錆びる植物
『ここで良いか?』
『ああ、ここなら誰にも分からないだろうな』
『俺たちだけの場所だな』
中学に入学する直前に父の転勤により引越しをすることが決まった。
友人と別れることがとても辛かったが仕方のないことだった。
そのことを皆に打ち明けた時、一人が話を持ち掛けた。
『タイムカプセルやろうぜ、森の中にさ』
この案に反対する者は誰も居なかった。
皆が大切にしていた物を煎餅入れに使っていた銀色の箱に詰めた。
『次に開けるときは、また皆がここにそろった時だ』
『うん』
箱はよく木登りして遊んだ枝の多い樹のそばに埋めた。
__それから数年後、火災によって森の殆どが焼けてしまったという。
あの樹も倒れてしまったと友人から聞いた。
箱も焼けてしまったかもしれない。
それでも、と僕は有休を利用し久々に森を尋ねた。
どれほどの時間が過ぎたのか忘れてしまったというのに樹の位置を覚えていることに不思議な感覚がする。
「……皆は今でも約束を覚えているだろうか」
僕が何故、突然そのような疑問を口にしたのか。
そしてどうしてこんなにもワクワクした気持ちを抑えきれず駆け足で友人を訪ねようと思ったのか。
__根まで焼け落ちたはずの空間に生えている、錆びを思わせる紅色を含んだ銀色の草原の下に埋まっているものを今すぐにでも見たいと胸の中が叫んでいるからだ。
あなたの思い出は咲いていますか?




