進展
レクスの知り合いに会いに行くために魔の森を歩き続けている。ここは魔物が馬鹿みたいに多いし、一体の強さがあり得ないくらいに強い。
「クソが、ここまで体力持ってかれるとは・・・」
6年近く冒険者として活動してきたのに体力がなさ過ぎて困る。
「さ、もう一息だ。」
魔の森のメリットは周囲の魔力の濃さのお陰で魔力を頼った探知ができないため、魔族に見つかる可能性が低いこと。デメリットはこっちも魔力で索敵することができないことだ。俺は雷魔法を微弱に周囲に放つことで生物を感知することができる。魔力の減りは早いが、余程強力な魔物でもない限り俺の出番はないし、強力な魔物が出てくるのはもっと奥の方だ。
「ついたよ。」
そこには小ぢんまりとした家が建っていた。
「僕たちは積極的に人間に危害を加える気のない魔族なんだ。だからこの先の領域に居場所がない。」
だから森の中で暮らしてると。
家の扉をノックしてボソボソ何かを喋った後に扉が開いた。そこにいたのは物語の挿絵に出てきそうないかにもな格好をしている魔女だった。
「ずいぶんな大所帯だねぇ。で、なんだって?」
「ここ最近、この付近に人間が越してきたところあるかい?」
「ちょっと待ちな・・・ふぅん。人間の複数反応があった。」
「どこに!?」
苦々しい顔をしながら答える。
「魔王軍四天王、気紛れのシェラ直属の部下、血塗れのザイエンのところだ。」
誰と誰だ・・・?魔王がいるのは知ってるけど四天王?
「四天王・・・初めて聞いたぞ。勇者さん知ってる?」
「あぁ、先代の勇者が四天王の一人を討ってるからね。ただ・・・」
勇者の先代が相討ちで四天王を討伐したが、勇者っていう希望を失った恐怖が流れるのは困るから一部の貴族や騎士にしか知らされてないと。まあ恐怖に駆られてとんでもないことしでかす人いるし、正解か。
「そう、その討たれた四天王の後任がザイエンだ。今代の魔王の意思に反して人間に対して積極的に害をなそうとするんだ。比較的若い魔族でね、人間を利用することに忌避がないんだ。ザイエンが与えた土地に人間と魔族を住まわせ交配させているんだろうね。」
そうなると・・・作戦がいるな。
「よし、今回は一旦引き返して作戦を練り直す。レクス、今後とも協力してくれる意思があるならついてきてくれないか?」
「いいよ。面白そうだし、何より四天王に一杯食わせてやれそうだし。」
魔の森から出るためにまた歩くと考えるとマジで気が遠くなる。
「ん?索敵になんか引っかかった。戦闘用意。」
剣を抜いて構える。
「たすけて・・・」
勇者が出ようとするのを止める。
「何をするんだ!」
「小さいガキの声だ。なんでこんなところにいるんだ?しかもここはそこそこ深い。運よく魔物に見つからなかったとしても、こんだけ濃度の高い魔力の中で正気でいられると思う?」
痺れを切らして出てきたのは背中の口のような器官から【たすけて】と鳴いている。
「うーわ、趣味悪い魔物だことで。」
「ヘルプマンだね。この森にしかいない魔物だよ。」
人間が死ぬのはこの魔物相手が大半だそうで。
「《穿光》」
足を打ち抜き動きを止める。レイサが首を刎ねる。
「早いとこ出よう。またこの胸糞悪い魔物また来るかもしれん」




