説得
公爵様が手を挙げた直後、重装備の騎士が入ってきた。
「我が家が誇る重騎士団だ。彼らを相手に勝利できたら認めよう。」
「では広いところに出ましょうか。ここは流石に壊れそうですので。」
騎士は背を向け玄関へ向かう。
俺たちもそれについていく。
「おや?お兄さんここに虫付いてますよ。」
「おぉ、すまない。」
仕込み完了。俺が指を鳴らしたら発動する魔法を仕掛けた。
この人数の重騎士に正面からやって勝てるかよ。
「では、準備は良いな?始め!」
公爵様が高らかに宣言する。
「モニカ、あいつら覆うように結界張って。」
「はい!」
閉じ込められた騎士たちが結界を殴ってる。無理無理。魔法使って全力強化で何度も同じ場所殴ってようやく割れるのに。
「メイリア、殺さない程度で最大威力の魔法用意して。」
「まっかせて!!」
「モニカ、てっぺんに穴開けて。」
「えい!!」
うし、開けたら全員で上に向かうだろう。ここで!
パチン!と指を鳴らす。仕込んだのは麻痺と煙を出す魔法だ。
「麻痺毒だ!!口を塞げ!」
戦闘に慣れている分察しは良いみたいだな。
「メイリア、トドメ。」
「いっくよー!《業炎》!」
・・・あれ普通に死ぬだろ。
「あ、モニカ!結界閉じて!」
「え、はい!」
結界を完全に閉じて密閉した。
あ、苦しそうにもがいてる。そうか、空気無くなったのか。えげつねぇこと考えるなぁ・・・
「えげつねぇ・・・」
「それユウが言うの?鎧に魔法仕込んでたじゃん。」
「バレたか。」
結界の中が静寂に包まれた。まぁ実際は苦しくて声も出せないんだろうけどね。
少し経って結界を解除して外に出ると、重騎士の人たちみんな青い顔していた。
「・・・そこまで!」
惚けていた公爵様も勝負を止める。なんか、ごめんなさい。
とりあえず作戦は成功である。
これで俺を実力を認めれば良いんだけど。
「なるほど、君たちの実力はわかったよ。時にモニカと言ったな?ウチで働く気はないか?」
「えっ!いや、結構です。」
「何故だ?そんなチンケな冒険者より待遇が良いぞ。」
あ?このジジイここで殺してやろうか。
「お父様、いくらお父様といえど私の友人を悪くいうのは許しません。」
ユーリィさんが助け舟を出す。助かった。
「まぁ良いだろう。だが、ユウとか言ったな?この戦いで貴様は何をした?」
「指揮ですけど・・・」
あ?こいつまさかとは思うけど俺自身は戦ってねぇから認めないとか言うんじゃねぇよな?
「なるほど、お父様はあの戦いが理解できなかったのですね?」
「なんだと?」
「ユウは指揮をすると共に相手の強さを測り魔法で撹乱し勝利への一手を決めてましたわ。」
「ふむ・・・だが自身で解決できないことには・・・」
俺がイラついてることに気づいたのかメイリアとモニカが近づいてきた。
俺は二人に耳打ちする。
すると二人はニヤリとして答えた。
いいね、その反応を待ってたぜ。
今度はモニカが一歩前に出て発言する。
「残念です。もし私たちがユーリィさんとまだ未踏破の遺跡を攻略すれば・・・」
「公爵家の名声も上がって・・・」
「もう過ぎた話はよそう。それでは残念ですがユーリィさんとの遺跡調査の話は無かったことに・・・」
メイリア、ナイスアシストだ。
どうせなら一気に畳み掛けよう。
俺の言葉を聞き公爵の顔色が青くなる。
そりゃそうだ。今や甥はこの国の柱のような存在、しかし自身の子たちは騎士団の分隊長。現在国での公爵家の評価は王家の血筋以外何もないとか言われてる。
そんな中ユーリィさんが結果を出し、尚且つそれが最高難度の未踏破遺跡となれば・・・数ある公爵家の中でも優位に立てるだろうなぁ。
「あーあ、遺跡調査の遺物とかも何割か融通したり聖遺物や聖武器とかも・・・まぁいいか!俺らだけで分けようか!」
去る動きをしながら聞こえるように話す。公爵は血走った目でこちらを見る。
勝った。後は仕上げだな。
その後、なんとか言いくるめて俺たちの勝ちということにできた。
あの後、ユーリィさんへの親バカっぷりと公爵の焦り具合に笑ってしまった。
最初は渋ってたけど最終的には折れた。
「全くお父様は・・・」
「まぁユーリィさんが大事なんだと思うよ。」
目標の遺跡は敵は強くないけど複雑なトラップが多くギミック解除がままならずそこで死ぬ可能性があったり、即死レベルのトラップがある。そんな所に好き好んで娘を行かせたくはないわな。
AからEまである危険度でこの国に2つしかないAだからなぁ。
「ウチには【賢者】と【聖女】がいるからな。」
毒もトラップも対応可能!
まぁその前にテスト合格しなきゃなんだけどね・・・