作戦
俺が仕掛けた魔法は三つ。強制的に眠らせる魔法と強い光を出すだけの魔法。そして強い音を出すだけの魔法。光と音の魔法を同時に仕掛けておいた。まぁどうせ身代わり人形で致命傷与えても死なないから爆破魔法でもよかったけど勇者と戦うって考えたら魔力は少しでも温存しとかないとな。
「そういえばえーと・・・」
「私はサヤ!」
「サヤさんの『恩恵』教えてもらっていい?」
「私の『恩恵』は【消音】20秒に一回10秒間自分の半径3mの音を一切消すの。」
・・・なるほどなるほど。
「じゃあ先ずは仕掛けた罠が全部発動しきったらサヤさんの【消音】で音を消しながら移動しよ
う。その間モニカの結界で守ってくれ。で、メイリアが【天の眼】で相手を捕捉してある程度爆撃
してくれ。」
これで相手の戦力を少しでも削れれば良いんだけど。
「一応この作戦ならほとんどは削れるだろう。問題はユーリィさんと勇者様だ。」
「確かにあの2人硬そうですよね・・・」
「勇者は俺が死ぬ気で食らいつけば・・・2秒は止めれると思う。その隙にメイリアが全力で魔法
を叩き込んでくれ。」
「任せて!!」
「公平性のために聖剣を使ってないのが救いだわ。あの武器持ってるだけでバフ効果と回復効果が
あるんだそんなもん持たれたら勝ち目ない。」
そうこう話していたら爆音が聞こえた。
「お、発動した。メイリア、視覚支援かけるから【天の眼】で確認してくれ。」
「ん〜・・・あ、いたいた。5人が気絶してて3人が頭抑えてうずくまってる。」
よしよし、思ったより聞いてるな。
「よし、作戦開始。モニカ結界お願い。サヤさん【消音】を発動できるようにしてください。」
「りょーかい!」
「はい!わかりました!」
さて、このパーティに足りないのは前衛。久しぶりに俺が前に行くか。
「アレ?ユウくんって支援術師じゃないの?」
「あぁ。そうなんだけどね。俺元々ソロで冒険者やっててその時は剣で戦ってたんだ。」
まぁゴブリン5体に囲まれて死にかけたけど。その時に比べたら体大きくなって筋力もついたし、
支援魔法と攻撃用バフも使いこなせるようになった。毎日ユニさんにも鍛えてもらってる。無様は晒せんぞ・・・!
「メイリアは【天の眼】で当たりを確認。敵が近くに来たらサヤさんに伝えて。モニカは結界の維
持に集中してくれ。」
衣擦れの音が消えた。敵が近くにいるのか。
メイリアの方を見ると指を刺してジェスチャーしてる。あそこか。
「《加速ボード》」
上に加速して剣を持ったまま落下攻撃を仕掛けようと思ったけどちょうど戦闘中か・・・2人を相
手にするのは困るな。よし。
風魔法でゆっくりと近くの茂みに隠れる。
膠着状態か。
「ガラ空きもーらい!!!」
わざと大きい声を出してこっちに意識を向けさせる。手前のやつが振り向いた隙に奥の奴が倒す。
「う・そ!」
「ひ、卑怯者・・・」
「命の奪い合いに卑怯もクソもあるか。」
雷魔法を当てて気絶させる。
もう1人もそんなに強くなかったから助かった。やっぱ戦闘経験の差かな。
「げ、ユーリィさんだ。俺が行って意識を割かせるからメイリアが横から決めてくれ。」
「巻き込んだらごめん。」
そんな技量低くないくせによく言うぜ。
「《加速ボード》」
一気に加速して距離を詰める。
「ハァッ!」蹴りで防がれた。
「いてて。容赦ないぜ・・・」
「貴方ね?罠を仕掛けたのは。お陰で私のチームは私以外全滅よ。」
「一番倒したかった人が残ってちゃあ世話ないですよ。」
会話をして意識を割こうにもメイリアたちに気付いてるのか警戒を緩めてくれない。
「《加速ボード》」
ユーリィさんの周りに大量にボードを生成する。
周囲を高速で移動して撹乱する。
少しずつ斬撃を与えて削るしかない。
!?崩れた!
背後に回って羽交い締めをする。
「いけ!メイリア!!」
この女なんてパワーしてやがる。筋力強化かけても外されかけてる。流石は勇者様の血縁だ。
メイリアが放った雷の矢がユーリィさんを貫いた。
そのまま俺は地面に叩きつけられる。
痛え・・・ 腹が熱い。
ユーリィさんが俺を斬りつけたらしい。
防御捨てて俺への攻撃優先しやがった。ただ最後の一撃は浅かった。まだ戦える。
「《治療》」
傷口を塞いで立ち上がる。
取り敢えずユーリィさんを確実に仕留めてからモニカに《回復》をかけて貰おう。
「あ、気絶してる。」
まぁいいか。これで俺たちの勝ちだ。
俺も結構ダメージ受けたから回復しないと。
モニカのとこに戻る。
お、なんか凄いなこれ。
モニカが手をかざすと緑の光が出てきて、それが俺の体を包む。心地いい。
「さて、残る強敵は勇者のみ。」
どう攻めるか考えないとな。