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1.仮住居を作ろう


 前回のあらすじ ダンジョンに放置される事に成功した。


 ▼


「むぅ」


 また足裏から出血した。 さっきの骨折程じゃないけど痛いものは痛い。 靴がないせいだ。

 奴隷商に捕まるまでは履いていたのに、捕まった途端身に着けていたものは全て脱がされてしまった。 その過程で衣服も他の奴隷と同じ簡素な布の服に替わっているけど、それに関してはちょっと感謝している。 何故ならその前は薄手の寝巻姿だったのだから。


 全身のどこに怪我をしようと濃度の濃くした魔力を全身に循環する必要があるので魔力効率は良くない。 だけどこのままの状態で歩くのは嫌だし怖いのですぐさま治療する。


「う。 まずい。 魔力残量が乏しくなってきたかも」 


 私の経験に基づくと、魔力が尽きる寸前になると全身から力が抜け、完全に尽きると回復するまで強制的に意識を失ってしまう。

 魔物が出現するダンジョン内において、意識を失うという事は当然死を意味するので、奴隷商人たちとある程度距離を取ったと認識した場所で暫定的な住居の作成に入る。


「ホントはもうちょっと奥ばった所が良かったけど」


 私の土魔法は名前の通り、土に影響を及ぼす事が出来る魔法なので岩肌部分には使えない。 正確に言えば才能と努力次第で岩石にも影響を与える事が出来ると講義で学んだけど、魔力残量の乏しい今その努力はするべきではない。 土肌の壁を探しながらうろうろ歩き回っていたところ、残り魔力が4割程度になった頃、探していた場所に出た。 本来入り口は目立たない場所に作りたかった。


 だけどここは道幅がとても広いから本道だよね。


 魔物の侵入を防ぐ為、元々入り口は土魔法で埋め立てるつもりではいたけど、魔物はともかくダンジョンを探索する冒険者が、その痕跡を見逃してくれるかどうかわからない。 とはいえ今の魔力残量から考えると他の選択肢なんてない。 


 人が住める程度の穴を作ろうとするならば、恐らく体内に残る魔力にほとんど余裕は残らないはず。


 経験上魔力残量が1割を下回ると眩暈や立ち眩みが起き始める状態になってしまうので、そうなる前に土肌の壁に手を当てて魔力を流す。 高濃度の魔力を維持し続ける必要がある水魔法とは違い、土魔法はそういった濃度調整は必要ない。 欠点があるならば、とにかく発動までに時間がかかるという事。 私と一緒に召喚された5人は、魔法を使おうと思った瞬間に発動出来ているのに対して、私の土魔法はどんな早くても30秒はかかってしまう。 実戦を考えると笑えるくらい使えない。

 ズズズという音と共に土壁が窪み始める。 目に見える表面部分だけが土で、すぐ奥から岩石でした、なんて事もなく順調に私の身長より大きめの道が出来ていく。 ある程度まで掘り進んだ時点で入り口に戻って土壁を作る。 このダンジョン内は岩も土も自然発光する成分を含んでいたので、外程ではないけど十分な視界の確保は出来る。 なので土壁を作った時点で真っ暗闇、なんて事にはならない。 


うーん。 土壁は周囲の壁に沿うように作れたとは思うけど、思ってるだけで外側からどう見えるのかは全くわからない。 怖いので、せめて部屋までの通路に落とし穴くらいは作るべきかな? うん、作ろう。


 ある程度真っすぐ進んだら次は直角に道を作り始める。 落とし穴の設置は曲がり角の直前。 


 ドラマや漫画だと、曲がり角がある所ではその手前で身体を壁に寄せて、顔だけ覗かせるというのが常識。


 だからこそ直前に落とし穴を設置する。 壁に張り付こうとした瞬間に落とし穴に落ちるというのは結構シュールな絵面だと思う。

 身長が2mくらいの人でも這い上がれない程の深さの穴を開け、そこに薄い土壁を敷く。 重力の問題で土壁が崩落するかなと思ったけどしっかり落とし穴の蓋になってくれた。 

 

「あとはお部屋だけ」


 お部屋と言ってしまうと何か可愛らしいものを想像しそうになってしまうけど、作るのはただの四角い空間。 空間を広げたい場所の土に触れていきその幅を広げていく。 ざっと六畳くらいの広さの部屋を作ってみたけどそこまで時間はかからなかった。


「あれ? 意外と」


 感覚上、魔力は3割弱くらい残った。 つまり通路と落とし穴と部屋を作るのに魔力総量の1割くらいしか使わなかったという事になる。 発動時間のデメリットはあるけどこれは嬉しい誤算。 

 せっかく魔力が残ったのだから、念の為部屋の入口にも壁を作り、更にその壁から1メートルほど離れた場所にもう一つ落とし穴を作る。 距離を空けたのは万が一土壁を破壊された時、崩れた土が落とし穴の上に落ちないようにする為。


 落とし穴まで作った時点でちょっとだけクラっときた。 保険(おとしあな)はいくら用意しても足りないとは思うけど、最低限やれる事はやったと判断したので、部屋の壁に沿って私は腰を下ろし、その流れのまま地面に身体を預けた。


「誰も来ませんように」


 そう願いを込め、ゆっくりと意識を閉ざしていった。

 

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