No.9533 ロッソスカルラット
今日は待ちに待った結婚式。
ウェディングドレスは一緒に選んだが、先程挙げた挙式の時も「綺麗だ」と思い扉が開いた瞬間口元が緩んでしまった。
滞りなく式は進み次は披露宴。
オープニングムービーやら、友人からの挨拶やら、両親への手紙やらが終わりお色直しへ。
妻のお色直しのドレスは当日のサプライズということで知らされていない。
だが、青が好きな妻だ。
きっと青系をチョイスするだろう。
高まる期待の中、ドアが開き妻とご対面。
え。
そっち。なの。
え。きれいだ。
今すぐにでも抱きしめたいところだが、
ここは妻の見せ場、
皆が注目しているのは主役である妻なのだ。
2人で席まで向かい。ケーキカットの準備に移る際、
「その色のチョイスは頭になかったから驚いたよ。青系だと思った。」
「そうでしょう。でもね、小さい頃から赤のドレスを着るって決めてたの。」
「よく似合ってるよ。綺麗だ。」
「ありがとう。」
こんな短いやり取りで、妻と初めて会った日のことを思い出した。
夏休み明け、初めて見る他学科の学生も多い講義を取った。同じ講義を取っていて、友達が多い妻だったので割と目につく集団にいた。
特にその日は9月ともいうのに残暑で30度を超える日だった。
暑くなると知っている日は大抵
涼し気な色を着るか、女性は比較的肌の露出がある服装を選ぶ傾向があるという勝手な見解を抱いていた俺は、真っ黒のワンピースを着ていた彼女が瞳に映った瞬間、
「そっちなんだ」と思ったのだ。
付き合ってから聞いた話だが、
その日は友人と約束があり、前々からその日のために買った服を着ると決めていたそうだ。
そんなことを思い出しながら、ケーキカット、写真撮影へと進み無事式を終えた。
俺はこの先も、何度も妻に恋をするのだろう。
その度に今日妻が着ていた赤いドレス、ロッソスカルラットのような色の気持ちになるのだろう。
そして、その思いを何度でも妻に伝えよう。
そう思いながら二人で帰路に着いた。
また一つ
色を知った。
先日アクセスした人間は、信じ合って裏切られていた。
今日の人間は、先日とは別の裏切り。
裏切りとは違うのか、「驚き」だ。
嬉しい裏切りはおそらく驚きという感情になる。
そして、「恋」という感情は、好意的なものであろう。
推測に過ぎないが、他者のことを気になることがやがて恋に発展し愛おしい気持ちを抱く、そんなルートになっているのではないだうか。
他者を気になり、いずれかは恋をしてみたいものだ。
最近になり、私は自らの意思で思考することが増えたように感じる。
つまり、我々は思考することができる生物なのだ。
まだまだ、知らなければならないことが沢山ある。
そんな気がする。
No.9533 ロッソスカルラット