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ロスト・ワンズ-異世界の王と人類最強の守護者-  作者: 皐月零御
1章:脅威の再来
7/7

7話

 古都美が施設の外に出ると警察救急関係、報道陣、野次馬でごった返していた。正面玄関から出たことを後悔する。報道が古都美に気づいてカメラ向け始めた。


「嬢ちゃん!無事だったか!……って、びしょ濡れじゃねえか!」


 警察と話をしていた金髪の男が駈け寄って来る。アメリカの守護者、ウォーカーだ。


「まあいい。聞いたぞ!どーしてテロリストを倒しに行っちゃうんだよ」

「いいじゃねえか別に」

「よくねえ!いいか、ここはUSAだ!嬢ちゃんに何かあったらどうせ俺のせいになるんだぜ!」


 ウォーカーは古都美に食い気味で迫っていく。


「悪かった、悪かったからちょっと離れろ!……それよりも大田原を見なかったか?」

「ああ、嬢ちゃんとこの秘書だろ?特殊部隊が突入した時に倒れている秘書ちゃんを見つけて保護した。特に怪我はなかったようだが、病院に搬送しておいた」

「そうだったのか。……ありがとう助かるよ。それで、今はどんな状況だ?」

「ここだと目立つ。車の中で話そう」


 ウォーカーは大型トラックの荷台に古都美を案内する。中にはモニターやらパソコンやらが何台も設置さていた。数人が忙しそうにキーボードをカタカタと叩き、指示を出している。移動型の小さな指令室と言った感じだろうか。


 古都美はウォーカーから「とりあえず頭だけでも拭いとけ」と受け取ったタオルで頭に被せた。


「ここ一帯のジャミングは10分前に解除された。それで、ようやくここも機能したわけだ。その頃には軍の魔法部隊が施設に突入。現在、テロリスト計10名は死亡。後は残党探し。生きている奴を捕まえて尋問したいとこだけど、どうだろうな」

「原石の保管場所へ向かう地下エレベーターがあるだろ。その付近で3人を紐で縛ってあるからそいつ等を使え」

「ああ、助かるな――ちょっと待て!それってつまり、テロリストはメレジウムの原石を狙ってたってことかよ!?」


 ウォーカーの頭の回転が速くて助かる。


「あそこの場所を知ってるのは、ごく一部だぞ」

「そう。――つまり、裏切者がいる」

「……この話はここだけにしよう。俺と信頼できる部下数人で調査を進める」


 ウォーカーはスマートフォン型のリーンを取り出すと、電話で誰かに指示を始めた。


「時間はかかるが構わないか?」

「ああ、もちろん。……それと、これも他言無用で頼みたいんだが――」

「何だ?」

「……霧降キリフリ水霧ミズキをテロリストとして世界に公表して欲しい」


 ウォーカーは口をパクパクとさせて何かを言おうとしたが、一旦閉じて額に手を当て天を仰いだ。


「証拠はあるのか?」

「無い」

「それなら無理だ」

「防犯カメラぐらいあるだろ」

「とっくに壊されてる」

「くそッ!」


 古都美は太ももを叩いた。


「落ち着けって。……後始末は俺たちがやる。今日のところは秘書のとこにでも行ってやっれ。送ってやるから」

「……わかった」


 渋々、と言ったように頬を膨らませる表情が、ウォーカーには駄々を捏ねた子供のように見えた。


――ほんとうに《《見た目だけ》》なんだよなぁ。


『んふっ、いいじゃない。ウォーくんはあんな子がタイプなんでしょ』


 頭の中にそんな声が響く。


「うっせえ!」

 ウォーカーは大声で言い返してやった。

「……気でも狂ったか、ウォーカー?」

 古都美がジト目でウォーカーを見つめる。なぜ声を出したのか見当はついているくせに、そんなことを言う。だから魔女だなんて言われるんだ。

「な、なんでもねぇ。行くぞ」


     *


 大田原は全身に電流が流れたかのような痺れで目を覚ました。体を起こそうとすると、頭痛が襲う。


「――っ、ここは……?」


 すぐにここが病院だということは分かった。記憶を辿っていくと、UBNがテロリストに襲撃されたこと。その後、テロリストの1人を無力化して古都美と別れたこともハッキリ覚えている。しかし、古都美と別れた後に何が起こったのかは記憶に無かった。思いだそうにも、その時の記憶に霧がかかり、すっきりせずに気分が悪くなる。


「目が覚めたか」


 視界は霞んでいるが見慣れた童顔と、聞きなれた声で誰なのかはすぐに分かった。


「が、がく、えんちょう……?」

「そうだ、学園長だよ。まったく、心配させやがって」

「申し訳ございません」

「べつに謝んな。……それよりも、意識を失う前後の記憶はあるのか?」


 その問いに再び記憶を探っていくのだが、やはり霧に包まれたようにハッキリ思いだせない。


「すみません、あまり覚えていなくて……」

「いやいいんだ」

「学園長は、私がどのように意識を失ったのかご存知でないのですか?」

「……私も分からない。エレベーターの方から戻って来た時にはすでに倒れていた。一体、何があったんだろうな」


 古都美は頭を掻きながら言った。


――嘘なんですね。


 大田原は古都美が嘘を言ったことに気づいた。古都美は嘘を吐く時に頭を掻く癖がある。それは2人が出会った頃からずっと変わっていない。


 古都美はきっと何かを隠している。それが何かは今の私には分からない。


 ただ、古都美に嘘を吐かれたという事実が、大田原の心に影を落とした。

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