6 免税の場合の飲食店への影響
食品の消費税がゼロ%(免税)になり、税込1080円だった野菜が1030円になると仮定します。
この場合の飲食店への影響を考えます。
現在の収支が
売上 3300円(うち消費税300円)
食材仕入 1080円(うち消費税80円)
家賃・光熱費など 550円(うち消費税50円)
支払給与 1000円(うち消費税0円)
だとします。
(売上はすべて店内飲食とする)
本則課税なら、
売上の消費税 300円
仕入税額控除 80円+50円=130円
納付額=300円-130円=170円
簡易課税なら、
売上の消費税 300円
仕入税額控除 300円×60%=180円
納付額=300円-180円=120円
食品が免税になった場合、
売上 3300円(うち消費税300円)
食材仕入 1030円(うち消費税0円)
家賃・光熱費など 550円(うち消費税50円)
支払給与 1000円(うち消費税0円)
1080円で仕入れていた食材は、少しは値下がりするが、前述の理由で1000円にはならないでしょう。
それでも、1030円の中に消費税は一切含まない扱いになるでしょう。
(現行法では、免税の経費はあり得ないので、どうなるか不透明だが)
本則課税なら、
売上の消費税 300円
仕入税額控除 50円
納付額=300円-50円=250円
簡易課税なら、
売上の消費税 300円
仕入税額控除 300円×60%=180円
納付額=300円-180円=120円
本則課税なら、仕入が50円安くなり、消費税納付が80円増えます。
値上げしなければ利益は30円減ります。
簡易課税なら、仕入が50円安くなり、消費税納付は同じです。
値上げしなくても利益は50円増えます。
ただし、「みなし仕入率が60%のままなら」の話です。
飲食店のみなし仕入率がサービス業の50%より大きい60%なのは、課税対象になる仕入(食材)が多いからです。
食品が免税になれば、みなし仕入率も50%に変更される法改正があるかもしれません。
みなし仕入率が50%になれば、仕入税額控除は180円から150円になり、納付額は30円増加の150円です。
免税事業者なら、仕入が50円安くなり、消費税納付はもともと0円だから、
値上げしなくても利益は50円増えます。
本則課税の飲食店は、仕入れコストが下がる以上に増税になるので、値上げしたいところです。
でも簡易課税・免税事業者の飲食店が値上げしないのに、当店だけ値上げして客は来てくれるか。
悩ましいところでしょう。
もっとも、大手の飲食店が零細店をライバル視しているかと言われれば、それも疑問です。
吉野家にとってライバルはすき家であり、近所の定食屋の価格動向は、あまり気にしないだろうと思います。
簡易課税・免税事業者の飲食店は、利益を維持して少しだけなら値下げできるでしょう。
ちなみに、簡易課税は課税売上5000万円以下の中小事業者が選択できます。
大部分の事業者にとって、本則課税より簡易課税の方が税務署への消費税納付は安く済みます。
しかし、飲食業については、本則課税の方が安く済むケースがちらほらあります。
私が税理士事務所勤務で見た限りでは、売上1000万円~5000万円の飲食店のうち、10軒に1軒か2軒くらいは本則課税で申告していました。
飲食店にとって悩ましい点がもう一つ。
飲食店にとっての最大のライバルは「お客様自身」だと言う人がいます。
人はその日の食事を外食するか自炊するか迷います。
もともと、外食するより自炊する方が安く済みます。
その差が大きくなれば、頑張って自炊しようと思う人は増えるでしょう。
簡易課税・免税事業者の飲食店は値下げできるかもしれませんが、その幅は小さいです。
自炊のコストダウンは1080円が1030円(4.6%引き)になるくらいに対し、
外食のコストダウンは3300円が3250円(1.5%引き)になる程度です。
本則課税の飲食店にとっては、消費税ゼロは不利益になる税制改正です。
消費者にとっては、チェーン店や、売上5000万円以上のちょっと大きな店に行くことが多いなら、外食費アップにつながり不利益になるでしょう。
零細店に多く行く人なら、わずかですが値下げの恩恵があるかもしれません。




