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2/12

episode 01 死の灰

第一話です。

より深くよりシリアスを追求した結果

こんな感じとなりました。

genusは『起源』と言う意味で文字通り

エターナルの始まりの辺りを描いた物語です。

暫くはこちらも頑張って投稿いたしますので

是非見てやって下さい。

人間の歴史からすれば途方もない時だが

神にしてみれば一瞬の事なのかも知れない。


神は再び人間の前に姿を現そうとしていた。


それは滅びか救いか…。


 西暦2012年9月27日




人類史上最大の出来事となる…。









〜 死 の 灰 〜

 f a l l o u t





−TOKYO−

2012.9.26

pm8:30

ニュースでは様々な事件が流れていた。

殺人やテロ、 誘拐など犯罪の合間にある速報が入る。



−−突然ですが臨時ニュースをお伝えします。

 最近噂されている水星が地球に衝突する可能性の件で

 国会は次の様に会見を開きました−−




 「ほ〜ら美紅、 明日面接なんでしょ?

 朝早いんだから早く寝なさい」


 「…お母さん、 地球に水星がぶつかるかも知れないんだって…」




立花 美紅たちばなみく

 21才 現在就職活動中




 「最近急に軌道を変えたって世界中で大騒ぎだからねー。

 しっかしあんたがニュースに釘付けなんてほんと珍しい」


 「し…黙っててぇ」


 「明日遅刻しない様に早く寝るんだよ?

 お母さんお風呂入るから」


 「いちいち言わなくていいって…」


 「この前【あんな事】があって

 お母さん、 ちゃんと行き先言ってねって

 泣きついてきたのはあんたでしょうが」



あんな事と言うのは先日、 美紅が見た夢についての事だった。



 「だってなんか、 意味深じゃない?

 世界が終わる夢なんてさ…」


 「まぁそんなニュースもやってる事だし、

 あんた影響うけたんだよ」


 「…そうだと思うけどさぁー」


 「大体お母さんはずっと家にいるんだから

 あんたが見た夢みたいにいきなりいなくなる事は

 ないんだから安心しなさい」


 「だからぁ、 いなくなるんじゃなくて

 消えちゃうんだって…!」


 「お母さん、 お風呂行ってきま〜す♪」


 「…んもぅ〜」





2012.9.26

pm10:59


明日の面接の用意を一通り終える美紅。

忘れやすい性格の美紅は一通り済ませても

念の為にもう一度確認する事にしている。

鞄からまた出して確認しながら入れていく。



 「うん、 よしオッケー!

 明日着て行く服も…完璧!

 目覚ましは…7時に設定してる!

 あ! 携帯充電しないと!!」



鞄から取り出すと携帯を充電する。

これは美紅の癖なのだろうか…。

携帯を触ると必ずと言っていい程

メール受信を開いてメールが来ていないか確認するのだ。

1件のメールが届いていた。



[件名]

Re:Re:Re:

[本文]

明日の面接頑張ってね♪

てか何時に終わんの?

終わったら電かメして〜☆



 「(綵っちからか…別に今返さなくていっか。

 明日終わってから連絡すれば…)」



美紅は携帯を机の上に置くと電気を消してベッドに潜り込んだ。

真っ暗で何も見えないが美紅は天井を見つめる。



 「……今日は見ません様に」



そう心で言うと美紅は瞳を閉じ眠りに着いた。






2012.9.27

am3:18


突然目が覚めた美紅は起き上がるとトイレへと向かう。



 「(なんでこんな時間に目さめるかなーぁ

 しかもトイレしたくなるし…)」



トイレを済ませるとキッチンへ行き水分を取る。



 「ぶはぁ〜。

 あ…またしたくなるとやだからやめとこ…」


冷蔵庫のドアを閉めて自分の部屋へ戻る美紅なのだが

少し気になったのか自分の向かいの部屋の扉をそっと開ける。



 「(お母さん…ちゃんといるよね…?)」



美紅の母はすぅすぅと気持ち良く眠っている。

安心すると自室へ戻った。



 「え!? もうこんな時間?

