episode 07 大いなる存在
調子がいいので暫くはgenusをUPしていきます。
ETERNALSAGAはもう少しお待ち下さい。
m(__)m
人は一体何の為に生きているのか…。
答えはいたってシンプルなのかもしれない。
短い人生の中で人は幸せに向かって生きているのだ。
では幸せとは?と聞かれた時、 恐らくすぐに
答えられる人はそう多くはないだろう。
何故なら人間とは決して満足を得られない生き物であるからだ…。
〜 大 い な る 存 在 〜
G r e a t e x i s t e n c e
−ラピュラリス−
「存在が…って…。
死んじゃうって事なんですか!?」
「死ぬ…とは少し違う。
あんたの言う【死】とは…
肉体の消滅の事だろ?」
「あ、 はい…たぶん…」
「そうではない。
肉体の死はいずれ再生される…。
マリスナディアは魂そのものが消えかかっているんだ。
存在そのものが無くなる」
「……そうなん…ですか…」
「神様…なのにぃ?」
「……何か勘違いしていないか…?
神を何だと思っている?」
「え、 神様って言えばぁ…。
全知全能ってよく聞きますけどー」
「人間を創ったとか」
「…人間を創造した事は確かだが全知全能ではない。
何故なら神もまた……創られた存在だからだ」
「神様も!?」
「…マリスナディアの存在が消えてしまうと
俺やあんた達人間にも影響が出る」
「…どうなるんですか」
「もう既にその予兆が始まっている。
あんた達地球で見ただろ…」
美紅はすぐに理解できた。
そう…
人間が醜い化け物と変形していた様を
ジェラスは言っていたのだ。
頭に沸き上がってくる数々の異形の者。
足や顔が膨れ上がった時に見た綵の姿。
マリスナディアという存在が消えると
人間はどうなってしまうのだろうか…。
「灰の影響かと思ってました…」
「あの灰は…マリスナディアの魂紛だ…」
「こん…ぷん?」
「…地球の言葉でわかりやすく言えば、
治療不可能なウィルスの様なものだ」
「あのぅジェラスさぁん…。
美紅はなんで平気なんですか?
あたしは変わっちゃったのに…」
「それ…あたしも知りたい…」
「それは…イーヴァが転生し、
あんたの魂に宿っているからだ」
「その…イーヴァって誰なんですか?」
「前にも言ったが…誰かではない」
「じゃあ…イーヴァってなんですか?」
「……無理だ」
「え?」
「霊力の事も理解できなかったあんたに
理解できるはずがない…」
「…………」
ジェラスの言葉を最後に黙り込んでしまう美紅そして綵。
『イーヴァは誰かではない』
ジェラスはそう言った。
ではイーヴァとは人間ではないという事なのだろうか…。
彼の言った通り今の美紅には
推測や憶測ですらまともに立てられないでいた。
「とりあえずそんなところだ…。
【時の縛り】が無いこの地にまで影響が出てくるかもしれん…
そうなるとマリスナディアの消滅は免れない
アーダを見つけ出して、 あんたが早く覚醒してくれる事を願う」
「は、 はぁ…」
そして、 扉は開かれた。
中に入るとそこはさっきまでいた神殿とは
明らかに違っていた。
この空間の周りはまるで宇宙を見ている様だった。
床の材質は確かにさっきまでいた神殿の材質。
しかし段々と闇に溶け途中から見えなくなっている。
壁は無く、 幾千の太陽と星が散らばっており
その点が幾つも重なって薄い霧を作り上げている。
神はここから宇宙や我々人間を見ているのか。
そう思わざるを得ない程、 壮大で神秘的な部屋だった。
ジェラスはある所で足を止めると床から1m程の
細長い金属的な何かに手をかざした。
上昇ているのか下降しているのかはわからないが
周りの宇宙から遠ざかって行く。
そして…止まった…。
「マリスナディア、 連れて来た…」
「は、 はじ…め」
「あ、 あ…あ、 あぁ…」
