七話 それぞれの友人
「で、なんでキスした」
興味津々にディアストが聞いた。
「お前、そっちより重要なことがあるだろ。キスした相手は誰だ。お前に婚約している相手何か居なかったはずだが」
「いや、婚約者はいる」
「公表されていないね。それほど隠さなきゃいけない相手なのか。お前が俺たちに言ってないくらいだから神殿扱いって感じか。俺たち皇族が関わらないのはそこくらいだしな」
セラストニはディアストと違い頭が回る。本当にいつも少しの情報だけで答えを導こうとする。
「じゃあ、その婚約者が相手ってことか?」
ディアストがリベルタに聞く。
「ああ、そうだ」
「おお、当ったり」
ディアストは自分の予想が当たったことに喜んでいた。
「両想いじゃなかったのか?キスするんだから両想いだろ」
セラストニは友の悩みを解決しようとしていた。
「いや、俺の片思い」
リベルタは友人に対しては敬語なしに話して一人称は俺だが、イティシアの前では敬語を使い、一人称を私としている。
「何でキスしたんだ?」
「絶対好きになれないってわかってたから」
「好きになる可能性はあるだろう。絶対何てない」
「いや、結局彼女は俺のこと好きだって」
「言ったのか?」
「いや、そんなことを言われた」
リベルタのやることは極端すぎる。彼女もリベルタのやったことに混乱したことだろう。
「なんて言われたんだ」
「キスしたら我慢していたのにって」
「そりゃ好きって言っているようなもんじゃねえか」
ディアストが話に入ってくる。
「ディアストは舞踏会に参加してこい」
「はいはい」
ディアストは扉を開けて舞踏会が開催されている広間へと向かった。
「で、それからは」
「それから逢引中の男女を見つけて私たちもやりますかって伝えてやりませんって。その後、彼女からキスされるのかと思って目を瞑って待っていたら逃げられた」
「最低の最低の行為ですね」
セラストニはリベルタのことを軽蔑した目で見ている。
「え、そんなに?」
よくこの目でセラストニに見られるのでリベルタは慣れている。
セラストニは頷く。
「じゃあ、どうすればいい」
「それは私が考えることではなく、あなたが考えることです」
セラストニも部屋を去り、部屋にはリベルタだけが残った。
「イティシア様?」
聞きなれた少女の声。エリアンネの声だ。
「エリアンネ嬢?どうしてここに」
「ああいう場に慣れなくて。出てきちゃいました。イティシア様はどうしてここにいるのですか?リベルタ様は」
「色々ありまして、一人で帰ってきちゃいました」
「そうですか」
エリアンネのこういうところはいつも助かっている。聞いてほしくない時は何も聞かないで一緒に居てくれる。
「イティシア様。私、何度も夢を見るんです」
「どんな夢ですか?」
エリアンネが相談をしてくるのは初めてだった。
「この世界を何度も生きている夢です。それも同じ時間を」
「怖いですか?」
「怖いというより抜け出したいという気持ちの方が大きいです。やけに現実味があって。それと……こんなこと言うのは」
エリアンネは周りを確認して誰か人がいるか見ていた。
「魔力反応はありません。誰もいませんよ」
「イティシア様が殺されるのです」
特に驚きもしなかった。それはゲームの展開と同じだから。私が生きる未来はない。誰かに殺される。
「そうですか」
別に驚きもしなかった。それはもう分かっていることだし覚悟していた。
「驚かないんですか?それに酷いことを言いました」
「理由は言えませんが知っていたんです。エリアンネ嬢言ってくれてありがとうございます」
私はエリアンネの頭を撫でた。
「寒くなってきましたね。部屋に戻りましょうか」
私とエリアンネは同室だ。まさか一緒になると思わなかったがあまり話さない令嬢と一緒になるよりはいいだろう。
一人ひとりの部屋を設けるための部屋はない。だから一部屋に二人の生徒が入る。だが、皇族に万が一のことがあってはいけないので皇族の部屋は別に設けてある。
「はい!」
エリアンネは元気よく返事をして私についてくる。
「そういえば、イティシア様の選択授業は何ですか?」
「経済、魔法、魔道具、魔法原理、剣術、地理、歴史、錬金術、植物、数学ですね」
「そんなに取って大丈夫ですか?」
明らかにエリアンネは驚いていた。そんなに多いのか。
「はい。エリアンネ嬢はどの授業を?」
「魔法と魔道具です」
「二つだけで大丈夫なのですか?」
二つだけだと結構な時間が余るし、最低五教科は取らないと駄目だ。
「特別措置と校長は言っておりました。あとは王命だと」
王はここまで魔力と魔力操作に特化したエリアンネを戦場に持っていくつもりなのか。ゲームではセラストニがエリアンネを助けてくれたがここはゲームとは違う。助けてくれるか分からない。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です!それにイティシア様と一緒ですから」