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計画実行


 夕食後、いつものように部屋に呼ばれた。

 部屋に入ると、ゾイン様はすぐに服を脱ぎ始め、アレを始める準備を始める。


 しかし、もう俺はアレをするつもりはないので、ワンピースは脱がずにゾイン様に近づく。


「うん? どうしたユウ、もしかして私に脱がさせて欲しいのか?」


 何を勘違いしたのか、ゾイン様の表情はニヤけ警戒している感じは全くしない。


 今、今ならいけるっ!!


「ファイヤボール!!」


「なっ!!」

 大声で魔法名を叫び、右手にハンドボールほどの火の玉を作り出し、ゾイン様・……いや、もう様はつけなくていいか。ゾインの顔面にぶつける。


「ぐっ、ぎゃああああ痛い痛いッ!!」


「今までいろいろしてくれたお返しだ」


 一撃では殺しきれなかったようで、今までの仕返しを込めて全身にフャイヤボールをぶつける。


 ジュゥ……ジュゥ・……という肉が焼ける音と匂いが部屋に充満する。


「あぁ………、はぁ……はぁ……お前…は……私を殺し……てもその首…輪があるかぎり……はぁ……はぁ…逃げても追いつか…れる」


 今にも死にそうな状態で軽くけるだけでも死にそうだ。


「そんなこと知ってるよ」


「なっ……どう…やって……ああ…なるほど……、だが……はぁ…はぁ…首輪をたとえ……外した…として…も首輪には…おま…えの…情報が……残こ…………………」


 最後まで言い切る前に息絶えたようだった。

 前世で読んだ小説とかでは、初めて魔物や人を殺した後気分が悪くなり吐く描写があったが、俺はなんとも思わなかった。

 あえて言うならば、この部屋に充満している匂いが不快であるということだろうか。


 まぁそんなことはもうどうでもいい。この貴族は死ぬ間際にいいことを教えてくれた。


 首輪には奴隷の情報が残るということ。


 この世界での情報というのがどんなことかは知らないが、いくつか思いつく。

 ゾインに買われ、首輪を付けられる前にいろいろ俺の情報を奴隷商人がゾインに説明しながら首輪をいじっていた記憶がある。


 つまり、その時でた情報は首輪に残されている可能性がある。


 その時に出た情報には、名前、年齢、性別、魔力の有無だったはずだ。

 つまり、ユウという名前は絶対に使わないほうがいいだろう。

 次に年齢はどうにもならないのでスルーする。

 三つ目は性別、俺は男なので首輪にも男として情報が残されるだろう。だが忘れないで欲しい、俺はゾインに女装させられる程女顔であり、二年ほど女として生活を余儀なくされ、髪も腰辺りまで伸びている。つまり、俺は女として振舞っていれば追ってを逃げるのに大きなアドバンテージとなる。


 俺は……、私は男を捨て、今日から女としていきる。


 最後に魔力。元々母さんの仕事が特殊なこともあって魔力というものは知っていたし、自分にもそれが自分にあることは知っていた。しかし、奴隷の首輪に魔力がどういう形で情報が残されるかわからない。

 ならば、人前では魔力を極限まで押さえ込み、母さん直伝の技を使って、魔力を持たない人を演じよう。

 幸い、この世界では半分の人間が魔力を持たないものであり、魔力を持っているものの大半が自分が魔力を持っていることに気がつくことなく死んでいくため、魔力を持たない人でも目立ちはしないだろう。



 これで首輪を置いていっても特に問題はない。


 あぁ、そうそう。首輪をもって逃げるというのは一瞬私も考えたけれど、首輪は常に居場所がわかるようになっているため捨てて逃げるのが最善である。


 ええと・……、確か首輪はベッドの隣にある木箱の引き出しの中だったはず……。


 木箱は四つの引き出しがあり、どの引き出しに入っているかは覚えていないため手当たり次第に引き出しをあけ探していく。


「あった、あった」


 小さいながらにずっしりと重みのある鍵を手に取り自分の首にある首輪の鍵を外す。


 カチャっという音と共に首輪は床に落ち、その瞬間私は自由になった。


 さて、もう用はないのだから、自分の部屋に用意しているほんのわずかな手荷物を取りに行って屋敷を脱出しよう。






 私としては早くこの国を出て、隣の国のラーシルト王国に逃げたいのだけれど、現在時刻は八時から九時の間くらい。

 この国は国全体をぐるりと大きな砦で囲まれているので、国の外に出るには門を通らなければならない。しかし、この門は朝五時から夕方六時の間でしか開いていない。

 つまり、今すぐに逃げたくても、明日の五時になるまではこの国をでることができないということ。


 それだけ捕まる可能性があがるということになるが、多分大丈夫だとは思う。

 軽く見ただけでは私は男には絶対に見えないと自信を持って言える。それに私はゾインがある日連れてきた魔法使いに、体の成長を止められているので、声変わりもしなければ、身長も伸びないので同年齢の子供を比べると年下の女の子と見られるだろう。


 しかし、魔力については少し不安が残る。


 魔力の情報というのがどんな形で残るのかわからない私には魔法を使わないという方法しか・……いや、もう一つ方法がある。


 しかも、この方法はほぼ確実に魔力の情報の問題を解決出来ると思う。


 私のお母さんは、物に能力を付加することを仕事にしていた。

 そして、私はお母さんの仕事を引き継ぐはずだった。そうはずだった。


 引き継ぐはずだったので、私はお母さんから物に能力の付加の仕方を学んだことはある。しかし、能力の付加には魔力を使い危険だからということで12歳になったら教えてあげるね、と言われていた。


 けれど、12歳になる前にお母さんは殺され、私は性奴隷にされたので実践してみたことは一度もない。


 けれど今は魔力の操作ができるし、理論はうろ覚えだけど覚えているので出来ると思う。


 身につけているあいだは魔法が使えない能力を付加すればいい。


 魔法が使えないということは、体の外に魔力を出せないということと同義なのでこの能力を付加できれば問題は解決できる。


 ちょうど時間はあるのだし、挑戦してみようと思う。

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