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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第0章 罪深き者
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第四話:新たなる名前




老婆の指先にうっすら光る若葉色の光を見て、俺は何となく分かった。



「魔法…?」


「そうだよ。じっとしてな。」



指を当てて、脳の状態が分かるということは、解析or分析をする魔法か、あるいは病変を自動関知し治癒する治癒系の魔法とかなのだろうか。

聞いてみよう。



「何をしてるんですか?」


「どこかおかしくないか見てるだけさね。心配するんじゃない。」



ふむ。なるほど。

凄く便利だ。癌細胞とか分かるじゃないか。

現実世界にあるならば、平均年齢は100歳を越えるかもしれない。介護職は忙殺されるな。認知症も治るんじゃないか?いや、認知症が治るなら俺らは逆に職を失うじゃないか。



「どうしようかねぇ。名前。」



老婆は困っていた。

俺も困ってる。困ってるのか?

いや、忘れるくらいならそんなに愛着も未練もない名前だったって事なんだろうけど…。



「アタシがつけてあげようか?」



んー、いや別にそれでも悪くはないんだけど…。

せっかくなんだし、何かカッコいい名前がいいな…。

強そうな…。



「そうさねぇ…。『ファロイド』なんてどうだい?」


「えっ?」



俺の意見は?!

でも格好よさげな名前じゃないか?

いや、どっかボー○ロイド的な感じだが…

どこかで聞いたことがあるような…



「嫌かい?」


「いえ、それでいいです。」


「じゃあ、坊やは今日から『ファロイド』と名乗りな。」


「名前の意味を教えて貰っても?」


「特にないよ。響きだよ。響き。」


「さいですか。」



暫定的に俺の名前は『ファロイド』になった。

日本人の俺からすれば違和感は半端ないが、まぁ語呂もいいし、すぐ慣れるだろう。

さて、聞いておかなければならないことは山ほどある。その前にまずは…



「すみません、お腹がすきました。」



俺は腹ペコだった。何よりも。

気持ち悪くなるくらいに。

このままじゃ脳に栄養がいかず頭も回らないだろうからな。先ずは食わねば!

女性陣から笑みが溢れる。少し場の空気が和らいだ気がする。あと1時間で夕食になるとのこと。


気がつけば、だいぶ日が落ちている。

窓は東側に着いているようで、橙色の光に照らされる野山が美しい…


老婆との詳しい話は明日にしてもらった。

夕食までしばし目を閉じて休む。


夕食はベッドの上で食べることになるようだ。

先程の若い女性4人のうち1人が食事を運んできた。

その明るい赤髪ロングの女性は『エメティカ』と言うようだ。なかなかの美人さん。しかし無口。無愛想。勿体無いぞ!

子供だし〈あーん〉してくれるだろうか?期待していい?



「手は自分で動くでしょ?」


おぉう…。クールだぜ…。

まぁさっき手鏡見てハシャイでたからな。

今のところ手も足も動く。

問題はなさそうだ。



食事はやはり洋風のものだった。

パンのようなもの…をオニオンスープっぽいスープに浸けて柔らかくしてある。パン粥のようなものだろうか。あと茹でた野菜。いかにも消化によさそうな病人食。


どうやら食に困ることはなさそうだ。

見た目、味ともに悪くない。

極限の空腹からか、とても美味しく感じる。

薄味だがほのかに「塩味」を感じる。

「塩」は流通しているか…。

あとは胡椒などの香辛料や、出来れば醤油…。マヨネーズ…。

ご飯と和食が出ないのが辛いが…。

まぁ慣れるだろう。



食事が終わるとエメティカさんはそそくさとテーブルを片付けて去っていこうとした。子供嫌いなの?年上派なの?

今日は宿直ということだ。

入院患者は俺一人らしい。

俺一人のために宿直。ああ、そりゃ機嫌悪いわな。

色々と聞きたかったのだが、明日にしよう…。



満腹感もあり、その後すぐ意識がまどろんでいく。


まさか自分が、あの異世界転生とは…

いや、性格に言えば「転移」が正しいのか…?

安全な世界なのだろうか…

魔法は…俺にも使えるだろうか…

元いた世界に…は…



『ファロイド』こと俺は暗闇の世界に落ちていった。





夜。

俺は風の音で目を覚ます。

月明かりのない真っ暗な夜だ。

数分として暗闇に目が慣れる。


明日色々聞くために、状況を整理しなければな。



とりあえず明日質問することは、大きく3つ


1、ここはどこか、どういった状況か

せめて土地と情勢くらいは知っておかなければならない。

ここはどこなのか。むしろ世界地図が欲しい。


2、何年何月何日か

といっても、この世界は元いた世界とは違うようだし、そもそも太陽暦かも分からないし…、聞いても分からないとは思うが…


3、これから自分はどうなるのか

身寄りがない俺は、親や親戚を頼って食い繋ぐという手段がない。孤児院あたりに保護されて大人になるまで養われるのか?それとも孤児は奴隷となるのか?


他は些細なことだ。

魔法のこと、魔法があるなら魔物もいるかもしれない。

治療や診療に魔法を使っているけど、科学力はどうなのだろう?

部屋には電灯はなく、コンセントもない。

夜の灯りはランタンが頼みだ。電気が来ていないのだろうか?

そうなると物流は?石油は?

生活は農耕や狩猟が主なのだろうか?

そんな中世的な世界なら身分制度があってもおかしくない。

いや、戦争とかあるんじゃないか?



…疑問や不安を上げればキリがない。

自分はこの世界で生きていけるだろうか?



転生して人生やり直したいと思ったことは何度もある。

もっと勉強しておけばよかったとか。

就活早めに準備しておけばよかったとか。

でもそれは同じ21世紀の日本に転生したらの話。

まさか時代も分からない異世界に転生しようとは…

こうなった時のことなんて考えてもなかった…



次々に色々な考えが巡るが、今は考えても仕方ない。

今は身体を休めよう…

人物紹介

○ファロイド

主人公『鳥羽(とば) 幽仙(ゆうせん)』が名前に関する記憶を失い、新たに与えられた名前。

長い金色の髪を持ち、完全に外見は美少女だが男である。

5、6歳相当と思われる。


○エメティカ

22歳。鮮やかな赤髪ロングの女性。身長150cm。

看護担当。

気分屋。後子供嫌い。


◯謎の老婆

白髪の老婆。ここの町医者をしている。

ファロイドに名前を授けた。

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