25話 気配
幽莉が見たのは巨大な二体の化け物と、少し前にすれ違った片目を失った白銀の狼だった。
ひとつは恐らく怪鬼で、もう一つは多分この世界に棲むモンスターか何かだろう。
その姿は煉瓦を人型に積み上げた巨人のようで、その目は黒く澱んでいた。
「と、いうわけだ」
コオリは幽莉に、此処では自分の使い魔に様子を見に行かせた事をレーンとコフィカに簡単に説明して歩いていた。
「あまり気にするような事でもないと思うけどなー」
「でも情報は大切だよコフィー」
そう言って進んでいると前から白銀の狼が走ってきた。
「ねえアレって」
「間違いないよレーン」
「「ジェット様」」
二人の声がハモった。
「お前達は?」
前方にいるものから名を呼ばれてジェットは反応した。
近づくと何処か懐かしい匂いを感じた。
「無事だったんですねジェット様」
コフィカがジェットの無事を喜び
「ジェット様、ごめんなさいボク」
レーンは謝罪をした。
「そうかお前達はあの時」
ジェットはコフィカから説明を聞き
「無事でよかった」
安堵した。
「怒らないんですか?」
レーンが不思議そうに訊くと
「確かにお前達は己の任務を放棄した」
「だが」
「私はお前達を咎めるつもりはないし」
「無事で本当に良かったと、そう思っている」
と、ジェットが答えた。
「ところでそこの女は?」
そう言ってジェットはコオリに近づいていった。
「私はコオリだ。よろしくたのむ」
コオリは腰をかがめて少し姿勢を低くし右手を前にさしだした。
ジェットは差し出された手の匂いを嗅ぐと違和感のようなものを感じたが、それを心に飲み込み前足をチョンと乗せた。
「私はジェット。見ての通り狼タイプだ」
そう言って乗せられたジェットの前足を軽く握ると握手をするように縦に振った。
「おーい」
幽莉が戻ってきた。
「戻ってきたか」
それにハッキリと気づいたのは勿論コオリであったが
「何かいるのか?」
ハッキリとまではいかないまでもジェットは何かしらの気配を感じた。
「わかるのか?」
「確実にというわけではないが、少し気配を感じる」
「私達の味方だ。気になって少し様子を見に行かせてた」
「そうか」
「何だお前俺の事わかるのか?」
そう言った幽莉の声はジェットの耳には届かなかった。




