1.学園へ行く
ヴィジニアの町の修道院で過ごした日々は、僕の心を癒していってくれた。
けっして豊かな食事ではなかったが、毎日3度の食事にありつけたし、堅くて薄いものであったが、ちゃんと布団も与えられた。何より、雨風がしのげるし、服もちゃんと洗濯して綺麗なものを着れた。
規則正しく生活をして、様々なことを学んだ。
朝起きたら、朝の礼拝に出て、聖典から神々の話を聞き、皆で朝の食事をする。
その後は、畑仕事を手伝ったり、裁縫や神殿を訪れる人の案内などを手分けして行った。
昼は、大体ふかし芋を食べて、神殿の掃除をして過ごした。
結構、自由時間も多くって、年長者は小さい子の面倒を見たり、手先の器用な子供は、ちょっとした小物などを自分でつくったりしていた。
僕は、たまに遊びに来てくれたエリック達に、剣の使い方を教えてもらって木剣で素振りをしたりて身体を鍛えることが多かった。
やっぱり、過去のこともあって、自分を守る力が欲しかったんだ。
こうして、僕にとって恵まれた4年の月日が過ぎていったんだ。
・・・・
「おーい、準備は出来たか?」
エリック達が孤児院まで迎えに来てくれた。
エリックとその弟セドリック、そして幼馴染のティアは、僕が森を彷徨っていた時に助けてくれた命の恩人であり、今では憧れのお兄さん・お姉さんというような存在だ。
冒険者をしていて、良く孤児院にも遊びに来てくれていたし、簡単な剣の使い方を教えてくれたり、様々な冒険の話は、みんなに大人気だった。
「ええ。特に持っていくようなものはないですし、挨拶だけしたら、すぐに行きます。」
そういって、孤児院でお世話になった人や、年下の子供達に一人ひとり挨拶をしていった。
今日は、僕が孤児院を卒業する日になる。
この国-ヴィルジラ王国-では、子供は10歳になる年の4月に、王都エスクードやそれに準ずるような大都市にある学園に3年間学びに行くことになっている。
学費・寮費・食費まですべて無料なうえ、年2回の送迎まで行ってくれるため、よほどのことがない限りは、皆学園に行くらしい。
当然、孤児院の子供達も10歳になる年には学園に行くことになり、実質卒業することになる。
孤児院のような寄付や援助を受けてやっているところが罰則がないとはいえ法律に反することはできないし、経済面でもいつまでも面倒を見れないということもあるだろう。
そんなわけで、僕は王都へ向かうことになったんだ。
とはいえ、もちろん自分達だけでそのようなところに行くわけではない。
それでは、魔物や人さらいなどの格好の餌食になってしまう。
なので、この時期と夏休みの時期には、わざわざ学園と主要な町の間には、専用の護衛付きの乗合馬車が用意される。そして、その護衛の依頼をエリック達も受けていたんだ。
「よし、挨拶はすんだか?」
「はい。」
泣きながら見送ってくれるシスターや子供達に大きく手を振って、僕はエリック達と馬車の集合場所へと向かう。悲しい気持ちもあったけれど、不思議とワクワクして涙は出なかった。
集合場所には、近くの村から来た子供達も含め20名程度が集まっていた。
さらに、綺麗な銀に獅子の紋章の描かれた胸当をつけた精悍な青年が、5人ぐらいの冒険者のパーティーと打ち合わせをしていた。
「おっと、いけない。俺達も挨拶しに行かないとな。」
エリック達は、あわててその青年のところに駆けて行った。
後で聞いたが、あの青年は、今回の護衛の依頼人の騎士様らしかった。
「へぇ、結構人がいるなぁ。皆同じ年なんだろうか?」
僕は、ちょっとドキドキしながら、独り言を呟いていると
「君も学園に行くの?おっきいね!!」
と後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこには品のよさそうな洋服を着た男の子がニコニコしながら立っていた。
身長は、僕よりも頭一つは小さい・・・というよりも、僕だけが頭一つは大きかった。
「うん。そうだよ。」
僕がそう答えると、その答えを聞くよりも前に、彼はしゃべりだした。
「僕はね、レオンっていうんだ。君の名は?」
そういいながら、手を差し出す。
「ああ、アーディルっていうんだ。よろしく。」
そうして握手を返した。
これが、レオンとの出会いだった。
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