ユーリィさんと・・・
ユーリィさんが大声で言うもんだから耳が痛い。
「戦い方ですか?」
「えぇ。私はまだまだって思い知らされたわ。」
うーん。俺から言わせたら魔力量が俺より多くて貴族として一流の剣士を指南役に付けてたであろうユーリィさんに教えることなんか無いと思うけど。
「剣技も美しく魔力量も魔法のバリエーションも文句なしなのに何故わざわざ私のような平民に指南を頼まれるのでしょうか?」
モニカもメイリアも隣で頷いている。
「今回の模擬戦闘で分かったわ。私には柔軟性が足りないのよ。」
「柔軟性ならストレッチなどが良いかと・・・」
「馬鹿にしてるの?」
ギロリと睨まれる。怖い。顔が整ってるだけにめちゃくちゃ怖い。
「受けても良いんじゃない?」
メイリアが軽く言う。
「いやいや、公爵家様だぞ。俺みたいな平民に何ができる。」
「・・・・・」
そんな無言で見つめられても・・・
「わかりました。ちょうど明日明後日休みですし。ですが、ユーリィさんがウチに来てください。」
「あら?何でかしら?私の家なら何でも用意できますよ?」
「いや、公爵家様にお邪魔して平民が教えるとかアウェー過ぎて倒れそうですので。」
マジで勘弁して欲しい。
普通に気後れするんだよ。
だって貴族のご令嬢だよ? 失礼があったら普通に首とサヨナラだわ。
「わかったわ。じゃあ明日貴方の家に向かうわ。」
「はい。お願いします。私の家はそこですので。」
そう言いながら方角を指す。
あー・・・教えることなんか本当にないのに・・・
俺は内心ため息をつくしかなかった。
翌日。
朝早くからチャイムが鳴る。
扉を開けるとそこにはユーリィさんがいた。
白いワンピースを着ている。
まさに御令嬢と言った雰囲気だ。
後ろを見るとメイドが数名いたメイドの手にはデカい鞄などが持たれていた。戦闘用の服かな。
「いらっしゃいませ。じゃあ先ずは体を動かさない事からやりましょうか。」
「えぇ。あとこれ。」
渡された袋の中には高そうなお菓子が入ってた。
「家の料理人が作ったものだから味は保証するわ。」
おー・・・貴重な砂糖をふんだんに使ったお菓子だ・・・余程の記念日でないと食べれないような贅沢品だ。
「すみません。ありがとうございます。」
ある程度挨拶をして普段集中する時に使ってる部屋に通した。
「じゃあ先ずはチェスをしましょうか。」
「チェス?遊びに来たわけじゃないのよ?」
「いやいや、チェスは相手の出方を読んで戦略を組み立てるゲームです。戦闘時に先を見通す力がつきますよ。」
「そう・・・ならお願いするわ。」
「ルールはわかりますよね?」
「えぇ。」
数分後。
俺の勝ちである。
ユーリィさんは強い。強いけど自分の得意な型に持ち込もうとしすぎて読みやすい。
「ユーリィさん。得意な型に持ち込もうとしすぎです。ある程度は追い詰めてもあとのパターンが同じだと簡単に読めます。」
「く・・・」
そこからしばらくチェスを指し続けた。
「やった!!」
何局指したか、ようやくユーリィさんに負けた。
「うん、この感じで戦闘中の思考の選択を増やすと良いですよ。」
そう言い終えたところでお腹の音が響き渡る。
俺の腹の音だ。魔物の唸り声みたいに鳴った。
「ぷっ!」
ユーリィさんが笑いを堪えて震えてる。
「そろそろ昼か。」
そう言ったところでノックが響いた。
「お嬢様、ユウ様。お食事の用意ができました。」
「あ、すみません。お客様に用意させてしまって。」
申し訳なさげに言う俺に対して首を横に振る。
どうやら気にしていないようだ。
「こちらこそ厨房をお借りしてしまい申し訳ありません。」
でもユーリィさんを含めて8人分も作ってくれたのはありがたい。
レイラたちを呼んで食事に向かう。
食堂に行くと既にテーブルの上に料理が並んでいた。
すごい豪勢な料理だ・・・
こんなに豪華な食事をしたのはいつ以来だろうか? あまりの豪華さに固まってるとユーリィさんに声を掛けられる。
皆で席について食事を始める。
肉も魚も野菜も全て美味しい。流石公爵家のメイド様と言ったところか。
「レイラ、レイサ。あとユニさん。この後ちょっと手伝ってもらって良いですか?」
「良いですよ!」
「勿論です。」
「うん!良いよ!」
3人の了承を得てユーリィさんの方を向く。
「では食事して少し落ち着いたら着替えて外に出ましょう。」
午後からは戦闘中にテンパらない様に訓練する。この前の模擬戦闘を見た感じ予想外のことが起こってからの対応が少しし雑になっている。
にしてもご飯美味しいな・・・