33話 モリアント・マネ
「貴方確か幽莉さんって言いましたかな?」
幽莉がゴミ棄て場の食堂で食事をしていると、黒い犬をつれたよく肥えた男が突然話しかけてきた。
「そうだけど、アンタは?」
「申し送れました。わたくし、モリアント・マネと申します。お気軽にモリアとでもお呼びください」
モリアントが怪しい笑顔を浮かべながら左腕に抱えた黒い犬の頭を撫でている。
突然モリアントの服の裾が下の方に引っ張られる。視線を落とすとそこには
「モリアなにしてるのー」
「してるのー」
双子のゴブリンのリリィとロゼが立っていた。
「あそぼー」
「あそぼー」
キラキラと目を輝かせて見上げてくる双子のゴブリンに
「やれやれ、困りましたね。わたくしは今、幽莉さんと大切なお話の最中なのですが」
モリアントは困った表情を浮かべてた。
すると突然大きな影が現れて、リリィとロゼをひょいと持ち上げた。
「ほーらアンタ達。モリアさんの邪魔しちゃダメじゃないか」
「わー」
「わー」
「向こうで母ちゃんと遊ぼうじゃないか」
「うん。母ちゃんと遊ぶー」
「遊ぶー」
土色の肌をした大柄な女が双子のゴブリンを抱えたまま何処かへと歩き去った。
「さて、話が逸れましたが幽莉さん」
モリアントが改めて話はじめた。
「アンタ見た目のわりに結構良い奴なんだな」
「ホッホッホッ、よく言われます」
モリアントがニヤリと笑った。
「わたくしこれから異世界に行こうと思うのですよ」
「そうか、それで俺に何の用だ?」
「ズバリ、わたくしの……いえ、わたくしどもの護衛をお願いしたいのです」