5 免税の場合の農家への影響
食品の消費税が0%、ここでは輸出と同じ免税取引になった場合の、野菜農家への影響を考えます。
現在の収支が
売上1080円(うち消費税80円)
肥料代・機械代など660円(うち消費税60円)
支払給与100円(うち消費税0円)
だとします。
本則課税の農家は
売上の消費税80円
仕入税額控除60円
納付額=80円ー60円=20円
簡易課税の農家は
売上の消費税80円
仕入税額控除=80円×80%=64円
納付額=80円ー64円=16円
もし、食品の販売が免税になれば、
本則課税の農家は
売上の消費税0円
仕入税額控除60円
納付額=0円ー60円=マイナス60円(還付)
簡易課税の農家は
売上の消費税0円
仕入税額控除=0円×80%=0円
納付額=0円ー0円=0円
となります。
本則課税の農家は、税務署から還付金60円を受け取ります。
免税売上のための経費の消費税は仕入税額控除になります。
20円の納付が逆に60円の還付になるので、今まで1080円で売っていた野菜を1000円で売って利益は同じです。
簡易課税の農家は、20円の納付が0円になるだけで、還付はありません。
1080円の野菜を1000円で売ったら、利益は60円減ります。
利益を維持してできる値下げは1060円までです。
免税事業者の農家はもともと消費税を払っていないから、1円でも値下げすれば利益は減ります。
では、1080円だった野菜はいくらになるでしょう。
本則課税の農家が1000円に値下げしたら、他の農家もそれに合わせて値下げしないと売れなくなるでしょう。
しかし、簡易課税・免税事業者の農家がみんな、利益を減らす値下げをしてまで生産を続ける気持ちになるとは思えません。
ある程度は無理して値下げするでしょうが、どこかで生産意欲を失う農家が出てきます。
それは生産量の減少につながります。
正確な予想はできませんが、需要と供給が均衡するのは1030円とかそのくらいだろうと思います。
この場合、
本則課税の農家は、消費税20円の納付が逆に60円の還付になり80円得に、そこから50円値引きして、利益は30円増加。
簡易課税の農家は、消費税20円の納付が0円になり、50円の値引きして、利益は30円減少。
免税事業者の農家は、消費税はもともと0円で、50円の値引きをして、利益は50円減少。
一般市民にとっては、1080円だった野菜を1030円で買えるようになり、家計は助かります。
でも、外食が多い人は・・・(続く)
なお、「本則課税にしたら還付金をもらえるなら、本則課税で申告したらいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
制度的にはそうなのですが、本則課税の申告書を作るのはとても大変です。
税理士に頼まず自分で作れる個人事業主は、ほとんどいません。
それと、もう一つ。
本則課税の農家は還付金を受け取ることができますが、その入金は遅れます。
個人の場合、令和10年1~12月の売上・経費をもとに令和11年3月に消費税申告をします。
還付金が入金するのは、スムーズにいって令和11年5月くらいだろうと思います。
今までは、消費税の還付申告は輸出業者と大きな設備投資をした業者くらいだったのが、多くの農家が還付申告することになり、税務署の審査は遅れるのでは、という指摘があります。
令和11年5月よりさらに遅くなるかもしれません。
1年以上先に還付金を受け取れるから値引きしよう、というのは資金繰りが大変になります。
消費税申告を年に1回すればいいところ、自発的に6か月ごと、3か月ごと、あるいは毎月やることも可能です。
そうすれば還付金を早く受け取ることができます。
しかし、消費税の確定申告を年に何度も書くことは大変です。