美紅と綵は言葉が出なかった。
彼女達の瞳の奥に映し出されたもの…それは
人間が絶対に想像できない姿をしていた存在だった。
目で見る…という概念ではない。
心で、 魂で感じる感覚だった。
宇宙の様に神秘的でありまた恐怖心もあったが
何よりも涙が止まらない。
悲しみや喜び、 いろんな感情が一気に
体全体で感じる。
これが【幸せ】というものなのか…。
2人はいつの間にかその場でひざまづいていた。
そうまるで、 全てを悟ったかの様に…。
「…地球では立花美紅と呼ばれている。
彼女がどうやらイーヴァのエテリアを宿した様だ」
ジェラスは会話を始めるが美紅達には
独り言を話しているかの様に映る。
美紅も綵も金縛りにあったかの様に
ひざまづいたまま動けないでいた。
何故か頭を上げる事もできない。
「……あぁ。 覚醒もしていない。
霊数も微量だ。 …あぁ、 そうだ」
ジェラスの会話の内容しか聞きとれないが
どうやら自分の事を話しているのかと理解する。
「あぁ彼女も…昇化させた。
……心配ない、 霊力は安定している。
………わかった、 本当にそれでいいんだな?」
気がつくと神殿の外にいた。
そう、 美紅と綵は余りにも大きな存在を前にした為に
途中で気を失っていたのだ。
ぼんやりと記憶の波に逆らうが何も思い出せない。
現実か夢なのかも区別がつかない。
そんな状態の美紅と綵にジェラスが声をかける。
「気がついたか…」
「…あ………ここ……は…」
「…神殿の前だ。 そのまま聞いてくれ…。
…マリスナディアはあんた達に浄化を頼みたいのだそうだ」
「じょう…」
「…ょう…か…」
「はぁ…。 いいかよく聞け。
あんた達の地球は今マリスナディアの
影響が強く出始めてきているんだ。
このままだと人間の存在そのものが危うくなる…。
だがデウスはまだ【器】を手に入れていないから
とりあえずは安心していい…」
「…………」
「……」
「…今からゲートを使って【ニヴルヘイム】へと向かう。
わかったか?」
「……はい…」
「…おいしっかりしてくれ。
はぁ…。 …じゃあ……ついて来い…」
神殿を離れ庭園へと戻った3人はゲートを使って
再び最初の空間へと戻って来た。
マリスナディアの空間から解放されると
少しずつ正気を取り戻す美紅と綵。
「あの…ジェラスさん…」
「……何だ」
「…浄化って…何するんですか?」
「…それは実際にニヴルヘイムへ行くとわかるから」
「…あたし…も?」
「…そうだ。 これはあんた達2人にしかできん」
話しながらもジェラスはニヴルヘイムへと
繋ぐゲートの準備を進める。
「【時の縛り】がある世界のあんた達だから
できる事なんだ。 俺は一緒には行ってやる事はできんが…」
「じ、 ジェラスさん一緒に行かないんですか!?」
「【行け】ないんだ」
「どど…どどうしよ〜美紅」
「心配しなくていい…。
【ハート】という者が引き継ぐ事になってるから」
そして再びあの床を形成したジェラス。
美紅と綵が一緒にワープできる様に2つ作っていた。
「行き先は既にニヴルヘイムへと合わせてある…
やり方は同じだから」
「……わかりました」
「向こうに着いたら泉に向かえ。
巨大な大木のそばにあるからそこを目印にして行くんだ」
「はい…」
2人は透明な床に乗り霊力を手に集中させる。
「ジェラスさん…その…。
いろいろとありがとうございました」
「あぁ。 じゃあな」
「あ、 あ、 ああの…」
「……なんだ」
「え、 ええ、 えとぉ…。
ま、 まままたぁ…会えますよねぇ?」
「…何故だ?」
「え、 い、 いやぁ…そ、 そその…」
「はぁ…ジェラスさん、 それ口癖なんですね……」
「あ、 や、 ややっぱり、 ななんでもない…ですぅ。
あ、 あははははは…」
「…?」
2人は霊力を放ち、 光と共に消えた…。