3.王立第二学園
王都への道のりは、平和だった。
街道を行き、キャンプと宿の宿泊を交互に行った。
皆も3回目のキャンプ時には、かなり慣れてきていたし、レオン以外の子供達ともそれなりに仲良くなった。農民の子供から宿屋の手伝いをしている子供、両親が冒険者で既になんどか狩りに行ったことがある者など、10歳ともなれば、もうかなり経験に差があった。
僕やレオンなどは字も読めるし書けたりするが、話せるがまだよく字を読めないという子も半数近くいた。
僕は、修道院では聖典を誰にでもわかるようにした絵本が、それを読み聞かせてもらったり、小さな子供に聞かせたりしていたから読み書きは出来るが、農業や狩り人の子供ではあまり機会がなくてもおかしくはないのだろうな。
学園によって国が良くなった理由に納得した。
文字が読めるかどうかというのは、意外と大事だ。
大事なルールや注意事項などを文字が読めないことで知らないことができたり、騙されたりしかねない。
王都についた後、僕たちは王都の東のはずれにある大きな建物へ向かった。
王都の誇る第二学園だという。
エリック達とは、ここでお別れだ。
今回は、彼らがいてくれたことから、あまり緊張せずに不安なく旅が出来た。
「みなさん、ありがとう。」
エリック達も含めた冒険者の皆さんにお礼を言う。
「まぁ、俺達もこういう時代があったしな。それに、何人かは後輩になるかもしれんのだ。気にするな。」
もう一組のパーティーのリーダーが少し恥ずかしそうに答えてくれた。
ベテランの冒険者たちで、大人の魅力がある人たちだ。
エドガー達も、流石に彼らには敬語だった。
冒険者たちが見えなくなるまで僕らは手を振った。
・・・
「しかし、あのアーディルってのは、将来有望だな。
キャンプを張ってても、まったく動じないし危なげない。
初めての旅で、あんだけ食うやつも珍しいよな。」
「まぁ、あいつはちょと特別ですよ。初めてあった時は5歳だったらしいんですが、ガチのサバイバルをしてましたからね。剣の筋もいいですし、有望株ですよ。
でも、孤児院育ちだから、もしかしたら退魔師を目指すかもしれませんね。」
僕らと別れてから、ギルドに併設された酒場で、エドガーや護衛をしてくれたパーティのメンバー達がアーディルを肴にしていたのだが、むろんそれを知るよしもなかった。
・・・
僕らは、学園の講堂というところに集められた。
学園の講堂には、ここまで一緒に旅してきた子供達の他にも、他の町から来たであろう子供達も集まっていた。大体100~120人ぐらいだろうか。かなりたくさんの子供たちが集まっていた。
ふつうこれだけの子供が集まると、かなりガヤガヤしそうだが、時間も日が沈んだ後や長旅の疲れもあってだろうか、意外と静かだった。
そんな中、恰幅の良い初老の男性が壇上にあがって、簡単な挨拶をした。
言葉や表情は優しいが、眼光は鋭い。
「まぁ、堅苦しい挨拶は抜きにして、よく無事にここにたどり着いてくれた。
皆さんを歓迎するよ。儂は、この第二学園の学長のヘラルドという。
疲れているだろうから、儂からは連絡を1つだけしておく。
今日と明日は、皆さんはここで寝泊まりをしてもらう。
明日は、朝食を食堂で食べた後、クラス分けの身体検査と学力検査をする。
しっかり寝て、食べておかないと厳しいから、今日は、ゆっくりと休むように。以上だ。」
なるほど。
明日は忙しくなりそうだな。