糸電話回収困難
あった!!!
あたしは神社を見つけた。不思議な感じ。ワクワクする。
これからなにか起こるのか?
恐怖心なんて微塵もなかったあたしはこの非現実的な建物を目の前に顔がほころんでいた
カラスがたくさんいる。巣でもあるのだろうか。
神社の鳥居へと続く、落石をそのまま止めたような石の階段を駆け上がる。
蜘蛛の糸や虫の羽が夕日に反射して眩しい。
ふと後ろを振り返ってみる。
自宅が見えた。今朝のイライラを思い出す。
もう一度勢いよく前を向き再び石の階段を登る。
あたしがこの石を一つ一つ踏むたびムカデや蛇、ダンゴムシが慌てたように逃げる。
それを見てるとあたしがいることを改めて確認できたようで嬉しかった。
葉の落ちた枯れ木の隙間からは高速道路が見えた
それを見てずいぶんと高いとこまで登ったと気づいた。
踊り場に出た。あともう少し。
ここまで来ると荷物が鬱陶しくなったからここにカバンをおき、セーラー服の袖をたくしあげた。
一段とばしで思いっきり駆け上がる。
最後の一段を飛んだ瞬間何かに引っかかりあたしの足はもつれ、顔面から倒れる
のわぁっ!!!痛ただだだた!!
あー、おきあがんのめんどうだな。
しばらくしてから起き上がるとあたしの足には青い青い糸が絡まっていた。
なんだこれ。先端には白い紙コップ??
手繰り寄せていくうちにピタっと止まる。
糸が止まった先に目をやるとあたしと同い年くらいの女の子が紙コップを持っていた。
あー。人ね、うん。あー、これ糸電話か、懐かしいなー!よくこれで遊んだなぁ!!
へ?????あれ???
何秒だっただろう。いや、あたしには5分くらいに思えた。
沈黙がただよう。
気が動転していたあたしは紙コップを口元にあて、こう言ってみた
「いい天気ですね、ハハハ。」
→→→→→
なんてことだ。
先ほどのニコニコしながら駆けてくるやつが思ったより早く到着しやがった。
あ、転んだ。痛そうだな。石段の上だもんなー。
よし!じゃあこの隙に姿を消そ………
うわああああああああああああ!!!!あの女ァ!!私の糸電話に引っかかってやがるアアアアア
私物は回収するのがルールな故、あの糸電話を回収せねば私は帰れませぬ。
仕方がなく境内の階段に座り込みあの女が起き上がるのを待つ。
なかなか起き上がんねえな。死んだか?
少し不安になって近寄ってみる
あ、起きた。
周りを確認している。
何も無かったかのように足に絡まった糸を解いていく。
…‥……!!?嘘でしょ!?この女!私に気づいてない!!!
ここまで鈍感だと清々しいレベルだ。
ちょっと糸を引っ張ってやった。これではやく糸電話を返してくれるだろう。
ようやく目の前に座り込んでいる私に気がついたようだ。
あの女、意外と冷静だな。
さぁ、はやく糸電話を返したまえ。私は早く帰りたいんだ。ほら。
何なんだ。あの女は、私のお手製の糸電話を口に当てこう言ってきた
「いい天気ですね、ハハハ。」
ってな。
今更気が動転してんのかあいつ、へんなの。
だから私は呆れたように応答した。
「もう暗いよ。」
時刻は18時をまわっていた。
東の空にはもう、うっすらと星の光が見え始めていた。