忘年会だぜ
今日は忘年会だぜ。
ドキドキするぜ。
こんな立派なホテル普段来ないぜ。
凄いぜ。
ぶっちゃけどうして良いか分からないぜ。
キョロキョロしながら、周りを観察しながら、コートを預けられたぜ。
完璧だな。
ホテルマンたちが若いぜ。若すぎるぜ。
でも礼儀正しすぎるぜ。
どうなってんだ。初対面だけど雰囲気で判断しちまうぜ。あいつらは凄く大人だ。
中身は俺より大人だぜ。きっと。
ってかあの娘カワイイ。
チラチラ見てしまうぜ。
ぶっちゃけセクハラだと分かっていても、我慢できないだぜ。
申し訳ないぜ。
もう、見ない。もう、見ない。
良し、自己暗示完了だぜ。
おっと。礼儀正しくない野郎がいたぜ。
食器を片付ける時も、無言だぜ。
って言うか空とはいえコップ倒したよ。でも謝りもしないぜ。
会釈も無いぜ。
なんてこった。
礼儀正しいホテルマンたちの中に1人のヤンキーがいたぜ。
クレーム言うぜ。
俺は文句を言える日本人なんだぜ。
泣き寝入りしないぜ。
もちろん二次会も断れる、空気読まないってことも出来る日本人だぜ。
片づけ中のヤンキーホテルマンに文句言ってやったぜ。
まさかの反撃だぜ。
適当に謝れば大きな問題にならないのに、他のホテルマンと違って、こいつは子供だぜ。
こちらも元ヤンキー、に憧れたオタクなんだぜ。
舐めるなよ。
殴られたら慰謝料請求しちゃうぜ。
ちょっと後悔だぜ。
こいつマジ怖いぜ。
殴られるのは嫌だぜ。
涙目で頑張るんだぜ。
でも変だって周りが気づいてくれたぜ。
慌てて、幹事が止めに入ってきたれたぜ。
凄く助かったぜ。
もう実は一粒の涙こぼれちまったぜ。
超怖かったぜ。
ってか幹事には敬語かよ。
普通に礼儀正しいホテルマンだぜ。
なんだい。そりゃ。
なるほどだぜ。
幹事とヤンキー君の会話を聞いて、理由が分かったぜ。
可愛い子ちゃんに惚れてるらしいぜ。
俺はいやらしい目で見ていたセクハラオヤジにされたぜ。
可愛い子を見るだけでセクハラなんて、それは男に対する暴力だぜ。
そんなのがまかり通れば、沢山の冤罪を生むんだぜ。
今回の件では、冤罪じゃないんだけれど、それとこれとは話が別なんだぜ。
まぁ、でも応援しちゃうぜ。
でも何も行動しないぜ。
それは駄目だ。
そういもんだぜ。恋ってやつは。
それにだって、自慢じゃないが、俺、189日間しか彼女がいなかった男なんだぜ。
そのまま、かみさんになってくれたけど、恋なんて呼べない、尻にしかれる生活が待ってたんだぜ。
新婚時代も無かったかのように急変してしまったんだぜ。
でも超愛しているんだぜ。
俺の話はどうでも良いか。
とにかく、多分、このヤンキー君のほうが恋愛経験値ずっと高いぜ。
「そういうことだったんだね。まぁ、頑張れよ。俺は応援しているよ」
超大人な対応だぜ。
でもやっぱり彼は子供だったぜ。
すね蹴られた。
舌打ちされた。
幹事に謝ってどっかいった。
幹事は蹴りに気づいて無いみたいだぜ。
超痛い。
俺はトイレに速攻ダッシュで泣いてしまったぜ。
マジ痛いんだぜ。
実はこう見えて42歳の大人なんだぜ。
長男なんかもう中学生なんだぜ。
とにかく、応援するよ。
この事はホテルのお偉いさんには黙っておく。
あれから一週間経ったぜ。
偶然ヤンキー君と再開しちゃったぜ。
帰るところみたいだぜ。
あっちも気がついたみたいだ。
近づいてくる。
超笑顔で近づいて来るぜ。
なんか、怖いぜ……。
今、俺一人だぜ。
誰も助けてくれないぜ……。
ふ~。
別に何でもなかったぜ。
あの日をキッカケに急進展したらしいぜ。
彼の守りたいと言う想いが大きくなったらしいぜ。
俺のおかげだぜ。
ちなみに彼女は俺のチラ見に気付いてなかったみたいだぜ。
超蹴られ損だぜ。
でも、お礼言ってくれたぜ。
良い事したぜ。
でも良く考えたら、実は何もして無いぜ。
セクハラして、クレーム言っただけだぜ。
まぁ、日本に幸せが増えるのは良いことなんだぜ。
さてと、かみさんに電話だ。
勇気が出てきた。
「若者の恋を応援してたら、遅くなっちゃった」
もちろん嘘だぜ。
真の理由は突発飲み会だったぜ。
直ぐにバレたぜ。
もう一件飲んでいくんだぜ……。
余計に事態は悪化するけど、帰る勇気を得るためにはもっと酔わなくちゃなんだぜ……。