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episode 02 昇化

『イーヴァ』


美紅を確かにそう呼んだ。

自分の名前も苗字も言い当てたのに

イーヴァとはどういう事なのだろうか…。







  〜 昇 化 〜

 p r o m o t i o n




2012.9.27

pm6:42


まともに話せる相手に出会えた事で気力が少しずつ戻ってきた。

目を擦って涙を拭き終えると再び起き上がる。


 「あの…だ、 誰ですか?

 どうしてあたしの名前知ってるんです?」



男は腕を組んだまま黙り込んでしまった。

見るからに怪しい感じを漂わせるこの男。

明らかに日本人ではなかったが話す言語は日本語であった。



 「あんたを連れに来たんだ」


 「あたし?」


 「ここはもうじき、 魔物でいっぱいになる

 早く離れた方がいい…」


 「ま…もの?」



美紅の問いに男は腰から銃を取り出すと

数発、 近くの人間に撃ち込んだ。

突然の事と銃の鳴り響く音に見を縮めた。



 「こいつらの事だよ」


 「な、 なんで銃なんか持ってるんですか!?」


 「イーヴァ…いいから早く準備しろ」


 「もぅ…わけわかんないよー!!」


 「…………」



泣き叫ぶ美紅を見るとまた黙り込んだ男。

静かに銃をしまうと目を閉じて美紅が泣き止むのを待った。

銀色の長髪のスラッとした男。

彼は一体何者なのだろうか。



 「…わかりました。 行きますよ」


 「……ついて来い」



一言零すとどこかに向かって歩いて行く。

美紅は警戒しながら少し離れてついて行った。








2012.9.27

pm7:00


そう言えばと美紅は気づいた事があった。

この男も灰に触れても変化は見られなかった。

美紅と同じなんらかの【性質】を持っているらしい。

気になったら聞きたくなる性格の美紅は躊躇いもなく問う。



 「あのぅ…」


 「…今はジェラスと名乗っている」


 「は、 はぁ。 それでジェラスさんは何で灰に触れても…

 その…変化しないんですか?」


 「あんたの…加護の力だ」


 「あ…えっと…よくわかりません」


 「はぁ…いいから黙ってついて来るんだ」


 「あ……はい」



瓦礫の山を避けながらどんどん先へ進む

ジェラスの後についていく美紅。

彼は全くこちらを振り返る事はなくただひたすら歩く。

しかしどこへ向かっているのか検討もつかない。

崩壊したビルの瓦礫の上にポンッと身軽に飛び乗るジェラス。

地上から5メートル以上はあるそのビルに

まるで当たり前の様にやってみせたのだ。

もちろん美紅にそんな真似はできない。



 「(す、 すごー…)」


 「何してる、 早く来い」


 「無理って言うか…出来る訳ないじゃないですか」


 「何故だ…」


 「何故って…。 普通そんな距離飛べませんて!!」



するとまた戻って来ると美紅を肩に乗せまた身軽に飛ぶ。



 「ちょ…っと! 降…ろしてー!」


 「ほら…」



捨てる様にして美紅を地面に置いた。

ジェラスには気遣う気持ちがないのだろうか…。



 「い…たぁ〜い!! もぅ最低〜」


 「…こっちだ」


 「もぅ…!!!」



ジェラスはこの周辺が見渡せる場所を探していたらしい。

少し遅れて美紅もその場所へとやって来た。










2012.9.27

pm7:30


 「と、 と東京がめちゃめちゃ…」


 「見ろ、 始まる…」



すると周辺から地の底を這う様な呻き声と

風船を絞った様な音がそこら中から聞こえ出した。

気味の悪い耳を塞ぎたくなる嫌な声だ。



 「あの…これからどうなるんでしょうか」


 「イーヴァ、 あんたも【アレ】と戦う日がいずれ来る」


 「あ、 あた…あたし?

  む、 むむむりむりむり! 無理です!」


 「何故だ…?」


 「な、 なぜ…って、 そりゃあ怖いし…

 てか銃だって握った事もないのに」


 「心配はいらん。 戦闘なら俺が教える事になっている。

 あんたが早めに覚醒してくれればいいが…」


 「そんな心配なんてしてません!

 大体、 人を殺すなんてできません!!」


 「はぁ。 あんた本当にイーヴァなのか?」


 「だーかーらぁ! そのイーヴァって誰なんですか!?

 あたしの名前は立花美紅ってさっき貴方も」


 「イーヴァは誰かではない…。

 まさか転生が失敗したのか?」


 「は? て、 てんせい?」



ジェラスはまた黙り込んでしまった。



 「あの、 地球はどうなっちゃったんですか?

