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みんな仲良く帰りましょう(笑)

作者: 華城渚

「それじゃあ本日の授業はここまでです。 みんな気を付けて帰ってくださいね~。」


「「「「「は~い!!」」」」」


授業が終わり下校の時間がやってきました。 みんな帰れるってなって元気いっぱいです。


僕はこの学校の生徒です。 今日の授業は終わりでみんなで帰るところです。 でも、僕の学校だけなのかなぁ? 帰るのにルールがあるんです。



「あ! 帰る前に一応聞くけど、ちゃんとルール覚えてるかなぁ~?」


「はーい! 覚えてまーす!」


「僕も~」


「私も覚えてるよ~!」


「うんうん! なら大丈夫だね~! 忘れたら大変だからね~」



先生が帰る前にルールを覚えてるか聞いてくれました。 でも、口に出すことはありません。 理由はこのルールを最初に見た時に教えてくれました。



「みんなルールの書いた紙は見たかなぁ~? ちゃんと覚えて、覚えたらびりびりに破いて捨てるようにしてね!」


「あとここには書いてないけど、ルールは口に出したらいけません! それはみんなも先生も同じです。 だから忘れないようにしてくださいね~」


「先生!質問があります!」


「もし忘れた子がいたら、紙に書いて教えてあげたらいいですか?」


「うん! すごくいい質問だね! 答えはダメです! 理由は先生もみんなも大変なことになるからです(笑)」


「大変なことってなに~?」


「気になるなぁ~」


「先生も理由を言いたいんだけど......いつか話せたら言いますね~」



どうしても忘れてはいけないみたいでした。 実際僕も忘れてはいません。



1.下校中は誰かと一緒に帰ること(笑)

2.寄り道をしないこと(笑)

3.沈黙は5秒までにすること(笑)

4.みんな仲良く帰ること(笑)



ルールはこの4つです。 でも忘れてはいけないを足したら5つでしょうか。

なぜ語尾に(笑)があるのかは僕にはわかりません。 先生もわからないみたいです。


このルールがあるから僕たちは友達と遊ぶことができません。 遊ぶ約束ができないのはとても悲しいです。


僕たちがいるのは田舎で田んぼばかりがあります。 電気もあまり通っていないのか、夜はすごく怖いです。 だから、みんなと遊べるのは学校にいるときだけです。



「おい。 早く帰ろうぜ。」


隣の席の......男の子が話しかけてくれました。 一緒に帰ることにします。


「......うん! 一緒に帰ろっか!」


「まったく鈍くさいなぁ。 みんなもう帰ってるぜ。 お前ひとりになったらどうするつもりだったんだよ。」


「えへへ。 ごめんごめん。 でも一緒に帰ってくれるじゃん。」


「そりゃ、お前がひとりでぼーっとしてるからな。 危ないって思ったんだよ。」


「ありがと。 やさしいね。」


「おう! さっ、帰るぞー」


この子の名前はわかりません。 なんならこの学校の子の名前も知らないし、先生の名前もわかりません。 入学したときに教えてくれなかったんです。 不思議ですよね。


でも、みんなすぐになれたみたいで、仲良くしてました。 僕は......不思議に思いながら仲良くできてたと思います。



「お前、帰る方向って一緒だったよな。」


「うん。 ほとんど一緒だね。」


この男の子とは家が3つしか離れていません。 こんな田舎ですから家も結構密集してるんですよね。



「それじゃあ、校門を出るぞ。」


「わかった。 ルールは覚えてるよね?」


「当たり前だろ。 お前も気をつけろよ。」


「うん。 わかってるよ。」


下校は校門を出たら始まります。 始まるって言い方もおかしいかな? なんだかゲームみたいですね。 いや、ルールがあるからゲームなのかな?


「なんだかゲームみたいだよな。」


彼も同じように思っていたみたいです。




「お前ってさ、家帰ったら何するんだ?」5


「勉強かなぁ......それくらいしかやることないし。」5


「そうだよなぁ......一緒に遊べたらいいのになぁ......」5


「そうだね。 時間はいっぱいあるのにね。」5


「なぁ、近くに公園があるじゃん。 あそこ行こうぜ。」5


「えぇ~......ダメだよ。 ルール忘れたの?」5


「いいだろ別に。 ちょっと覗くだけだって。」5


「う~ん......いいのかなぁ......」5



「おいおい! あんまり考えすぎんなよ。」5


「え? あぁ、ごめん! ちょっと考えちゃった。」5


「まったく......お前の方がルール危ないじゃねぇか。」5


「ごめんって。 気を付けるよ。」5


「じゃあ、決定な。 公園行くぞ~」5


「ちょっと、ルール無視してるでしょ! 危ないよ!」5


「大丈夫だって。 お前だって勉強ばっかで退屈だろ? それに家から近いしいけるって。」5


「わかったよ...」5


寄り道はしてはいけないのですが彼と公園に行ってみることにしました。 まぁ、彼の考えに従うのもいいかもしれません。 公園が寄り道になるのかどうか僕も気になっていましたし。


公園までの道、5分ほどでしたがその間も彼と他愛のない話をしていました。



「よ~し着いたな! 何して遊ぶ?」5


「ダメだよ。 覗くだけって約束だったじゃん。」5


「いいだろ別に。 今だって何も起きてないんだぜ?」5


「これから何か起こるかもしれないでしょ? 油断は禁物だよ?」5


「大丈夫だって(笑) お前不安になりすぎだろ。」❺


「......? 不安にもなるよ。 怖いもん。」5


「だから大げさだって。 おれブランコがいいな~(笑)」❹


そう言って彼はブランコのほうまで走っていきました。 彼がいないと僕は帰ることができません。 ......でも、なんでしょうか。 何か、違和感があるような気がするのです。


