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六話 舞踏会での出来事 後編

 「私はイティシア様のことが好きです」

 「私は前の生も合わせればリベルタ様より年上です。リベルタ様と恋に落ちるなどどうしても罪になると思ってしまうんです」

 前世の時の法律についていつも思う。リベルタと結婚してもずっとこれは変わらない。リベルタをそういう目で見ることはできない。

 「すみません。リベルタ様は良い人です。だけれど私にその地位は相応しくない。もっと相応しい方がいるはずです。それに私は特別頭が言い訳ではありませんし、容姿もよくありません」

 リベルタにはクイテラ公爵令嬢が相応しい。

 「そんな事言ったらイティシア様よりテストの点数が低い人はどうなるんですか?いつも一位じゃないですか。そんなに謙遜しても無駄ですよ。それに容姿なんてどれだけ自分に自信がないのですか。イティシア様は綺麗です。誰よりも」

 「え」

 また顔が赤くなってしまう。

 「本当はこんなことおしたくはなかったんですが。すみません」

 なぜ謝るの。今から謝らなければいけないことでもするつもりなの?

 私の唇に温かいものが当たった。目の前にはリベルタの顔がある。ということは。

 私はベンチから立ち上がり、唇を手で押さえる。リベルタはこちらを熱い視線で見ている。

 「すみません。今日は一人で帰ります」

 私はお辞儀をするのも忘れてその場を立ち去ろうとするが、歩くことができない。右手がリベルタに捕まれている。

 「冷静じゃないイティシア様もいいですね」

 私は近寄って来るリベルタから逃げるために引き下がるが、壁に背中が当たった。右に逃げようとするが壁にリベルタの手がつき、動けない。

 また唇を塞がれた。今度はもっと長いキスだった。息が出来ず涙目になる。

 「はあはあ」

 ようやく解放されたと思ったがそれはどうやら違うらしい。

 「何でそんなに私に固執するのですか」

 「あなたが好きだからです」

 真っすぐ私を見つめるリベルタから目線が外せない。

 「イティシア様の優しいところが好きです。イティシア様が私に向けてくれる視線が好きです。イティシア様の声が好きです。イティシア様の」

 「もう大丈夫です」

 これ以上言われたら心が持たない。もう色々なことが起こりすぎて頭がパンクしそうだ。

 「大好きです」

 腰が抜けてしまい、私は地面にへたり込んだ。

 「何ですか?もう、人が我慢しているのに、何か我慢していた私が馬鹿みたいだし、ああ、もう」

 一生懸命この気持ちを我慢していたのに。

 丁度視線を木に向けたときに人影が見えた。私は思わず視線を逸らす。それに気づいたリベルタも木の方に目をやりそれに気づく。

 「逢引中でしたね」

 ここってそういう場所なの?

 「私たちもやりますか?」

 「やりません!」

 リベルタのペースになってる。これ以上リベルタの好きにさせたら駄目だ。

 私はリベルタに近づき、甘い表情をする。キスしてくると思ったのかリベルタも顔を寄せてくる。私はリベルタが目を瞑ったのを見ると馬車に向かって走り出した。

 少しするとリベルタはイティシアが居なくなったことに気づいた。

 「嵌められたな」

 リベルタは手を壁につき、はあと溜息をついた。

 「流石に急かしすぎたか」

 


 「何ですか。リベルタ様は、了承もなしに」

 イティシアは乗ってきた馬車の御者に話を付けて寮へと戻っていた。

 「何があったんだ」

 御者もこのようなイティシアの様子を見たことがなく、何をしでかしたんだと思っていた。

 「着きましたよ」

 「ありがとうございます」

 イティシアは御者に一礼をして寮へと戻った。

 案の定寮には誰も居なかった。このままここに居ても何もすることがないので外に出て散歩をすることにした。

 月明りで照らされた花はとても綺麗でベンチで花を見ることにした。 

 「落ち着く」

 頭を整理しようと一度考えてみたが予想外のことが起こりすぎてて今考えても無駄だと思い、考えるのをやめた。

 「今の私はイティシアで藍じゃない」

 そう考えると楽になった。イティシアとして考えられるから。

 「私が前世の記憶を持っていなかったら」

 何度もそう考えたことがあった。もし、私がって思ってもそれは変えられない。

 「ちゃんとリベルタ様を好きになれてたのかな」

 


 「お?リベルタ帰ってきたか。って女の子はどうした?めっちゃ可愛い子だったじゃん」

 会場へ戻るとリベルタの友人で騎士団長の息子ディアストが話しかける。女たらしで有名なやつだが根はいい奴だ。

 「逃げられた」

 「なに。何かリベルタがしたのか?」

 皇太子のセラストニも近づく。

 「キスした」

 「え?なんて言った。キスってお前婚約もしてない令嬢とそんなことを」

 ディアストはからかう気満々だったがセラストニは周りに聞かれていないかが心配で防音魔法をかけていた。

 「お前、ここでそんな話するな。部屋を借りるからそこで話を」

 セラストニは近くにいた使用人に部屋を用意するように言い、三人でそこへ向かった。

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