9話 死んだ事について
「すまなかった。総て私の責任だ」
突然コオリに謝られて幽莉は困惑して、飲んでいた水で溺れそうになった。
何故か此処にあるものは死んで幽霊になった幽莉にも触れる事が出来た。
「何だ?一体どうしたってんだ」
わけが分からなかったので幽莉は訊いてみた。
「あの時私は貴様のいた世界に現れた怪鬼を討つべく、貴様の世界へと行っていたのだ」
コオリが語りだす。
「コオリちゃーん」
コオリがゴミ棄て場のカウンターでウェルダンスドラゴンモドキの肉を食べているとゴブリンの女の子が声をかけてきた。
「リリィか、そんなに慌てて一体どうしたというのだ?」
「あのね、姫ちゃんが呼んでるのー」
リリィと呼ばれたゴブリンの女の子が喋り
「呼んでたー」
続いてリリィの双子であるゴブリンの男の子、ロゼが喋った。
「姫が呼んでるという事は何処かの世界で何かあったのだな?」
そう双子のゴブリンに問いかけると
「怪鬼出たってー」
リリィが言い
「怪鬼怪鬼―」
ロゼが続く
「怪鬼だとそれは大変だな」
コオリは勢いよく立ちあがると
「マスター」
カウンターの中にいる男に話しかける。
「あいよー」
マスターは新聞から目を逸らさずに返事をした。
「姫ちゃん連れてきたよー」
「コオリお姉ちゃん来た来たー」
双子のゴブリンが先に部屋に入り
「待たせたな」
コオリがそれに続く
部屋の中には様々な機械がところ狭しと置かれており、その機械に囲まれ椅子に座っている人間が振り返らずに返事をした。
「あー、みんなやっと来たのー、もーぅきーちゃん待ちくたびれちゃったぞー。プンプン」
「すまないな」
キララ姫ちゃんに向かって軽く謝罪をし
「ところで怪鬼が出たというのは本当か?」
コオリはキララ姫ちゃんの方へ歩いていった。
「コオリっちーコレ見てー」
キララ姫ちゃんに言われコオリはモニターを見る。画面には高層ビルが立ち並んでおり、月が一つ出ていた。夜だ。
月に何か影が見える。
キララ姫ちゃんがその部分を拡大するとソレはまさに怪鬼の姿だった。
「姫」
静かにだが力強く話しかける。
その一言だけで総てを察したキララ姫ちゃんが答えた。
「だーいじょうぶ。準備おっけーだよん。きーちゃんにお任せあれー」