 綵は変な…化け物になっちゃうし…」


 「…………」


 「綵…ごめんね…あたし最低だよね…親友だったのに…

 いつもずっと一緒だったのにね…

 助けてあげられなくて…ごめ…ん…」



美紅は綵が目の前にいるかの様に話し始める。

綵とのこれまでの思い出が甦って来る。

不思議なものでいくら喧嘩をしても

思い出す部分は楽しい部分であった。

ジェラスは不思議そうに美紅の顔を見つめる。

何か言葉が今にも出てきそうな表情だ。



 「な…なんですか…」


 「その……綵とやらは大切な仲間なのか?」


 「な、 仲間…ってか親友…」


 「だったら助ければいい…今ならまだ間に合う」


 「ほんとですか!? でも助けるってどうやって…」


 「はぁ。 あんた…さっきの事と言い

 本当に何もかも忘れたんだな…。

 だから100サイクルは無理だって言ったんだ…」



聞き慣れない単位が出て来た。

100サイクル…。

考えるより先に口が前に出る美紅はもちろん

ジェラスに疑問をぶつける。



 「忘れたって…知らないですよ!!

 大体その100サイクルって何ですか?

 どこの国の単位ですか??

 聞いた事ないですよサイクルなんて」


 「もういい…。 じゃあ今回は俺がやるから」


 「…はぁそうですか」


 「連れてくるからここで待ってろ」


 「はい、 お願いします。

 えっと特徴は…」


 「もうわかってるから」


 「え?」



そう言うとまた身軽に飛び降り、 走って行ったジェラス。

驚く事に物凄いスピードで駆け抜けて行ったのである。

美紅の目では捉えきれない、 そうまるで消えたみたいだった。



 「あの人…絶対人間じゃない…」







2012.9.27

pm9:22


暫くすると綵を抱えたジェラスが

いきなり下から上がって来た。



 「美紅〜!!」


 「綵〜! ごめんね〜! ほんとごめん」



綵は既に元通りとなっていた。

ジェラスは一体どうやって彼女を治したのだろう。

しかし今は素直に再会を喜ばずにはいられなかった。



 「…綵とやら」


 「え、 あ、 あたしですかぁ?」


 「あんたも俺達と来るんだったら

 戦術を学んでもらう事になるが…」


 「え、 綵も!?」


 「見た所、 長年イーヴァと時を過ごした事で

 霊力が増した様だから少し叩き込めば

 霊術を使いこなせるようになるだろ」


 「は、 はぁ

 (ねぇ…何の話?)」


 「(さぁ意味不明…)」


 「では共に来ると言う事だな?」


 「あ…は、 はいぃ! お願いしまぁす」


 「少し待ってろ…」



するとジェラスはビルから飛び降りてどこかへ消えて行った。



 「ね、 どうやって治してもらったの?」


 「う〜ん、 それが気を失ってたみたいなんだぁあたし…」


 「そっか…」


 「てかさてかさてかさ、 

 あのジェラスって人ちょーかっこよくない??」


 「えー、 あんな無愛想なのがいいの〜?」


 「ばーか、 それがいいんじゃ〜ん☆」


 「でも変な人だよ? 

 あたしの事イーヴァとか何とかって…」


 「なにー? イーヴァって」


 「しらな〜い」


 「ねねねねぇ、 あの人彼女いるのかなぁ?

 何才なのかなぁ♪ ねぇ美紅ぅ」


 「知らないってあたしもついさっき初めて会ったんだから」


 「可能性ありそう? あたし」


 「なに…なんの可能性〜?」


 「あ! 聞いてなかったなぁ!!

 んもぅ…美紅はいつも中途にしか聞かないんだからぁ」


 「ご、 ごめ〜ん! いろいろあって疲れてるんだって…」


 「うん…疲れるよね…

 こんなのマジ映画でしか見た事なかったから…」



話が萎んできた所でジェラスがタイミングよく戻ってきた。

両手に黒いアタッシュケースが見えた。



 「待たせたな…」


 「あ、 ぜ、 全然大丈夫ですからぁ!」



ジェラスが一つ目のアタッシュケースを開けた。

中が気になって2人はジェラスの

背中越しからそっと中を覗き込んだ。



 「(なにあれ…)」


 「(…なんだろ)」



ジェラスは中からある金属を2つ取り出すと2人に渡した。



 「え、 あたしにもくれるんですかぁ!!

 ありがとうございますぅ♪♪

 大切にします〜☆」


 「…飲め」


 「……え、 えっ!?」



ジェラスから渡された物は銀色の

小さなイヤリングの様な物だった。

丸い玉にチェーンがついた感じの物体…

これを飲み込めと言う。



 「飲めって…なんなんですかこれ」


 「それが昇化を手伝ってくれる」


 「し、 消化を手伝うって…?」


 「いいから飲み込むんだ」



2人は顔を見合わせながらせーので飲み込む事にした。

チェーンの様な物を摘んで口の前まで持って来ると…。



 「美紅いい?」


 「うん…せ〜」


 「の〜」



口を開けて一気に飲み込んだ2人。

喉元を過ぎ食道を通るのが感覚で伝わって来る。


 「美紅…どう?」


 「ん〜別に……!? ……あ…か…かはっ」


 「み、 みく!? …か…あ…あつ…い…」



2人に異変が起きた。

胃の辺りが激しく痛む。

熱くそして激しい頭痛で声も出せない。

息が出来なくなりやがて2人はその場に倒れ込んだ…





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