 やっば〜早く寝ないと…!!」








2012.9.27

am7:45


予定より45分遅く起きた美紅は急いで仕度を整える。

こう言う焦っている時はいろんな所でボロがでるというもの。

美紅の場合、 鞄に携帯を入れ忘れてしまった。

玄関へと急ぎ素早く靴に足を通す。

するとトイレの中から美紅を呼ぶ声が聞こえ出した。



 「美紅ー! お母さん昨日言った事また

 中途半端にしか聞いてなかったでしょー。

 あんたも社会人になるんだからしっかりしないと駄目よ

 んとに…お父さんが天国で泣いてるわ」


 「もうお母さん! 話すんだったら

 ちゃんとトイレから出てからにしてよね!

 …じゃあ行って来るからねー?」


 「忘れ物ないー? あんたよく携帯充電したまんま忘れる事

 あるんだから今確認しなさい」


 「も〜そんな時間ないよ〜!!」



そう言いながら鞄をさっさと見る美紅。

やはり親はよく気づくものである。



 「あ! 携帯っ!!」



母が見ていないのを確認すると靴を履いたまま部屋へ急ぐ。



 「ほら言ったでしょー。 だから早く寝ないからそんな事になるんでしょうがー」



美紅は携帯を入れるとまた玄関へ戻る。

そして玄関の扉を勢いよく開けて駅へと急ぐ。


 「やぁば〜い! やばいよ〜!! 完全ちこくだぁ〜」








−駅のホーム−

2012.9.27

am8:17


家から駅まではそう遠くないが全力疾走した事により

このままでいけば間に合いそうだとホッと一息を入れる。

ホームで電車が来るのを待つ美紅は尽き果てたかの様に

その場に腰を落とす。



 「綵っちに昨日のメール返しとくか…」



メール文を打ち返信する。



 「はぁ…………。

 …あれぇ…? 遅いなぁ…」



ホームの時計を見ると40分が過ぎていた。

それに少し焦りと苛立ちを忍ばせながら

線路側を覗き電車が来ないか確認する。



 「もぅ〜なんで大切な日にそうなっちゃうかなぁ…!!」



時刻は午前9時になった。

するとホームにアナウンスが流れる。

それは事故か何かは言わなかったがまだ遅れるのだという。



 「ちょっと! もう信じらんない!!」



美紅は電話で事情があって遅れると告げた。

しかし何故これほどまで遅れるのだろうか…。

大きく溜め息を吐き零すとベンチに腰かけた。







−車内−

2012.9.27

am9:23


――ご乗車の皆様にお詫びを申し上げます

 本日…――



繰り返し流されるアナウンスに軽く文句を吐きつつ

やっと乗る事が出来たとどこかで安心するのだった。



 「(遅れたけど……面接…頑張るぞ〜)」



車内では噂のニュースで持ち切りだった。

普通の会話を楽しむカップルも隣の人の話を

耳で拾った途端、 話は擦り変わる。



 「昨日のニュース見た?」



思わず神経を耳に集中してしまう美紅。

聞こうとはしていないが2人の話が耳に流れてくる。



 「あぁ。 水星が地球に向かって来ているんだろ?

 噂じゃ近々肉眼でも見れるって事らしいじゃないか」


 「ほんと?」


 「しかもいきなり軌道変えたんだってさ」


 「なんか奇妙な話だねそれ…」


 「まるで誰かがグイッと曲げたみたいな感じだよな?」


 「まぁそんな事できるとしたら神様ぐらいだろね」


 「(神様がもしいるんなら…

 そんな事絶対止めてくれるはずだもんね…)」








−ファミレス−

2012.9.27

pm3:34


面接が終わると綵と待ち合わせの約束をしている美紅。

面接は午前中に終わり、 それから綵と行動を共にしていた。

ショッピングやカラオケなどを楽しんだ後

お腹が空いたということでファミレスに寄る。食事をしながら2人は話題の水星について話し始めた。



 「ねぇ美紅っち、 昨日のニュース見た?」


 「うん。 なんかさーやばくない?」


 「てかさ、 水星ってぶつかるとやばいの?」


 「やばいんじゃないの?

