3.スライムを喰らう
稚拙な文ですので、混在しますが、このあたりからアーディルの一人称になっていきます。
記憶は、断片的で、このあとのことはよく覚えていない。
怒号と叫び声が聞こえた気もするが、夢か現実かもわからなかった。
とにかく、通路に入った後しばらく行くと地下水路らしき場所に出た。
人工的なものではなく、自然にできた川が流れていた。
おそらくは、飲み水の確保か排泄物を流していたのかは定かではないが、おそらくはそういう場所だったのだろう。
そこから先、気がついた時には、森を彷徨っていた。
後になって思えば、服が濡れていたし、おそらくはその地下川を泳いだか流されたのだろう。
日も沈み、周りも暗くなってきていた。
既に、元居た建物がどこにあるのかもわからないようになっていた。
酷く、頭が痛い。喉もカラカラだ。
足の裏も剥けて血がにじんでいる。
「なんでこんなことに・・・」
視界も焦点が合わなくなってきた。
こうして、僕は意識を失った。
・・・
「痛い。」
ふくらはぎあたりに、針でつつかれたような痺れるような痛みを感じて目を覚ます。
見ると、ふくらはぎから腰のあたりに、透明なぷにぷにとした大きな液体が覆いかぶさってきている。
その液体は、ゆっくり、本当にゆっくりと動いていた。
「スライム?!」
僕にもわかる魔物だった。
というのも、スライムは、ゴミ処理のために、村でも飼われている魔物だったからだ。
飼われているといっても、意思疎通が図れたり、懐いてくるわけではなかった。
スライムは、何でも食べる。
とはいえ、消化のスピードには差があるため、それを利用して鉱石から鉱物だけを取り除くことができるらしかった。
もちろん、スライムについて、それ以上に詳しいことはわからない。
だけれども、このままでは僕が食べられてしまうのではないかと思った。
あわてて、近くにあった石をつかむと、スライムの目玉に向けて石を殴りつけた。
後で知ったけれど、あれはどうやら目玉ではなく<核>というらしいけれど。
何度か打ち付けていると、スライムはどろっととけるようにハリが無くなって動かなくなった。
・・・
それにしても、喉が渇いた。
さっきは必死に動いたけれど、意識が朦朧としている。
何か飲みたい・・・。何か食べたい・・・。
そして、視界にそれ<死んだスライム>が映った。
今考えれば、どうかしていたんだと思う。
村でも、スライムにはむやみに触っちゃいけないって言われていた。
スライムには、毒や酸があるし、いろいろなばい菌も身体に飼っているって習った。
食べれるなんて話も、食べたなんて話も聞いたことがない。
だけれども、僕にはそれを判断するだけの思考もなかった。
そして、誘われるようにスライムを吸い込んだ。
・・・
「ゴホッ、ゴホ」
土の味と胃液のような酸っぱい味がした。
そして、喉の奥が焼けるように痛かった。
大きく咽ぶと、胃の中が強烈に痛み出した。
喉をかきむしるように地面の上を転がる。何度か痙攣のようなものを起こしながら、腹を抱えた。
やっぱりスライムなんか食べるんじゃなかった・・・。
そう後悔をしていたが、しばらくすると喉や腹の痛みが嘘のように引いていった。
そして、僕はなぜか「わかった」んだ。
僕は、もうスライムを食べても平気だと。
苦悶喘ぎながらも、スライムを食べることに成功したアーディルは、自らに不思議な力が宿ったことを自覚するのであった。