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記憶を取り戻したアラフォー賢者は三度目の人生を生きていく  作者: かたなかじ


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第三十話


「……え、えっと、そのっ……」

 怯えるように身を固くした一人目の男はしどろもどろになって次の言葉が出ずにいる。

 もう一人も同様であり、何を言ったらいいのか困っているようだった。


「もうユーゴさんってば、相手の方たちが怖がってるじゃないですか……ちょっと代わって下さい」

 ぷくっと頬を膨らませたリーネリアがぐいっと優吾を押しのけて、質問担当を交代する。

 突然のことに驚いた優吾だが、問い詰めた二人を改めて見てみると、あまりに怯えた姿をしている。つい自分が少しやり過ぎてしまっていたことを内心反省し、大人しく横で待つことにした。


「――お二人はなぜあの騎士さんに追われていたんですか?」

 優しそうな雰囲気を持つリーネリアのその質問に二人は顔を見合わせ、覚悟を決めたように頷いてから答え始めた。


「俺たちは見ての通り冒険者なんだが、ここから先にある街で一騒動あって逃げることになったんだ。……あ、いやいや、違うんだ! 俺たちは誓って悪いことはしていない!」

 話の途中でリーネリアの視線が冷たくなったことに気づいた男が焦ったように取り繕うと、もう一人の男もそうだそうだと何度も頷いていた。


「……あの街はいま、領主によって他種族に対する迫害がひどいんだ」

 迫害と言えば最初に獣人族があげられるが、目の前の二人は人族であるため、どういうことだろうかと優吾とリーネリアは首を傾げる。


「あぁ、俺たちじゃなく仲間のことなんだ。俺たちは元々四人でパーティを組んでいて、俺たち二人とエルフの魔法使いが一人、それと猫の獣人のシーフで四人だったんだが……」

「俺たちはギルドで依頼を受けていて、達成したからその報告に向かったんだ。……そうしたら、難癖をつけられて、最初は我慢してたけど、あんまりな言われ様に耐えられなくなった俺がイラっとして、つい文句を言ってしまったんだ……」

 交代で状況を説明する二人だったが、最後には揃って肩を落としている。仲間を傷つけられて庇えるようないい関係の仲間たちだったのだろうと優吾たちは思った。


「それで、あいつらは拘束されて俺たちは釈放された。……納得がいかなくて抗議したら追いかけられて、今にいたるというわけなんだ」

 悔しそうに唇をかみしめた男の話を全て聞いた優吾は、おもむろに気絶した騎士たちのもとへと向かう。


「とりあえず、この一番偉そうなやつでいいかな。《水の玉》」

 倒れた騎士たちをざっと見まわし、目当てをつけた男の前で立ち止まった優吾は魔術で水の玉を作り出して、ばしゃっとリーダーらしき騎士へぶつける。冷たい水の玉が顔にかけられた騎士の男は意識を強制的に戻された。


「――うわああ! な、なんだっ! な、なにが!?」

 飛び上がるように男は慌てて身体を起こすと、きょろきょろと周囲を見回していく。

「やあ、起きたね。君にはニ、三質問に答えてもらうよ?」

 すぐ近くにいたにっこりと笑顔の優吾を見て、男は先ほどの魔術を思い出し、びくりと身を固くすると顔をひくつかせていた。


「わ、私は何も……」

「知らないとは言わないよね?」

 優吾は有無を言わせぬ迫力の笑顔で、男の言葉に質問を重ねた。


「……ひっ!」

 騎士風の男は優吾の威圧に思わず怯えたような声をあげてしまう。彼とて鍛えた身ではあるが、魔法使いのような見た目の優男である優吾から敵わないと思わせるような雰囲気を感じて身体が言うことを聞かなかったのだ。


「――君たち、縄か何かは持っているかな?」

 不意に笑顔のまま振り返った優吾が冒険者の二人に質問すると、彼らは驚きながらも何度も頷く。

「こ、これをどうぞ」

 そっと取り出した縄は誰かを拘束するためだけでなく、木や山を登ったり、獲物を運んだりする際にも使えるため、彼らは常備していた。


「先に縛っておけばよかったけど、まあ暴れないでくれると助かるよ」

 埒の空かない状況に、優吾は逃げられても面倒だと思ったため、今更ながら男を縛り上げる。素直に話してくれればこうしなかったという雰囲気がにじみ出ていた。


「――さあ、これで落ち着いて話せそうだ。さっきも言ったけど、いくつか質問に答えてもらうよ? ……なぜ彼らを追っていたんだい?」

 それについて事前に冒険者二人から聞いていたが、裏をとるために騎士からも話を聞くことにする。話は双方から聞かなければすれ違って誤解してしまうこともあるからだ。


「……その男たちが異種族を庇ったためだ。領主様は人族以外の人種のことを快く思っていない。それは我々も同じだ。人族のみが優良種。下等な種族は滅びるか、我らに使役されればいいんだ」