「ほら! お前も来いよ(笑) 楽しいぜ(笑)」❸


「......うん。 わかったよ。」5


何でしょうか...悪寒が止まりません。 ルールを無視しているからなのでしょうか。 それともほかになにかあるのでしょうか。


「学校終わりに遊べるのは最高だなぁ~(笑) なぁ(笑) これからも一緒に公園で遊ぼうぜ(笑)」❷


「う~ん......僕は遠慮しておくよ。 ちょっと怖くなってきたし。」5


「そんなこと言うなよ(笑) お前だって楽しいだろ?(笑) 勉強よりも遊んでた方が楽しいって(笑)」❶


「勉強も楽しいけどなぁ~。」5


「(笑) (笑)(笑) (笑)」


「え? どうしたの?」5


突然彼は言葉を発しなくなった。 と言うより、これは......なんでしょうか? 顔は満面の笑みでこちらを見ています。 ただ、なにを言っているのかが分かりません。


「(笑) (笑) (笑)(笑)」


寄り道をしたとルールに判断されたのでしょうか? いや、ふざけているだけの可能性もあります。 僕は何ともなっていないのが何よりの証拠です。


しかし、用心することに越したことはないでしょう。


「は、はやく帰ろう! ね?」5


「(笑) (笑) (笑)」


「何言ってるかわからないよ! 早く帰ったほうがいいよ!」5


「(笑) (笑)」


彼からだんだんと生気がなくなっていくような気がします。 それに、なにか......感覚が短くなっていっているような...... 無理やりにでも帰ったほうがよさそうです。


「ほら! 帰るよ!」5


「(笑)」


「早く......急がないと......」5


「」


彼から何も聞こえなくなりました。 顔は満面の笑みのままです。 不気味すぎます。 僕は彼をブランコから引きはがし、無理やりにでも連れ帰ることにしました。


「ここから家まで1分もない......急げば間に合うはず......!」4


「」


彼の状態はとても危険に見えますが僕も危険な状態です。 彼が言葉を発しない以上、沈黙が続いてしまいます。 ここでさらにルールを破ってしまえば......どうなるか想像もつきません。


「家が見えてきた! ほらっ、もうすぐ家に着くよ!」3


「」


彼から言葉が返ってくることはありません。 顔も満面の笑みです。 ただ、少し表情が和らいだように見えました。


何かに取り憑かれているのでしょうか......いったい何に?


「田舎で信号がないのは助かるね! 後はここを曲がったら......」2


「」


曲がり角を曲がれば玄関が見えます。 すぐにでも自分の家に入りたいですが、彼はこの状態です。 先に彼の家に送るのがいいでしょう。


彼の家の前に着きました。 インターホンを鳴らします。 しかし、誰も出ることはありません。


「なっ...なんで? 鍵は...かかってる!?」1


「」


自分の息子が帰ってくることはわかっているはずです。 なのになぜ鍵がかかっているのでしょうか。




ここで僕には2つの選択肢があります。


1つは彼の親が出るまでインターホンを鳴らすこと。 時間はあるわけもありませんが、彼のためにもそうするほか方法がないでしょう。


2つ目は彼をおいて僕は家に帰ること。 彼を見殺しにすることになりますが、僕は助かります。


僕の家に入れる方法もありますが、僕の親からずっと言われていたことがあります。



「よそ者は家に入ることはできない。 肝に銘じておくように。」



どうすればいいのか考えながらも、とりあえずインターホンを鳴らすことにしました。


「早く出てください!お願いですから(笑)」❺


「」


悪寒がしました。 顔に何か貼り付いているような......そんな気がするのです。


「なんで鍵がかかってるんですか(笑) 息子さんが帰ってきてるんですよ(笑)」❹


「」


悪寒は止まりません。 だんだんと顔が笑顔になっていくように感じます。 彼と......同じような......


「どうして......(笑) 出てくれないんですか......(笑)」❸


「」


笑顔は止まることを知りません。 このままでは......なにか別のものになる...... そんな予感がするのです。


「このままじゃ僕も危ない(笑) どうすれば彼を助けられる?(笑)」❷


「」


考えるにしても時間が足りません。 こうなれば、仕方ないでしょうか......


「ごめん(笑)」❶


「」


僕は彼をその場において自分の家に帰ることにしました。 もしかしたら間に合わないかもしれない。 もっと早く判断すべきだったかもしれない。 そう後悔しながらも僕は急ぎます。









......後日談となるでしょうか。 僕はあの日、何とか家に帰ることができました。 本当に危ない状況だったと思います。


ほとんどあの(笑)に侵食されていたと思います。 後遺症?みたいなものも残るのかと思いましたが、そんなことはありませんでした。 よかったです。


「それじゃあ授業はここまで! 今日も気を付けて帰ってね~!」


「「「「「はーい!!」」」」」


今日も授業は終わり下校の時間になりました。 あの日から少し帰るのが怖くなりました。 しかし、それで学校を休むのも親に申し訳ありません。 誰かと一緒に楽しく帰ればいいだけなのですから楽なはずです。


「おい。 もう帰ろうぜ。」


あの日、僕が置いてきてしまった彼は普段通りでした。 特に変わっていることはなく、休み時間も一緒に遊ぶくらいぴんぴんしています。


「うん! 帰ろっか!」


「お前、またひとりで帰るところだったぞ! 気をつけろよ!」


「ごめんって。 気を付けるから許して?」


「わかったよ(笑) 帰るぞ~」




でも、一つだけ変わっていることがあるかもしれません。 




それは......




「...? なんだ? 俺の顔になんかついてるか?」






彼の顔はずっと満面の笑みなのです。


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