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新聞部のそれほどありえなくもない日常

作者: 平沼小国

「今度はこの人か・・・」


部長から頼まれた仕事なので、断ることはできない。


断ったら何を言われるか・・・


この高校に入って新聞部に入ったのは良いが、


よりによってあんな鬼部長の下で働くことになるとは・・・


こんなに本気でやるつもりではなかった。


ただ、運動部は問題にするまでもなく却下、


そのほかの文化部も自分に合う気がせず、


一つ、自分の好きな人間観察を生かせるものはないかと、


人にインタビューする機会もあろう、ということで新聞部に入部。


だが、最近どうも苦手なタイプに当たることが多い。


「陸上部 部長か・・・」


この学校は運動部に力を入れており、陸上部にもインターハイに出場する生徒がいる。


今度インタビューすることになった部長も、100Mで出場、見事一位。


そんな彼女にインタビューするのが自分でいいのか、甚だ疑問である。


自分よりも、彼――新聞部1のイケメン部員、横芝のことだが、


彼に任せとけばいいんじゃないか・・・?


向き不向きというものが・・・


それに陸上部・・・か・・・



「・・・・・佐倉! 佐倉! ・・・ 佐倉翔!」


「・・・あ、・・? はい!先生。」


「ハイじゃなくて、そこ、読みなさい。」


「あ、えーと? 何ページですか?」


「まったく、また聞いていなかったのか?215ページだ!」


「あ、えーと、はい。  『そもそも言語というものは・・・』」



・・・そう、自分は陸上部にある種のコンプレックスを感じている。


二年三組 佐倉翔。


「翔」と書いて「かける」。 自分で笑ってしまう。


いつも自己紹介をするたび、名前と外見の差を自分でも感じていた。


どう見ても運動系でない自分が「かける」なんて、なかなかの皮肉である。


太っているわけでもないが、体育は憂鬱である。


走れない、(100mやら3000mやら)


跳べない、(跳び箱やら走り幅跳びやら)


回れない。(ホームやら鉄棒やらマットやら)


三拍子そろってしまっている。


そんなこんなを考えているうちに、昼休み。インタビューの時間である。


新聞部の部室でやるのだが、なぜかやたらと広い。


荷物が多く、正確な広さは分かりづらいが、美術室より広いらしい。美術部に申し訳なくなる。


部長が何か学校側に手をまわしているという噂さえあるから恐ろしい。


・・・と、こんなこと考えている場合ではない。準備をしなくては。



「それでは、インタビュー始めさせてもらいますね。」


「はい!」インタビュー相手の長浦さんが元気よく答える。


「じゃあ、まず、インターハイ1位おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


「最初にゴールを駆け抜ける気分というのは、どんな感じなんですか?」


「そうですね、ありきたりな言い方かもしれませんが、


言い表しようのないものなんです。やっぱり。


最初は何が起こったのか分からないって感じなんですが、


後からだんだん嬉しさが沸き上がってきて、自分はやりきったんだ!って気持ちになれます。」


「そうですか。もちろん、並並ならぬ努力があったものと思いますが、


普段の練習ではどんなことをしているのですか?」


「やっぱり基本が大切です。本当に。


トレーニングは、練習のない日も含めて欠かさないことが大事だって、本当に思います。」


「どんな方でも基本を大事にされる方は、やはり良い結果を残すものですからね。


部長ということで、普段の部活の雰囲気についても伺いたいと思います。


部員の雰囲気はどんなものなんですか?」


「はい、とっても和気あいあいとしたふいんきです。


もちろん、練習のときには練習、と、けじめをつけて、


閉門時刻ぎりぎりまで練習がありますが、その後は、みんな仲良く一緒に帰ります。」


「コーチの方など、指導はどなたから?」


「学校の先生では、国語の榎戸先生が顧問の先生です。


外部から、倉橋先生という、陸上の専門の先生にコーチをしていただいています。」


「なるほど。」


その後もいくつか質問をしながら、なんとかインタビューをこなすことができた。


「それでは、長浦さん、ありがとうございました。」


「ありがとうございました。記事、楽しみにしてます!」


・・・ふう、終わった。


この時、後輩であろうが知り合いであろうが、敬語で接するのは当たり前、


なかなか堅苦しくなって大変である。


それに、インタビューを受ける側を緊張させないのは至難の業、であるが、大切なことでもある。


今回も、「雰囲気」を、「ふいんき」と言ってしまっていた。


緊張させてしまっていただろうか。


あと、その場その場で考えて話すのは、非常に大変である。


文章が少し分かりづらくなるのは仕方ないことだが、


それをインタビュアーが気にしないことが大切である。


・・・というのが、自分の「インタビュー学」なのである。


ところで、彼女は活発なのはもちろん分かる。


きっとクラスでも人気者なのだろう。


さらに、勉強もできるに違いない。敬語もきちんとしていたし。


・・・人間観察が好きとは言ったが、公式なインタビューの場では、相手のことなどあまり分からない。


素が出るのはもっと別のところである。


長浦明美、彼女は欠点のない優等生のようだが、


今までいろんな人を見て、外見と性格のギャップに驚いたことも多々ある。


彼女のこともちょっと気になる。・・・が、


とりあえず、今日の内容をまとめなくては。


部長に何言われるか、分かったもんじゃない。


・・・あと、国語の課題を終わらせないと進級できなくなる。


それは冗談じゃない・・・


更級さらしな先生にまた怒られてしまう。今度はやり過ごすわけにはいかない。


そんなことを考えながら、部室を出た。

昔書いたものを改稿したものです。

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