 世界で話題になるぐらいなんだからさ」


 「明日もし地球なくなるんだったらなにしよっかなぁ…」


 「海外旅行ちょー行くとか?」


 「いいねいいね♪ ナンパされて一夜だけの関係を…

 あたし外人と付き合ってみたいな〜☆」


 「綵っちは面食いだからね。

 でもやっぱ家にいるかもあたし」


 「えーそれじゃつまんないじゃ〜ん。

 あたしスキューバーもしてみたーい♪

 インストラクターの人もちょーイケメンでさぁ☆」


 「綵っち…男の事ばっかだよね〜」


 「うるさぁいっ、 誰かさんみたいに彼氏いないのあたしは〜」


 「……別れたよ」


 「…え? そうなの!? いつー!!?」


 「もう1ヵ月なるかな…」


 「……なんか……ごめん」


 「ん、 別に気にしてないし…」


 「気にしてるじゃぁん! ほんとごめん。

 ね? ごめんってばぁ」


 「はいはい。 ゆるしますぅー」



そんな他愛もない会話が続く中、 美紅はふと外を眺めた。

まだ10月にもなっていないというのに

突然雪が降りだしたのだ。

気温が低いせいもあってか気づかなかったが

よく考えればおかしかった。



 「綵っち…雪降ってる…」


 「えぇ? まだ9月だよ?」


 「見てよ! ほら〜」



と2人が窓ガラスに顔を近づけた時だった。

いきなり今まで経験した事もない大きな爆発音と

地震が美紅達を襲った。

すぐテーブルに身を潜める2人。

人が悲鳴を上げる音、 食器類が割れる音や

建物が次々と崩壊するその轟音が一気に耳に流し込まれ

あまりの恐怖と不安に胸がちぎれそうに痛む。

そして泣きながら綵と抱き合い声を掛け合う2人。

地震の揺れは一時的なものだった。



 「美紅っち…大丈夫?」


 「う、 うん。 テーブルに隠れてよかったね…」



美紅達がいる店は崩壊していたが

幸いにも2人は無事だった。

しかしいろんなものがテーブルの上に重なり

2人は身動きが取れない状況だった。

気持ちが落ち着いて来た所にはっと

美紅は母の事を思い出した。



 「そうだ…お母さん!! 綵っち!

 そこから手を伸ばしてあたしの鞄とれない?」


 「待って。 ちょっとやってみる」


 「綵っち…これってさ…地震じゃないよね…」


 「例の水星〜?」


 「じゃないのかなぁ…」


 「でも、 もし水星がぶつかってきたんだったら…

 あったあった…はい!

 とりあえずよかったじゃん」


 「なんでよかったんだよ〜」


 「だってぶつかっても地球はなくならなかったじゃん?

