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家政婦の見仲田さん

作者: N(えぬ)

 ある資産家の家で女性が死体で発見された。

 この家には姑にその息子夫婦、その息子夫婦の小学生の子供がいる。その中で息子の妻が死んだのだ。

 これは、状況から事件か事故か、警察はすぐに判断はつきかねた。

 警察は「最近、奥さんとの折り合いが悪かったようですが」と夫の健二に疑いの目を向けた。けれど、妻、良子が死んだのは昼過ぎ頃と推定されていた。この時間には姑が外出しており、小学生の息子は学校、容疑者の夫は仕事に出かけていたことになっている。その上、家には妻が一人でいたわけでは無く、見仲田という四十を少し過ぎた家政婦が家にいたのだ。家政婦の見仲田は警察の質問に言う。

「私は午後から、昼食の後片付けや夕食の準備に掛かりきりで……その間は、若奥様は自室に籠もっておられて……音楽が鳴っていたので、それを聴きながら横になってでもおいでだと思っていました」

 刑事は見仲田の話を無表情に聞きながら、

「良子さんは、いつもそんな風にして過ごしておられたのですか?」

「ええ。その日は聞きませんでしたが、大概「少し休みます」といって自室にお入りになるんです。そういう時は、もう次にご自分から部屋を出てくるまでは、よほどの用がないかぎり、私は若奥様に声を掛けたりいたしませんので」

「なるほど。それで、その間ですが、何か物音とか声など、聞きませんでしたか」

「はい。なにも……」

 家政婦の見仲田さんは、刑事に申し訳なさそうに深く頷いて見せた。


「ボス。これはやはり自殺の線が濃厚なようですね。何も他殺を示す証拠がありません。もし他殺なら、いくら何でも家政婦が何も物音を聞いていないなんてことはないでしょうし」

「ふうむ……」

 ボスと呼ばれる大河原警部は、深くため息をついた。彼の嗅覚では、これは他殺だということなのかもしれない。


 大河原警部は、自殺で決着が濃厚になった良子の死について、「もう少し」と強引に捜査した。良子の携帯電話の通話記録を探らせた。結果は、

「ボス。死んだ当日の午前中に岩崎翔太という男と通話しているのが確認されました。実はこの男、良子の浮気相手だったようです。で、最近そのことが夫にバレて、別れるように迫られていたとか。相手の男も、だんなさんから「妻と別れなければ訴える」と警告されていたようですよ。で、当日のことですが、午前中に良子さんから電話して、キッパリと別れようと話したそうです……相当揉めたようですが」

「そうか……そうすると」

「ええ。むしろこれで良子の自殺の動機を固めてしまったようですね」

「ううん。仕方無しか……今回は俺の勘も、ハズレたかな」

 大河原は不平そうに、とぼけたような笑いを部下に示した。



 数日経って、家政婦の見仲田さんは若奥様良子の葬儀も手伝い、帰り際に少しの時間を見つけ、夫健二に近づいた。健二は見仲田を見てビクンとした。

「忙しい日々で、やっとこうして時間が取れました旦那様」

「キミ、何も見なかったって……言ったんだね見仲田さん」

「はい。何も見ませんでしたわ」

「それは……信用していいものなのかな」

「私、どこのお宅でもお勤めさせて頂いたら、ひみつは守ります」

「そ、そうか」

「ごあんしん、、ください」

 見仲田さんは健二の耳元に囁くように言った。


 健二は良子の浮気を許せなかった。当日、こっそりと健二は家に戻り、裏口から家に入った。家政婦の姿も見えない。今だと決心し、健二は良子を殺害し自殺を偽装した。そして、いるはずだった見仲田さんはというと、この日、朝早くに良子から電話を受けていた。

「朝から出勤したことにしていいから、今日は午後遅くに来てちょうだい」そう良子から言われたのだ。

 午前に妻良子は浮気相手に電話して別れ話をするつもりだったのだ。声を荒らげるようなことになりそうなその電話を聞かれたくなかったのだろう。見仲田を遠ざけて置いたのだ。

 だが少し誤算があった、午後になり、見仲田さんは言われたより少し早く出勤した。見仲田さんは陰から見ていたのだ。

「私を殺します?」

 健二は、ギョッとした目を彼女に向けたが何も言わなかった。

「でも、私を殺すとあの家では二人目。私が「何も見なかった」という証言が、旦那様の潔白を証明しているのですから、その私を殺したら、一挙に疑惑は旦那様の方へ……」

「ぁ……ぁぁ」

 健二はうつむき呻いた。

「自信を持ってください。私はなにも見なかったんですから」



 見仲田さんは、その後も仕事を続けながら、時折、休暇を取って温泉を巡ったりしているらしい。

「はぁ。いい湯加減……これくらいなら、安いモンよねぇ?」

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