 吐き捨てるように言い放った騎士風のこの男も、どうやら領主と同じ考えの人間であるようで、冒険者二人を、そして獣人であるリーネリアのことを忌々しいものを見るように睨んでいた。


「なるほど、君もその領主さんと同じ考えのようだね。……それじゃあ、次の質問だ。その領主さんは一体何者なんだい? 普通に考えたらそこまで偏った考えを持った人が領主になることはなかなかないと思うけど」

 なんという名前で、どこから派遣されて、そして何を望んでいるのか。優吾の問いはそれら全てを含めたものだった。


「……領主様の名前はラスター様。元々は東方の領地を与えられていたらしいが、一年ほど前にこちらにやってきた。……私はラスター様の考えに賛同し、付き従っていたところに目をつけて頂き、討伐部隊の隊長に任命されたのだ」

 騎士風の男はこの状況にあっても、自分がラスターという領主に選ばれたことを誇らしそうな表情で語る。ラスターのすることを何一つ疑わず、信じているのだろうことがはっきりと伝わってきた。


「ふーん……次の質問だけど、この先にある街では君たちのように異種族を快く思わない人が多いのかい?」

「っ、当たり前だ! あの街はラスター様の街だぞ、それをのうのうと他の種族が歩いていいわけがないだろう!?」

 顔を赤くして憤慨したような男の言葉を聞いて、優吾はふと疑問に思う。

 それであるなら、なぜ優吾に助けを求めてきた冒険者たちはその街で依頼を受け、その街で達成報告をしたのかと。


「い、いやいやいや! ち、違うんだ。その男の言葉は半分はあっているが、本来、冒険者ギルドは街の影響を受けない中立の場所。だからギルドで依頼を受ける者、ギルドに報告をする者は異種族であっても問題なく行き来できるんだ!」

 優吾が何を考えているのか思い当たった冒険者の一人が慌ててあの街に行った理由を説明する。


「そのとおりだ! ……そして、俺たちが受けたい依頼があの街でしか受注できなかったから、仕方なくあそこで受けることにしたんだ。だからできるだけ街に滞在した時間だって極力少なくしていたし、俺たち以外の二人にはわざわざ異種族だということを晒さないように変装させていたんだからな」

 ずいっと身体を動かして補足するようにもう一人が話に入ってきてそう語る。他でできるならばこの先の街にはいかなかったという思いがひしひしと伝わる声音だった。


「なるほどね……それで、そのお仲間はどうなったんだい?」

 納得がいったように頷いた優吾は冒険者二人だけでなく、騎士の男も含めて質問をする。


「……必死で逃げたからわからない」

「でも、もしかしたら、もう……」

 悔しげに俯いた冒険者二人は最悪のパターンを想定しており、表情が暗い。


「――それで、本当のところは?」

 ちらりと視線を騎士の男に向けた優吾は改めて確認をする。

 もちろん言い逃れは許さないという意味を込めた満面の笑みを浮かべ、目の奥は笑っていない表情で質問していた。


「う、うぅ……あいつらは恐らくラスター様の屋敷に連れていかれたはずだ……」

 敬愛するラスターに迷惑がかかってはいけないと考えた男だったが、優吾の威圧感の前にはそんな忠誠心もどこかに吹き飛んでしまっていた。言いたくない気持ちを押し殺してぼそぼそと告げる。


「……さて、どうしようか?」

 聞きたいことはあらかた聞けただろうと騎士の男を放置して、優吾は冒険者二人に尋ねる。


「どうしようと言われても……なあ」

「あぁ、俺たちにはどうすることもできない……」

 逃げるだけで精いっぱいだった自分たちの実力を鑑みての判断だったが、それを聞いた優吾は呆れたようにため息をついていた。


「――助けに行きましょう!」

 しかし、リーネリアは強い意思を感じさせる大きな声でそう言い、ぐっと決意を決めた表情で優吾を見ていた。


「いいのかい? 俺たちにはなんの得もないと思うけど……それに領主を敵に回すことになるよ?」

「はい……私は、嫌なんです……不当な扱いを受けて、そして迫害される人がいるのを許せないんです!」

 真剣な表情の目に込められるはっきりとした意思と力強い言葉。

 その中には、まだまだ修行中の自分の力でどこまでできるかわからない、それでも困っている同族、そして迫害されたエルフ族を助けたいという決意が込められていた。


「わかった、行こう」

 リーネリアの言葉に優吾は笑顔でのることにした。

 彼女と共に行くと決めた時から、彼女の思いをできるだけ尊重しようと考えていたためだった。


お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと待って!これで完結ですか!? さすがにびっくりしました。 完結表示を見てから読み始める人もいるのでは? 何の報告もなくエタってしまうよりはマシ ということなんでしょうか。
[良い点] 楽しいお話で一気に読みました。 [気になる点] 獣人国いってリーネリアの問題を解決するまでやってほしかった [一言] 続きを思いついたら続編お待ちしています。
[良い点] テンポがよかった [気になる点] せめて獣人国でリーネリアの問題を解決するまでやってほしかった。 [一言] たのしくよませていただきました。
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