 もう心配ないっしょ☆」


 「あー、 そっかぁ」



電話帳を開いて自宅に電話する美紅。

しかし繋がらない。 

恐らく皆同じ事を考えて一斉に電話をかけているので

かからないのだろうか…。

とりあえずこの場所から早く出たいと美紅は

慎重にと瓦礫と瓦礫の隙間から顔を出した。



 「美紅っち、 どんな感じ?」


 「…………」



言葉が出て来なかった。

美紅が見た光景は日常生活では決して有り得ない光景。

映画のワンシーンに自分がいるという程度しか理解が出来ない。

本当に今見ている景色が現実とわかったのは

倒れているいくつもの死体や重傷の人達。

右腕が瓦礫に挟まりちぎれてしまった男性。

大火傷を負って顔が水膨れの様に腫れ上がった女性。

それを目の当たりにすると心臓が速く脈打ち

手足から震えが止まらなくなる。

こんな悪夢の様な日がまさか現実になろうとは

微塵も感じていなかった美紅。


涙が止まらなかった。









2012.9.27

pm5:02




救助隊が現れ美紅達は救助された。

どこも怪我はない2人だがとりあえずという事で

車に乗る。

思わず現状が知りたかった美紅は救助の人に

話しかける。



 「…水星が衝突したんですか?」


 「あれは…水星じゃなかったんだよ」


 「え?」



水星じゃない…。

とするならば一体何なのだろうか…。

続けて質問をする。



 「空を見ればわかると思うけど…」


 「空…?」



窓から空を眺めて見ると雪がハラハラと舞ってるのが見えた。

しかし曇り空で暗い為よくわからなかった。



 「でもなんか変ですよね…」


 「地球はもうおしまいだな…」










2012.9.27

pm5:35


車が急に止まった。

美紅と話してた男が気になって呼びかける。



 「おーい、 何で急に止まったんだよ」



しかし返事はない…。



 「どうかしたんですか?」


 「ちょっと前見てくるから」


 「あ……はい」 



男はドアを開けて外から運転席へ向かった。

救助されてから何故かずっと黙ってる綵。

気になって話しかけてみる事にした。



 「この先どうなっちゃうんだろうね…あたしたち」


 「………美紅」


 「ん、 なに?」


 「み、 美紅……これ…」


 「うん?」



綵の様子が何故かおかしかった。

どこを指差す訳でも場所を言う訳でも無く

ただ『これ』と言う言葉を美紅に伝える。



 「これって? どれ?」


 「美紅……あたし達…友達だよね…。

 親友だよね?」


 「何よ急に……当たり前じゃん!!

 あたし達幼なじみでしょ☆」


 「だったら…だったらさぁ…美紅…」


 「早くいいなって」


 「美紅…あ、 あたしの足元…見て…」



足元に何があるのか?

それに綵の怯え方は普通じゃない。

足元を見るぐらい見てやるかと

身を屈め綵の膝を持って足元を覗いて見た。




 「ん…? なにが? 別に何も無いじゃん






 ねぇ綵っち、 なに……







  き、 き、 き、 き…

 






 きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



綵の顔面が急に異常なまでに腫れ上がっていた。

よく見れば片足だけ指先から

ふくらはぎにかけて膨れ上がっている。

ゼリーのようにプニョプニョした質感が

容易に想像できる程

綵の足や顔が変形している。

綵は泣きながら美紅に訴えかける。



 「美紅……美紅あたし…

 どうなっちゃったの…?」


 「あ…あ、 あ…あ、 ああ…」



言葉にしたくても力が出なかった。

普段気づく事さえもない声を発する筋肉が

恐怖で麻痺しているみたいだった。

美紅は少しずつ車のドアへと手を伸ばす。



 「…みくぅ…あた…し…たちし…

 ゆう……言……じゃ…ん…」


 「あ、 あやぁ…ご、 ごめぇん!!!!!」



勢いよくドアを開け外へ飛び出した美紅は

さっきの救助隊の人を見つけ、 近寄って行った。

不気味に変化した事を伝える為に…。


しかし本心は一秒でも早くここから逃げ出したい気持ちで

いっぱいになっている美紅。

男の背中を叩いて服を引っ張ると…今出せる最大限の力を

振り絞って話しかけた。



 「あ…ややが……あや…が」



美紅が男を振り返らせると

男は身動き一つ取ること無く地面に倒れた。

綵と同じくこの男も所々が膨張しているのだった。



 「きゃぁぁ!! な、 なん…で…」



運転席に座っている運転手もベビーカーの赤ちゃんも

美紅以外の周辺の人間は皆綵と同じ様に変形していた。

そしてさらに気づいた事があった。


美紅は勘違いしていたのだ。


雪だと思って気にならなかったが今よく見ると違っていた。

それに触れても冷たくはない。

これは灰の様な物体だった。

恐らくこの灰が人間に変異をもたらすに

違いないと思った美紅。

だったら疑問が残る…。

自分は触れているのに何の変化もないのは

何故なのだろうか…。






2012.9.27

pm5:59



美紅は宛ても無く走る。

周りは不気味な姿をした人間でいっぱいだった。

どこに行ってもどこに隠れても化け物だらけ。

精も根も尽き果てた美紅は次第に足が止まる。



 「おねがい…夢なら覚めて…」



泣きながら力尽きた様に倒れ込んだ美紅は涙を流しながら

目の前のボロボロの人形に手を伸ばす。

灰がひらりひらりと落ちて来る。

そして辺りを静かに冷たい風が舞う。

横に倒れたまま起き上がる気力も失った美紅。

灰を払って人形を胸に抱く。

唯一まともに見えるのはこの人形だけ。



 「死にたい…もう…いや…」



頬を伝う絶望の涙。


こうなるまでに起こった出来事が嘘の様に幸せを感じる。

美紅の身体が灰で埋まっていく。

しかし振り払う事は一切しない。

瞼がゆっくり閉じていこうとする中。

背中から音がした。



反射的に振り向くが動作はゆったりとしていた。



 「綺麗…真っ白」



美紅の瞳に映ったものは…



 「立花…美紅だな…」


 「…なん…で? ……あたしのなま…え」


 「あんたを探してた…








    イーヴァ……」

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