18話 修行
「俺に似てる奴とか色々気になる事はあるけど」
「なんで俺は走ってるんだー」
そう叫びながら幽莉は走っていた。
「どうした。逃げてるだけでは修行にならんぞ」
左脚から氷の弾丸を飛ばしながらコオリが追いかけている。
「んな事言われたって、脚から変なもん出すような女にどう立ち向かえば良いんだよ」
「いてて」
背中に氷の弾丸が当たり結構痛い。
「変なもんではないぞ、これは私の力だ」
凍った左脚に光が反射しキラリと光った。
ヒトのような形をした、しかし異様に顔の大きい何かが壁に磔にされており、それの前に設置されている椅子に座っている者がいた。
「やあ、何をしに来たんだい」
自分に逢いに来た目の前の人物に話しかける。
「しかし、いつ見てもデカいもんだな」
目の前にあるヒトのような形をした何かを見上げながら訪問してきた人物が呟いた。
「この私を無視するつもりかね?」
目の前にいる人物の名前を呼ぼうとして、
「おっと、名前は呼ばないでくださいよ。お願いします」
止められた。
「フハハ」
軽く笑い
「すまなかった。では、本題に入るとするか」
肩で息をしながら幽莉は立っていた。全身傷だらけでボロボロになりながらも、目の前で右脚を構えるコオリを睨みつけていた。
「約束は守ってもらうぞ」
「良いだろう」
そう言ったコオリの姿が一瞬にして目の前から消えた。
「ただし」
声はするが姿は見えない。
「貴様が私に一撃でも与えられたらの話だがな」
「頭上に注意しろよ」
言われて幽莉が上を見るとそこには、今まさに攻撃を仕掛けんとするコオリの姿があった。
「氷槍」
コオリの右脚の氷が尖り槍のようになる。
くそっ、一体どうなってんだ。俺は今死んでて幽霊になってるハズだ。なのに何でアイツの攻撃が当たるんだ?そもそも此処はおかしいぞ。この場所にある物には何故か触れる事ができた。あの水だってそうだ。
目の前に迫る氷の槍を見ながら幽莉は色々と考えていた。
「だー。ダメだ。考えてたって分かんねーもんは分かんねー」
覚悟を決めて右手を強く握り締め拳をつくる。
「イチかバチかやってやるよ」
腰を深く落とし構える。
「砕けろー」
叫びながら落ちてくる氷にタイミングを合わせ、全身のバネを使い拳を繰り出した。
拳の当たった氷にピキピキと音を立て亀裂が入っていく。やった。そう思った瞬間だった。
「形態変化」
亀裂から氷が開き、幽莉の周りを囲うようにして床に突き刺さる。
「鳥籠」