episode 04 ラピュラリス
「…着いたぞ」
空間から抜けるとそこは別世界だった…。
〜 ラ ピ ュ ラ リ ス 〜
L a p u r e l i s
美紅と綵は我が目を疑った。
何故ならそこには何もなかったからだ。
【無】という言葉がこれ程似合う場所が
他にあっただろうか…。
どこを見ても暗き闇が広がる世界だった。
美紅も綵も口から言葉が出ない。
と言うよりも思い付かないのだ。
明かりを消すそれとは全く意味が違う。
景色も音も何も存在しない世界
ラピュラリス…。
「こ…ここがラピュラリスですか?」
「…そうだ」
「あ、 あのぉ〜。 な、 なにもみ、
えないです…けどぉ……」
「何故だ…?」
「な、 なぜ…って…」
「く、 暗いからに決まってるじゃないですかぁ!!
や、 やだなぁもぉ…あははは…」
「…何故暗い?」
「え?」
「何故暗いかと聞いてるんだ」
「ちょっとジェラスさん!!
いい加減にしてください!!!」
「じ、 じゃあジェラスさんわぁ
一体何が見えてるんですかぁ?」
「…草原だ」
「草原?」
ジェラスは草原が見えているらしい。
草原どころかお互いの顔も見えない
この場所の何処に草原などがあるのだろうか…。
だが次の瞬間…。
「あ!!」
「うわぁ!!」
2人は声を揃えて驚いた。
なんと今まで無だったこの場所がいきなり
緑生い茂る草原へと変わったのである。
「なんで…さっきまで…」
「そ、 草原が見える…」
するとジェラスは少し言いにくそうに口を動かした。
「す、 すまん…言い忘れた」
「え? 言い忘れたって?」
美紅が即座に切り返す。
「当たり前の事で考えもしなかった…。
あんた達【時】に縛られているんだったな」
「え、 えとぉ、 言ってる意味がぁ…あはは…」
「俺は【時】の呪縛から解放された世界の人間だから
気づかなかったんだ…すまん」
「は、 はぁ…。 それで何を言い忘れたんですか?」
「…【時】の無い世界はイメージで
成り立っている世界なんだ。
イメージしなければ何も見えない」
「イメージ…ですかぁ…」
「さっきあんた達が見た草原は俺のイメージ。
草原と言うキーワードであんた達が
想像したから見えたんだ」
「そう言えば聞いた瞬間に…」
「だから2人とも俺が見える草原とは
違う草原が見えているはずだ」
「ジェラスさんじゃあイメージすれば…
例えば砂漠とかになっ…」
そう美紅が話し終える前に辺りは砂漠となっていた。
「な、 なっちゃうんですね…」
「だが気をつけろ、 イメージは霊力の源。
想像は霊力を消費するんだ」
「霊力を…」
「あまり景色で遊んでいると
そんな少ない霊力しか持っていない
あんた達ならあっという間に疲労するから」
「みぃ〜く〜」
どうやら遊びすぎた者がいたようだ。
「あ、 綵〜ち、 ちょっと大丈夫!?」
「…そう、 そうなるから気をつけるんだ」
「は、 はい…」
「はぁい…。 〜あぁ目が回るぅ…」
さらにジェラスは付け加えた。
「あと、 【時】が無い世界は文字通り時間が存在しない。
寿命が100年未満のあんた達
【時の住人】は年を取らない。
俺には実感はないがあんた達なら理解できるはずだ」
「えぇ!? じゃあ…」
「老いて死ぬ事は永遠にない」
「…み、 美紅〜!! やったじゃ〜ん☆
あたし達21才を永遠に保ち続けられるんだぁ♪♪」
「う、 うん…よかったね。 綵」
「えー嬉しくないのぉ?」
「う〜ん…なんか…怖くない?」
「ちなみに言っておくが…。
【時の世界】、 つまり地球に戻ると時間は
存在するからまた縛りを受けるんだからな。
一応言っておく」
「はい…。 あの、 それでこれからどうするんですか?」
「とりあえず、 【マリスナディア】に会うんだが…。
その前にまずあんた達が霊力を自分の意思で
コントロールできなければ話にもならん…」
「霊力をコントロール…」
「だからまずはここで霊力のコントロールを
身につけてもらう」
「それでどうやるんですか?」
「はぁ…。 まぁ待て…。
さっきみたいに勝手にイメージされて
倒れられては効率が悪い」
「す、 すいませぇ〜ん!!」
「だからイメージを統一させてもらう」
話が終わる直後に景色が変わった。
それは2人が大変馴染みのある景色だった。
「あんた達の記憶を探ったところ…。
訓練する場所はどうやらこれが相応しい様だな…」
「相応しいってか…」
「ふ、 ふつうに…学校…なんだけどぉ…」
「…来い」
2人の前にあるのはまさに2人が通っていた
学校そのものだった。
見覚えのある校舎など当時の記憶が甦ってくる。
門からグランドへと入り廊下を渡って教室へと向かう。
「でも…何で中学校?」
「あんた達の記憶の中で強い結び付きがあったからだ」
「綵ぁ中学校で、 なにかあったっけ?」
「さぁ…ぜんっぜん覚えてないからさぁ」
「陸斗と言う男が関係している様だな」
「りくと………あ!!」
「なになに〜美紅っち」
「駄目…い、 言わない…」
「な、 なにそれ…ちょっとどーゆー事なのよー!」
「だめだめ! 絶対言わない」
「ちょっと美紅ー! 親友だよね!?
隠し事なんて許さないんだからぁ!!」
「あんたに内緒で付き合ってたそうだ」
「な!?」
「みぃ〜く〜! それほんとなの〜!」
「…嘘も何もない。 記憶だからな」
「ちょっと!! ジェラスさんっ!!!」
「みぃ〜く〜!!!」
綵の冷たい流し目が美紅に突き刺さる。
「だ、 だってさぁ、 もう何年も前の話じゃん!!」
「ひどぉい…!! 親友だと思ってたのにぃ…」
「…中に入れ」
教室の中に入るとまたさらに驚く事があった。
机の中には教科書などがちゃんと入っていた。
通学用鞄や体操服、 ほうきや黒板消しなど
事細かに再現されていたのだ。
これはまさにタイムスリップした様だった。
「すごい…」
「じゃあ今から訓練を行う。
適当に座ってくれ」
「うぁ〜なつかしいなぁ」
「あたしぃ朝いつも寝てたなぁ…。
高橋にチョーク投げられてさぁ!」
「おい、 始めるから…」
「あ、 は、 はいぃ!! …すみません」
いよいよ霊力コントロールの訓練がはじまった…。