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八話 絶賛喧嘩中です

 次の日、目を覚ますと早く寮を出た。リベルタに会わないためだ。この時間なら居ないはずと思っていたのだが。

 寮の玄関を出た先にはリベルタがいる。私は考える前に学院に向かって走っていた。だが、それをリベルタが許すはずなかった。

 「イティシア様」

 「……」

 「すみません。昨日のこと。私の考えが浅はかでした。両想いだと思ったら気持ちが先走っちゃって」

 両想いと分かっていなかった時点でキスしたのに何言ってるんだ。

 「私がいつ好きだと言いました?勘違いしているようなので訂正します。私はリベルタ様のことを好きではありません」

 「え」

 「では失礼します」

 ここまで言っておけばもう大丈夫だろう。

 学院に着くとまだ誰も居なかった。まずはじめの授業である魔法の授業が行われる部屋へと向かう。

 少し経つとひとり学院の生徒が入ってきた。エリアンネだった。

 「イティシア様。お早いですね」

 「エリアンネ嬢もですよ。それより、今日は私より早く出ていたようですが、何かあったのですか?」

 部屋にはもうエリアンネの制服がなかった。先に出たようだけど、エリアンネが来たのは私より遅かった。

 「調べものをしていたのです」

 「何を調べていたのですか?」

 「秘密です!」

 エリアンネは左手の人差し指を唇に当てて言う。

 もうひとり教室へと入ってきたが、エリアンネは嫌な顔をしていた。私がエリアンネの方を見ていると、魔法がこちらへと飛んできた。

 「ベテリア」

 エリアンネの気迫がいつもと違った。

 「……はい」

 ベテリアと呼ばれる男はエリアンネにこっぴどく怒られていた。

 「エリアンネ嬢は彼とはどういう仲なのですか?」

 「私の部下です」

 「はい?」

 「何と言えばいいのか、あの」

 エリアンネは上手く説明が出来なくて困っているようだった。

 「国の魔法師のってことです。メンティア魔法師は私より遅く入りましたが、今となっては上司ってわけです。あの、スリネラ伯爵令嬢。お願いがあるのですが」

 「イティシア様。この男の言う事を信じてはいけません」

 すかさずイティシアの間にエリアンネが入る。

 「何をするのですか。メンティア魔法師」

 「まずはお願いというのがどういうことかお聞きしてもよろしいでしょうか」

 「分かりました。お願いというのは手を握るということです」

 「その行為が何に繋がるのですか。意味のない行為であれば断ります」

 「魔力量を測りたいのです。その漏れ出している魔力にメンティア魔法師も気づいているはずです。魔力を押さえる魔道具を付けていてもこれです。それを取ったらどれだけになるのか。気になるのです」

 え、そうなの?魔力量なんか測ったことないけど、私が魔力を抑える魔道具を付けてたってことはこれを渡したお父様は私の魔力量に気づいているってことだよね。

 「ちょっと待て。今日の授業が何か忘れたのか?ベテリア」

 先生が息を切らして来ていた。そういえば今日の授業は魔力測定だった。

 「えー、先輩。僕は今見たいんですけど。というかこんな魔力量の持ち主が何で魔塔に入っていないんですか?メンティア魔法師の魔力量を明らかに上回っているし」

 「上の判断だ」

 てことは上には一応話はして駄目だってなったってことか。

 「そういう事なら仕方ない」

 もっと何か言うかと思ったがベテリアはすぐに引き下がった。

 「じゃ、授業楽しみにしてますね」

 「あんな者の言う事信じないでくださいね。イティシア様」

 エリアンネはイティシアの手を握って言う。

 「聞こえてるんですけど」

 二人の間に火花が散っているように見える。

 少し経つと他にも生徒たちが入って、授業が始まる時間になった。

 「じゃ、今回の授業は魔力測定。さっそくベテリアに見本をやってもらおう」

 ベテリアは前に出て教卓の上にある水晶に手を当てる。

 「この魔力測定では、下からD、C、B、A、Sがある。ここで魔力がない奴はいないと思うが魔力がない者は何も起こらない。やることは水晶を触るだけ。丁度結果が出たな。こいつはSだ。まあ魔法師だから当然の結果だな」

 学院に入っている者の中で魔法師は珍しい。学年に一人いるだけで珍しいのに今年度は二人もいるからベテリアとエリアンネは結構目立っている。

 「何か質問がある者はいるか?」

 ある生徒が手を挙げた。

 「もし、その水晶が割れたときはどうなるんですか?」

 「それは測定不能。つまり水晶では測定できない数値の魔力量を持っているということだ。ま、それくらいの魔力を持っていたら学院に入る前に目を付けられて魔法師になってる。例えばそこにいるエリアンネとかな」

 皆の視線がエリアンネに集まった。だが、エリアンネは平然としていた。こんなことには慣れているという感じだ。

 「じゃ、端から横に測定していけ」

 「では、私は記録者の方に回るので」

 学院に通う魔法師は絶対に魔法と魔道具を選択しなければいけない。そして、そのほかの授業を免除できる。魔法と魔道具の授業では先生たちの助手として皆を手伝う。

 「分かりました」

 ベテリアが結果を言い、それをエリアンネが記録していく。

 「C、B、A、B……」

 ついに私の番がやってきた。私は水晶に手を当てようとするが、それを先生が制止した。

 「先輩、どういうことですか?」

 「上からこれを止められてるんだ。後輩の言う事でも叶えられることと叶えられないことがある。それとこれ」

 先生は私にある一通の手紙を渡した。手紙を綴じている封蝉は神殿の物だ。

 「先生、早退します」

 中身を見なくても内容は分かった。早く馬車を呼んで神殿に向かわなくてはいけない。

 「ああ、分かった」

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