自称神様
気がつくと俺は真っ白な空間にいた。
何言ってるかわかんないだろ?俺もわかんね。
妖精はいつの間にか居なくなっている。
見渡す限り何処までも白い世界に、椅子が7脚。円を描くように並べられている。そのうち1脚は豪華な装飾があしらえてあり、その他簡素な作りの6脚とは明らかに作りが違っていた。
椅子があるということは座っている人もいるという事で......
「うむ、ようやく来たか」
一際豪華な椅子に座るおっさん、もといおじさんは俺を見てそう告げる。
「まあとりあえず座りなさい」
有無を言わせぬ威圧感に、俺は空いている椅子に腰を掛ける。というかこの席以外全て誰かしらが座っていた。
「ようやく揃ったな。今からする話はお前たちの今後の話だ。疑問や質問は最後に聞いてやるから、とりあえず黙って私の話しを聞いて欲しい。良いな?」
一瞬の静寂。
「よし、では......」
始まったのは突拍子もない話。
まず始めに、彼は自分の事を神だと名乗った。それだけでもとてもじゃないが信じられたものじゃなかったが、黙って話しの続きを聞く。
そして自称神様は、神の名の下に、俺たち6人に異世界でとあるゲームを行ってもらうと宣言した。
そのゲームとは、
「チキチキ!魔物だらけの勇者成り上がりゲーーーム!」
「は?」
思わず声が漏れた。幸い自称神様には聞こえて居なかったようで安心した。
何処からともなくパフパフという効果音さえ聞こえてくる。
「ほれほれ、拍手をせんか。」
6人からまばらな拍手が起こる。
「まったく......締まらん奴らだな」
いや、誰のせいだよ。
「まあとにかく、私の仕事はとりあえず終わりだ。開会宣言の時にまた来るよ。後は1級天使のリルムが話しをしてくれる。質問もそっちに頼むな!じゃ!」
そうして自称神様は煙のように消えて言った。いや、比喩ではなくほんとに煙みたいに。
それと交代するように現れたのは、金縛りの時に出会った妖精。あれをここに連れて来た張本人である。
そしてその天使は、あの自称神様の言ったわけのわからないゲームの概要を説明してくれた。
曰く、そのゲームは異世界で行われるらしい。
その世界では魔物が存在して居て人々を苦しめていると言う。
俺たちの目的は、その魔族を束ねている魔王を倒すこと。
「異世界には各々ステータスが存在しています。あなた達6人のステータスはランダムで決められますが、みなさん例外なく一般人よりは高いステータスを与えられるはずです。そして最も重要なのが【固有能力】です。あなた達6人には固有の能力が与えられ、それらを駆使して魔王を倒して頂きます」
一気にゲームっぽくなって来た。俺は小さい頃からゲームが好きな方だったので、少しこの状況にわくわくしてきていた。
「ただし、魔王を倒して勇者と認められるのは6人のうち1人だけです。共闘するもよし、妨害するもよしですが、殺害だけは認められていません。万が一にも故意に殺害してしまった場合には、その人には天罰が下るでしょう。そこだけはお気をつけ下さい」
「そして勇者となられたお方には、願いを1つだけ叶える事の出来る権利を神より与えられます。......っと、こんなところでしょうか。何か質問はありますか?」
「あの......」
とある男がおずおずと手をあげる。
「はい、どうぞ」
「その、願いって何でもいいんでしょうか?」
「はい。その通りです。願いを増やす以外の事でしたら何でも」
『おぉ』と数人の声が聞こえる。
「他に質問はありますか?」
聞かなければならない事はたくさんあるように思うが、今は皆何でも願いが叶うという事に色めき立っている様子。
「無いようですね。では説明を終わります。......おーい!神様ー!終わったよー!」
事務的に話をしていた妖精の口調が急に変わった事に一瞬ぎょっとしたが、そういや俺の部屋に来た時そんな口調だったなぁと思い出す。こっちが素なのだろう。
そして唐突に出て来てまた同じ椅子に座ってる神様は、俺たちに告げた。
「さぁ、さっそくゲームスタートだ!健闘を祈るよ、諸君」
そしてまた、俺の視界は暗転した。