表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/31

最終話 モブの私が皆に名前を知られました

最終話です!今までありがとうございました!

 「あの、リベルタ。昨日の返事なのだけど」

 ごくっとリベルタは唾を飲んだ。

 「私、あなたのこと好きよ。だから、あなたの言ったこと信じてもいい?」

 「はい。信じてください!……あの、イティシア様。抱きしめてもいいですか」

 「いいわ」

 すると、リベルタが勢いよく抱き着いた。

 「ねえ、リベルタ泣いているの?」

 リベルタが小刻みに震えて、涙を引きずる音が聞こえたため言って見る。

 「はい。嬉しくて。人生で一番幸せな日ですから」

 満面の笑みでリベルタは言った。

 「あの、イティシア様。結婚式はいつにしますか?」

 「ちょっと流石に早すぎない?」

 「結婚適齢期ですよ。私たち」

 そういえば今の私たちの年齢は十七。結婚していても不思議ではない年齢だ。

 「普通ですよ。普通!」

 早く結婚したいのかリベルタはぐいぐいくる。

 「ちょっと待って。色々やることがあるから。まだそういうのはなし!」

 「え、お預けですか?」

 そういうリベルタに私はリベルタの頬にキスした。

 「これでいいでしょ」

 私は真っ赤にしてその場を去った。

 リベルタは少し経った後に状況を理解し、顔を赤くした。

 「気持ち言えたんですね」

 皆が嬉しそうな目線でこちらを見る。

 「もしかして、皆知ってたの?」

 「ヘンリア様が一番ご自身の気持ちに鈍感なのですね」

 オベリアがふふっと笑って言う。

 「オベリア、私はもうヘンリアではないの。聖女は引退したし。今の私はイティシア・センストビアよ」

 「そうですね。イティシア様」

 それから学院に通っていた時の友達である方たちに手紙を書いた。自分は今元気に暮らしていること。聖女は辞めてひっそりと暮らしていること。

 「イティシア様。何書いてるんですか?」

 私が手紙を書いているとリベルタが上から覗き込んできた。

 「元気だよって手紙です」

 「結婚式への招待状ですか?」

 「意地悪してますか?」

 「少しぐらいいいじゃないですか!」

 今ではこうして冗談を言える中になった。ここ最近で随分距離が縮まった気がする。

 「でも、結婚式より前にやることがあるでしょ」

 「そうですね。ついに今日ですか」

 聖女の契り。完全に聖女をやめるということ。

 神殿につくとユーストが少し残念そうな顔で私たちを見る。

 「ヘンリア様。あなたはリベルタを生涯愛すと誓いますか?」

 「はい。誓います」

 「リベルタ。あなたはヘンリア様を生涯愛すを誓いますか?」

 「誓います」

 「では、これで聖女の契りは結ばれたことになります」

 そう言ってユーストは私たちに契りの証拠である紙を渡した。

 その後、どっと疲れが押し寄せた。前もってユーストに言われていた全ての聖女の力を失うというのがこの事だろう。

 神殿のベッドで少し眠らせていただいた後、私たちは家へ戻った。

 相変わらず神殿の護衛はつくらしい。聖女という任は降りたけど。星の旅人という任はまだあるようで、その力を悪用されないためという理由らしい。

 「あなた達も好きなところに行っていいのよ」

 「いえ。私たちはあなたの剣になると誓いましたから」

 そう言われた時、ここに来た時のことを思い出した。前にも同じようなことを言われたと。

 「あなた達が頑固者だったことを忘れていたわね」

 私は笑って言った。

 「結婚は一か月後にすることになった。ユーストが是非私の神殿で執り行いたいですと言うので、私たちはユーストが神殿長を勤める神殿で式をすることにした。

 招待客は親族と友人たちだけでする質素なものであったが、その者達はこの国でのトップばかりだ。

 私のお母様、お父様、お兄様。そしてユーストのお父様、お母様。エリアンネ、セラストニ、ディアスト、ミシィア。

 お母様とお父様は泣いていて、お兄様はいつも通りの顔だったが、少し口角が上がっていた。エリアンネは何というかリベルタを睨んでいた。セラストニは私たちをお祝いしてくれて、ディアストもミシィアも私たちを応援してくれた。

 式が終わると私たちは家へ戻って、またいつも通りの日々を過ごした。変わったところと言えば、私の家がリベルタの家にもなったことだろう。

 それから間もなく、ディアストとミシィアも結婚した。招待客として式に行くと、ミシィアのお腹には新しい命が宿っていることを教えてもらった。

 「おめでとうございます」

 「ありがとう」

 ディアストも最近雰囲気が柔らかくなった気がする。前まではもっとやんちゃな感じだったのに。

 それから二年後。セラストニが国王になった。セラストニは皆に愛される国王になった。

 エリアンネは魔塔に居たが、あの後、セラストニの目に留まり、王宮魔法師となったらしい。

 「エリアンネは魔塔の人と結婚するみたいだね」

 エリアンネから来た手紙を見て言った。

 「そうすると、独り身はセラストニだけですね」

 「隣国との王女との結婚話があるって噂があったね」

 「所詮、噂です。本人から言われるのを待っていましょう」

 「そうね」

 それから少しすると私たちも妊娠したことが分かった。

 「リベルタ。私妊娠したわ」

 まずはじめに喜びをリベルタと分かち合った。

 「本当ですか?」

 リベルタはイティシアを抱きしめた。

 「本当よ」

 少し経ち、流産の心配はないと医師に言われ、皆にも妊娠したことを話した。

 「おめでとうございます」

 まず最初に伝えたのは護衛の皆だ。

 その次に友達と家族に手紙を書いた。

 皆からの祝福の返事があったが、セラストニからの返事には祝福の他にある内容が書かれていた。

 「リベルタ。これ見て頂戴」

 「どうしたんですか?」

 私はリベルタに手紙を見せた。

 「近々、レイナ王女と結婚します」

 レイナ王女は結婚するのではと噂されていた王女の妹だった。

 「ほら、だから言ったじゃないですか。そもそもあの用心深い方が結婚と噂されている方と結婚するなんてと思ってたんですよね」

 何かからかわれている感じがして嫌だ。

 私はリベルタの頬をつまむ。

 「何ですか?少し痛いです」

 私はリベルタの頬をつまむのをやめた。

 「?」

 やはり国王の結婚式は豪華で何度もドレスを着替えていた。

 レイナ王女は大人しい方で、誰にも愛されるような感じの雰囲気を纏っていた。

 「この方なら安心ですね」

 私は二人を見て言う。とても幸せそうだ。

 「ねえ、リベルタ。あなた、公爵になる気はないの?お父様からお話があるのでしょ?」

 「何でそれを」

 「私はあなたの妻よ。それぐらいは知ってるわ」

 「ですが、イティシア様の自由を奪うわけには」 

 「今のままでもいいけど、あのままずっと森で暮らすわけにもいかないしね」

 護衛達は神殿に返すことになり、私はリベルタの家である公爵家に仲間入りを果たした。

 そんな私は公爵の妻となり、私の名前は皆に知られることになった。

 イティシア・センストビアの名を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