1/5
プロローグ:石◯が辞任したところで
駅前の電光掲示板に「石◯首相、辞任」と大きく映し出された。
人々は一瞬ざわめいたが、すぐにスマホを操作し、次のニュースに流れていった。
「結局、何も変わらないんだよな」
喫茶店の窓際で新聞を広げていた老人が、小さくつぶやいた。隣に座る青年は首をかしげる。
「辞任したなら、新しい総理になるんじゃないですか? それなら少しは……」
「甘いな」老人は笑った。
「名前が変わっても、中身が同じなら、何も変わらん。椅子に座る役者が変わるだけで、舞台の脚本は同じだからな」
テレビからは「次期総裁候補は…」とアナウンサーの声。
だが候補者の顔ぶれは、どれも見慣れた顔ばかり。
「このまま同じ政権が続けば?」
青年が問いかける。
老人はしばし沈黙し、コーヒーを一口飲んだ。
その瞳には、遠い未来を見透かすような光が宿っていた。
「……きっと、この国の唯一の誇りすら、少しずつ失われていくさ」