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女装少年ユウは自由を求める

 王国の大通りから外れて更に奥の方へ進んだ場所で、一目見ただけで狂っている、そう判断できそうな目をしている青年とその青年に踏みつけられ、黒く長い艶のある髪をこれでもかと言うほどの力で引っ張られている女性、そしてその女性の視線の先にいるまだ幼い少年の三人がいた。


「ユウッ!! あなたは逃げなさいっ!!」


 青年に踏みつけられ、床に伏したままの状態で女性は幼い少年に言う。


「で、でもっ!!」


 しかし、幼い少年にとって母親である女性を見捨てて逃げるなんてできない、と意思表示をする。

 幼い少年は女性がこの後どうなるかわかっていたから。


「私のことは大丈夫よ、だから先にあなたは逃げて」


 女性は幼い少年が自分のことを心配しているとわかったため、女性は幼い少年が逃げるように自分は大丈夫と嘘をついた。

 女性にとっては幼い少年は愛する息子であり、自分の命に変えてでも助けたいと思っている。


 幼い少年と同年代の他の子供ならば、自分の母の言うことを信じて逃げ出すであろう。

 女性もこれで逃げてくれると思っていた。


 しかし、幼い少年は逃げ出さずあろうことか狂っている青年に声を上げながら向かっていったのだ。


 結果は見るまでもなく、あっさりと反撃され数メートル吹き飛ぶ幼い少年。そのまま壁にぶつかり気を失ったようだった。


「ユウッ!! ユウッ!!」





 はぁ・……、この夢を見るのもこれで何度目だろうか。

 

 もうあれから三年経ったんだ。

 あの時逃げ出さずに向かっていったのは、あの後母さんがどうなるかわかっていたから。

 けれど、結果は変わらなかった。


 あの後気がついたら奴隷商館の檻の中にいて、意識が戻ったその日にやってきた貴族に俺は買われた。


 貴族と言われると中年か老年の印象があったのだが、俺を買った貴族はまだ若く青年と言っても通じそうなほど若かった。


 そして、その貴族はショタコンだった。


 買われた俺はボロい衣服を身にまとい、首に奴隷の証である首輪をつけられ馬車に乗せられて屋敷まで連れて行かれた。


 その日の夜、俺は無理矢理青年に犯された。



 それからほぼ毎日三年間夜になるとゾイン様――俺を買った貴族の名前であり心の中で呼び捨てにしていた昔、犯されている時に怒りで呼び捨てで呼んでしまったため、現在では一応心の中でも様を付けて呼ぶようにしている――に犯され続けた。

 たしか半年経ったくらいだろうか、新たな性癖がうまれたのかどうかしらないが、ゾイン様は俺に女装させるようになった。

 元々女っぽい顔だったこともあり、命令で髪を伸ばすように言われたこともあり、裸を見られたりしない限りは男と気づかれないだろうと自分では思っている。思っている、というのはこの三年間俺はこの屋敷から出ておらず、使用人二人とゾイン様の三人としかあっていないからだ。

 屋敷から出ていないとは言っても庭には出ることを許可されている。


 あ、それと口調も女っぽくしろと命令されているため、喋るときは一人称は私である。


 ふぅ・……やっぱり緊張しているのだろうか、いろんなことを思い出してしまう。


 今日はこの三年間ずっと待ち続けていた計画を実行する日。


 今日、俺は―――――


「私は自由になる」








 昔のことを思い出し感慨にふけった後、すぐにゾイン様好みであるワンピースに着替え|(下着も女性用)、朝食の準備をはじめる。


 今日は二人の使用人がいない二年に一度あるかないかの貴重な日である。たしか明日の朝に帰ってくるそうだ。


 俺は今日の計画を思い出しながら朝食の準備を進めていく。


 ゾイン様は夕食を食べた後、俺を部屋に呼びつける。これはここ一年間の日課のようなものなので今日も呼ばれるだろう。


 部屋に入るとそのままアレが始まる。


 だから、アレをしているときにゾイン様を殺す。


 殺す手段は持っている。

 

 この世界の文化レベルは中世のヨーロッパだが、魔法というものが存在している。見たことはないが、魔物と言われるものも存在しているらしい。


 今回の殺す手段はずばり魔法だ。


 アレをしている最中は俺はコスプレさせられたりするので服を着ていたりすることもあるが、ゾイン様は必ず全裸で襲ってくる。つまり、武器等は近くにはないということであり、ゾイン様の反撃があるとすれば肉体による直接攻撃か、魔法の二つになる。


 しかし、ゾイン様は魔法の才能はなく、親の七光りということがぴったりな貴族であり、戦闘はからっきしであることがわかっている。


 そのため俺に抵抗する手段を身につけさせないために、武術や魔法を学ぶことや見ることも禁じられている。


 しかし、俺にはある知識がある。

 前世の記憶というものが。


 前世では結構アニメやゲーム好きであったため、魔法については結構知識はある。


 だが、魔法といってもアニメやゲームによって千差万別である。これはこの世界の魔法をとっても例外ではなかった。

 そのため、結構苦戦させられたが、まずは魔力を感じることを始め、それを操作できるように練習し、その魔力を使う方法を何ヶ月も試した。

 しかし、ゾイン様や使用人に気づかれないようにしないといけなかったので、自分の部屋で出来る程度の練習しかできず、今のところハンドボール程度の大きさの火の玉出せるところまでは確認している。


 ハンドボール程度の火の玉を出して、練習しても数時間は持つことからある程度は魔力があることがわかっている。


 おっと、話が脱線しかけているから少し戻そうか。


 魔法で殺したあと、首にある首輪を外さなければならない。

 この首輪をしていると居場所がわかるようになっているらしく、こっそり隠れて魔法の練習をしていてバレそうになったときは本当にあせった。

 それにこの首輪には奴隷の主人に逆らうことができないという便利なものはついていないこともわかっている。

 さすがに魔法といえども人を操るというのは無理なのだろうか。

 そして、奴隷が主人を殺した場合、奴隷の首輪は赤くなり、街で首輪を見られたらすぐに兵がやって来て捕まえられるだろう。

 それに首輪をつけていると自分が奴隷だと言っているものである。


 なので首輪は絶対に外さなければならない。とは言っても外すには鍵が必要なので殺したあとに探さなければならない。


 っと、考え事をしている間に朝食が完成してしまった。


 計画の確認の続きは後ですることにしよう。


 俺は完成した朝食を食事を隣の部屋の無駄に大きな机に並べていく。


 そしてすべての準備が終わった頃、ちょうど時間になり部屋の入り口の大きな左右に開く扉が開き、ゾイン様が入ってくる。


「おはようございます、ゾイン様」


 俺は深く頭を下げ、最後になるであろう朝の挨拶をする。

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