っ端から倒しながら宝箱を探す。 それでもってレベルアップの弊害である眠くなるスパンが長くなってきたら上層に向かう。 こんな感じでいいかな」


 最重要課題として泥魔法を必ず最初に挟める事。 これを徹底出来ないと一瞬の判断が必要になった時必ず失敗する。

 この層の魔物ならば動きは知り尽くしたも同義なので多少の失敗がそこまで響く事はない。 だからこそ、この層で完璧にモノにする。 


 と、私の中のイメージで、攻撃魔法である水魔法と土魔法を使う為の準備段階で泥魔法を使うという認識を持ち住居を出たけど、その認識に大きな誤りがあった事を僅か10分後に知る事になった。


 泥魔法、つよっ。 こわっ。


 泥魔法により何の抵抗も出来ず泥の中に沈んでいき絶命した芋虫型の魔物を見て、心の底からそう思った。 始めは軽い気持ちだった。 せっかく泥魔法を使わないといけないんだから、ただでさえ動きが鈍い芋虫型の魔物の足元に泥を作って更に動きを鈍らせれば次に繋がる魔法の命中率が上がるとか、そういう安易な考えだった。

 それがどうだ。 芋虫型の魔物の足元にピンポイントで作られた泥沼によって簡単に沈み出し、身体をビタンビタン動かそうともがくが、逆に沈む速度を上げ、あっという間に見えなくなってしまった。 ドロップ品が泥の上に出現したのは魔物が完全に沈んでから僅か十数秒後の事だった。

 相手はただただ足元から沈んでいくだけなので攻撃の音はなく、響くとすれば魔物のもがき苦しむ断末魔だけ。 外道。 まさしく外道。 落とし穴に魔物を落として上から土壁で押し潰すのが正攻法かと言われるとそれも外道の部類に入るかもしれないけど、泥魔法は存在そのものが外道である。 空を飛んでいたり、体積が極端に軽かったりすればまたわからないけど、それ以外の魔物は容赦なく生還率0%の泥沼に飲み込まれていくであろう。 それは実際に死にかけた私が言うから間違いない。

 それでも相当な力があって泥を抜けてこれそうな魔物がいたとしてもその場合は泥沼の上から厚めの土蓋を置けばいい。 自分で思い付いてもし自分がされたと思うとぞっとする。 

 

 一応泥魔法は地面が土じゃないと使えないと思うけど、私が土だけじゃなく岩肌も操作出来るようになれば、その有効範囲は果てしなく広がる。

 

「これ、逆に水と土を使う事が減っちゃいそう」


 思わずそう呟かずにはいられなかった。

 なおその後、浅層を網羅するんじゃないかという勢いで魔物を沈め尽くしたけど宝箱は見つからず、10日程、眠くなったら帰るという過程を繰り返した所で遂にどんなに魔物を沈めても眠さがやってこないという状態にまでなったし、上層へ繋がる階段も見つけた。 ついでに岩肌の地面を泥化する事にも成功した。


 明日からはいよいよ上層。 気を引き締めよう。  


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