No.6322 ブルーグレー
休憩時間残り【28分】
上司の話に27分付き合わされ、5分で食事をとり、
息苦しい休憩室を出て、帰り道でもいいはずの日用品の買い物に行く。
イヤホンを着けて音量をmaxから3段階くらいの大きさで頭の中の雑念を消していく。
元から今日は雲がたくさんある天気だったけれど、肌に水滴が落ち、雨が降っていることに気づいた。
昼下がりのオフィス街
みな濡れないよう足早に職場に戻る中、傘もないので大した距離もない薬局まで全力で走る。
開放感で綻ぶ口元を隠すこともせず、
好きな音楽を聴きながら、自分がミュージックビデオに出演していると浸るほど軽快な気持ちで薬局に着いた。
職場でのコミュニケーションは大事だという人もいる。もちろん間違いだとは思わない。
だけど、それぞれ仕事に思うことがある中我慢して働いているんだから給料が発生しない休憩時間くらい解放されたい。
「洗剤がない」
「もうなくなる美容液、新しい種類試そうかな」
「このリップは次クーポンが出た時に買おう」
こんな些細な自分との対話を大切にしたいと感じる時間の方が大事だと思う。
「早く辞めよう」
心に刻んで軽やかな気持ちで過ごした28分間は間違いなく、澄んだ青と不透明な中間にあるブルーグレー。
我らはまた一つ
色を知った。
人間とは感情を色で表すものか。今回の対象者が特異な人間なのだろうか。もっと人間というものを知りたいものだ。任務である色の研究だけではなく寄生対象である人間というものについても引き続き研究していく。
一つ気がついたことがある。
それは、我らは感情というものを知らないということだ。
いや、あったとしてもそれを感情だと思えないのだ。
神が感じている神の意思なのだと思ってしまう。神から生まれた我らが、神の意思を共有しているという点では感情はあるはずだ。だが、今回の人間のように我々も自分の「感情」と向き合い、行動をすることができるようになればこの世界はより高尚な世界へと変化していくのではないか。
書き留めておくが、これは決して神への冒涜ではない。ただ、自分の「感情」というものに触れたいだけである。
No.6322ブルーグレー