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四話 パートナーが決まりました

 「ああ。どうしよう」

 「どうされました?お嬢様」

 私が星の旅人とリアンネは知っている。このことを言える存在が言えるのは正直ありがたい。

 「エリアンネ嬢と友達になってしまって」

 「それがどうかしたんですか?」

 「私は平和に過ごしたいの。主人公と関わったらそんな平穏な日々は過ごせないでしょ」

 「ですが、あのままにしておいたらお嬢様はきっと後悔していたと思いますよ」

 リアンネは私の扱い方が良く分かっている。

 「そうですね」

 確かにあのまま見て見ぬふりをしていたら私は後悔するだろう。生まれが違うからと皆からない者扱いされるのはおかしいし。

 「それと学院で行われる舞踏会。パートナーはどうされるんですか?」

 あ、忘れてた。

 新入生が入学してきたことを祝うための学院の生徒だけで行われる舞踏会。パートナーは貴族であれば誰でもいいというわけだ。まあ、誰でもいいと言われているけど噂にならない相手だ。例えば婚約者や兄弟、従弟とか。身の回りの騎士とかでもいい。

 「お嬢様は公子様をお誘いしないんですか」

 「リベルタ様にはたくさんのお誘いが入っていると聞いたわ」

 私たちの婚約は皆に公表していない。私が星の旅人だからだ。リベルタの婚約者というだけで注目されるのだから調べられたら大変だということで隠している。

 「私がリベルタ様のパートナーなど務まるはずがありません」

 相応しくないその立場は私には重すぎる。それに、周りの視線が怖い。

 「ではどうしますか。一人で入場するのはあまりに悲しいですよ」

 こうやってリアンネは私の背中を押してくれるが勇気が出ない。何か誘うのって告白みたいで恥ずかしいと思ってしまう。

 「分かっています」

 ちゃんと勇気を振り絞ってリベルタに断られよう。

 

 

 次の日、私はリベルタのいる二年生の階へと向かった。

 「イティシア嬢。どうされましたか?」

 いつもと違うリベルタに少し悲しさを覚えたが、ちゃんと言おうと思った。

 「リベルタ様。舞踏会で私のパートナーになってくださいませんか」

 「ええ」

 「そうですか。残念です。って、え、何て言いました?」

 思っていた答えとは違うようだったが、

 「イティシア嬢のパートナーになりますよ」

 「あ、はい」

 なぜだ。他の可愛い令嬢のパートナーになっても私は怒らないのに。なぜこんな平凡な私に。

 二年生の階から下りる際にある令息に話しかけられた。

 「あの。イティシア嬢ですよね」

 「ええ、そうですが」

 「あの、私の舞踏会のパートナーになってもらえませんか」

 「すみません。あいにくもうパートナーがいますので」

 「そうですか」

 令息は少し悲しそうな顔をして帰っていった。

 私は一年生の階へと戻り、自教室へと帰った。すると一番先に目に入ってきたのは令息たちに囲まれていたエリアンネだった。

 「あ、イティシア様!」

 犬のように来てくれる彼女に前世で飼っていた犬を思い出した。ついふっと笑ってしまう。

 「私、皆さんにパートナーになって下さらないかと誘われたのですが、どうすればいいのか分からず」

 エリアンネにとってはきっと初めての舞踏会だろう。作法とかちゃんとしている人で踊りをリードしてくれる方が一番いいのだけれど。

 「エリアンネ嬢は踊れますか?」

 「お恥ずかしながらあまりうまくは踊れません」

 「では、選ぶコツをお教えしましょう」

 まあ、私もそんなに誘われた事はないんだけどね。

 「はい!」

 エリアンネは元気よく返事をした。

 「エリアンネ嬢はこの中で誰か気になる殿方はいますか?」

 「いません」

 即答か。でも、イケメンぞろいだから選び放題だと思うんだけどな。

 「私はイティシア様のような方がパートナーだといいです」

 つまり、私の男バージョン。この中で誰かいるか。

 「では、セリベアド卿はどうですか?」

 「では、そうします!」

 パートナーが決まったようで良かった。

 


 ついに舞踏会の日になった。私は念入りに体をほぐされてドレスを着ているところだ。

 私が生まれたときの伯爵家は決して裕福とは言えなったが、前世で培った記憶で石鹸を生み出したり、お菓子を生み出したりしてお金を儲け、結構な金持ちになったというわけだ。両親には商人の才能があるんじゃないかと言われたがあいにく商人になるつもりはない。

 「お嬢様。終わりましたよ」

 私は鏡を見て今の自分を見る。相変わらずいつ見ても整った顔をしている。

 「では、行きましょう」

 寮から出るとたくさんの馬車が止まっている。馬車の前では令息たちがいた。私は公爵家の紋章が入った馬車へと向かって歩いていく。

 「リベルタ様!」

 私はリベルタを見つけると声をかけた。いつもはリベルタの返事があるのだが今日は返事がなかった。

 「どうされました?」

 「いえ。綺麗ですね」

 きっとお世辞だろう。こういうところがきっとモテる理由だ。お世辞の言い方が上手い。まるで本心のようだ。

 「ありがとうございます」

 「では行きましょうか」

 馬車に少し揺らさられ、私たちは舞踏会の会場へと向かった。

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