魔眼発現
さて、それでだ…。
「今日ってこれからどうするんだ?」
「どうするって…もう夜も近いし、寝床を探すんじゃないの?」
「精霊って決まった寝床があるわけじゃないのか?」
「決まった寝床なんて作ってる精霊見たことないわ。基本的にみんな自由奔放だから」
そういうものなのか…。
そういえば精霊については文献も非常に少なかったな…。
精霊の特徴などは少し本に載っていたが、性格などまでは…。
ましてや精霊と契約なんて…
「何してるの?早く行くよ」
「あ、ああ」
考えるのを一旦やめて、エレノアについて行く。
その後、食糧を集めながら寝床を探すこと数十分、木の根の間にいいスペースがあるのをエレノアが見つけ、今日はそこで寝ることになった。
食事は手早く済ませ、今日はさっさと寝ようということになった。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そう言ってお互い、十分も経たないうちに深い眠りに沈んだ。
*—*—*—*—*
「……ん、んん…おはよう…って、どうしたのその右目!?なんかすごいことになってるけど…」
次の日、僕が起きるとエレノアが一言目にそう放った。
右目…?
右目のせいかはわからないが、感覚が昨日より研ぎ澄まされているような…。
「…今どうなってる…?」
「なんか…目の白いところが全部黒くなってて、黒いところは金色っぽくなってる」
「…そんなの聞いたことないな、何か心当たりは?」
「全くないよ…ここまで生きてきて初めて見た…」
視界が金色になるなんてこともなく、痛みなんかも全くない。
とりあえず顔を洗おうということで向かった湖の水面を覗き込むと、なるほど、水に移した目も一目でわかるレベルで色が変わっていた。
こんなのは今まで本で見たことも聞いたことも全くない。
「一体なんなんだこれは…」
『所有者の魔眼発現を確認、ステージ0からステージ1へ移行します…成功しました』
突然、頭の中に声が響いた。
「なっ、なんだ!?」
「え!?なに、どうしたの!?」
「あれ、エリーにはこの声聞こえてないのか」
「ん?なに?何か聞こえたの?」
「いや、なんか魔眼が発現とかステージ1とかわけのわからないことがいきなり聞こえて…」
魔眼…まあどう考えてもこの目のことだろう。
確かに、これが現れてから体の調子が全体的に良くなっている。
「魔眼、ね…。聞いたことないわ」
「一体何ができるものなのやら」
と思ったら、目の前に透明なウィンドウのようなものが現れた。
「うおっ!びっくりした〜…。」
そこにはこう書かれていた。
____________________
『魔眼(ステージ1)』
Lv: 1
所有者:クロード
スキル:完全再現、無詠唱、全方位視、身体強化
EX: 0 / 1000
____________________
「…ぱっと見その魔眼性能ぶっ壊れてるわね」
「…僕もそう思う…しかもステージ1って一体…」
完全再現というのがどういうものなのかは見当がつかないが、そのほかのスキルは言葉通りのものだとしたらとんでもないものだ。
特に[無詠唱]。
基本的に魔法は呪文や魔法陣を介して現象を起こすものだ。
詠唱省略というのもあるが、それではどんなに短くしようとしても魔法名の宣言までしか縮めることができない。
無詠唱というのはこれまでに存在しておらず、全ての魔法師の夢なのだ。
…まあ、その夢をあっさり叶えてしまったわけだが。
その後、スキルの詳細を確認し、完全再現のスキル内容がわかった。
・イメージをそのまま具現化する・
……………。
うん。
いや、言葉通りといえば言葉通りだけれども。
「…それってどんなことでもできるの?」
「うん、多分…」
「でも、何かしら欠点がない方が不自然よ。試しに何かしてみたら?」
確かに、魔力消費が非常に大きかったりなどといった欠点が一つはないとおかしい。
とりあえず、試しに最初にイメージした極級魔法を打ってみる。
この世界では、初級魔法から超越級魔法までが存在するが、そのうち極級魔法より上、極級、超極級、絶級、超越級の4つはロストマジックとして扱われている。
今回イメージしたのは、エレノアの属性にちなんで極級魔法【ボルテックススピア】。
上空に無数の雷の槍を出現させ、それを敵に降り注がせる、という強力なものだ。
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませて、[無詠唱]を使い魔法を発動する。
瞬間。
バチッ、と音がしたかと思うと、僕たちは目が見えないほどの閃光と、轟音に襲われた。
本当に目の前に雷が落ちたのかと思うくらいのとんでもないものだった。
光が収まって顔を上げると…そこは更地になっていた。
有に500m四方くらいはそうなっている。
またまた絶句。
しかも、魔力消費は少なく、もう回復しきりつつある。
「…あなた本当に人間?」
「人間だけど自分で自分がわからなくなってきたよ…」
突然現れた魔眼と、その万能すぎる能力に、2人して頭を抱えるのであった。
未だ精霊は空気の模様…。