4層踏破/帰還
俺は見張りをしながら今日の戦闘を振り返る。
まずは敵の数を減らす事。次に核の破壊。最後に敵の動きを止めること。
今回の戦闘では敵を殲滅する事よりもいかに早く敵の数を減らして倒すかが重要だったと思う。
それにしても、あの巨大なスライムを倒すためにはかなり火力が必要になったな。
うちのパーティのメイン火力はメイリアとユニさんだけだ。しかしメイリアの魔法はダンジョンだ
と場所によっては崩壊しかねないからな。
「そろそろ見張り変わりますよ。」
「あぁ。助かります。」
ソフィーさんが見張りを代わってくれた。正直助かった。
とりあえず休息を取って探索に備える事にしたのは正解だったな。だいぶ疲れが取れた。
「今日は4層を攻略していく、ここをクリアしたら一旦外に出る。」
「何故です?」
「俺たちのパーティははじめてのダンジョン攻略なんだ、思ったより疲れが溜まってるからね。念
には念を入れておこう。」
みんな納得してくれたみたいだ。
途中ゴブリンやスライムなど弱い魔物を倒しながら進んで行く。
ボス部屋の扉が見えてきた。
「よし、回復ポーション飲んでおこう。」
全員にポーションを配り気合を入れ直す。ボス部屋に入ると鱗に包まれた蛇のような生物。
「これは・・・リザードマン!?」
メイリアの声を聞いて警戒を強める。
どうやら知能も高いようだ。
リザードマンは手に持った槍を構えこちらを観察している。
ソフィーさんが重力魔法でリザードマンを重くする。
相手は長柄武器リーチの有利を潰すには・・・
「ソフィーさん、停止魔法の用意を。」
「えぇ。少々お待ちください。」
停止魔法は発動までに結構な時間がかかる。
それまで・・・
「《具現化魔法》!」
岩の柱を作りリザードマンの上に落とすを繰り返し柱で動きを制限する。メイリアと前衛組でチク
チク攻撃して意識を分散させる。
こっちの前衛は片手剣と短剣対して相手は長柄武器この狭くなった場所でできることはただ一つ。
上に跳ぶことだ。
「来た!今です!!」
成功した。
「なまじ知能が高かったのが仇になったな。」
途中で俺の動きを制限する狙いに気付いて俺の動きも制限されるまで逃げ回ってからの先に俺を潰
しに来た。そこを停止魔法で止める。綺麗に決まってよかった。
「じゃあトドメ刺して帰るか。」
そう言ってメイリアの方を見ると既に魔法を発動していた。
リザードマンの足元に魔法陣が浮かぶ。
激しい轟音と共にリザードマンが粉々に消し飛ぶ。
「判断早いよメイリア。」
「えー。だってトドメって言ったじゃん。」
カランと音を立てて魔石が落ちる。
「まぁ魔石が無事だから良いや。」
魔石を拾うとそのままダンジョンを出る。
ギルドに報告をしにいく。
「すみません、ダンジョンに挑戦してきたんですけど・・・」
「はい、届出は頂いてますので新層突破でもない限りは報告は結構ですよ。」
「あ、回りくどくてごめんなさい、実は4層まで突破してきたんですよ。」
ギルド内がザワつく。受付嬢も驚いた顔をしている。
説明ついでにダンジョンで得たアイテムを売る。
今回はオークの魔石が1つとゴブリンのデカイやつの魔石3個リザードマンの魔石1個。それとホフ
ゴブリンが着けてた短剣と指輪だ。
「で、情報を売りたいんですけど。」
「は、はい!えーっと新層の情報は銀貨5枚で、3層のボスの攻略法は銀貨3枚です。」
お、結構な値段だな。
報酬は全部で金貨4枚と銀貨4枚か。
金貨4枚もあれば田舎で半年は生活できる・・・
「よぉ、兄ちゃん随分と景気良いみたいじゃねぇか。」
振り向くといかにもといった風貌の男達がいた。後ろに2人程連れがいるな。
人数は6人で全員俺より体格が良い。
特にリーダーっぽい男は身長190くらいはあるんじゃないか? スキンヘッドで右目に大きな傷があ
る。
「ええ、ダンジョンのボスの素材がいい値段で売れたもので。」
冒険者にとってダンジョンのボスを倒すことは一つのステータスだ。
しかし目の前の男たちはそれが気に食わないらしい。
「さっきお前のパーティ見たけどどうせお前はおんぶに抱っこで甘えてただけだろ?」
馬鹿にするように煽ってくる。
「え、はい。」
「は?」
頭に血を上らせて怒るのを想像してたのか呆気に取られている。いや、事実だから否定のしようが
無いし。
まあ良い!今だ!逃げろ!
ダッシュで逃げる。
後ろからなんか聞こえるが無視だ! ギルドを出てしばらく走ったところで息を整える。
よし、宿に戻ろう。
後から聞いた話だが俺たちの前に3層のボスまで進んだのが彼ららしい。そりゃポッと出のガキど
もに功績上書きされたら悔しいわな。