鳥も木から落ちる。
人間ってのはどうしてさ、こう、カラスのことを目の敵にするんだか。
っと言っても今じゃ私も人間の形をしている。
カラスだった頃の癖でついつい高いところにきてしまうな。
困ったことに、この木から降りれない
そろそろ本格的にこの木から降りることを考えねば。
うわー結構な高さあるなぁ。
落ちないように木を掴んでいた手がしびれてきた。
体勢をなおそう、と、した瞬間
物凄い風圧と木の枝と葉が擦れあう音がきこえた。空が遠くなっていく。
落ちた。
うっわ痛いぃぃ!!!なにこれ!あ!これが人間の血なのね!!
幸い、私が落ちたこの場所は枯れ葉と柔らかい土の上。
だいたい、この体はもともと別の人の来世に使われるはずだった。
もっと大切にしないとね。
私がこの体を手に入れたのは二ヶ月ばかし前のこと。
あの日、ここらで一番高い松の木のてっぺんで夜ふかしをしてたら、自殺をはかろうとする人間の女を見つけた。
二度とこんな人生は嫌だ。死んで楽になる。泣きながらその言葉を繰り返す彼女にはどうやら、次の人生はいらないようだった。
そこで彼女の来世に使われる予定だった体を譲ってもらったわけだ。
来世を不必要とする人から、今生きている現世にとても強い未練がある人や、妖界の役人へ、永遠の安眠と引き換えに来世をゆずってもらう。これが来世契約。
おかげさんでずっと憧れだった若い人間の女になれた。
この姿ならもう、人間とも仲良くできるだろう。
という訳で何としてもこの体を丁寧に扱わなければならない。
傷の手当をするために移動しようかな。
日が落ちる前に。
ここは草木の生い茂る山道。ひび割れたコンクリートの道路からも生命力の強い雑草達が湧き出てきている。
近くには何も無……あ、あそこに神社と、高速道路があるわな。
よし、あの神社にいこう。あそこならいい。
神社について手当をし終えた。妖界へ帰るとするかな。
ん?なんだあいつ。 よほど良いことがあったのかニコニコしながらこの神社に駆けて来る人間がいる。
厄介そうだから早く、見つかる前に帰ろう。
カラス達を集め、お手製の糸電話で妖界へ帰省を報告する。
あ、ども、伽羅子だよ。 今からかえるよーん。