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episode 10 帰還

長いこと放置してたのでUPします。


『慣れ』

これは良い意味でも悪い意味でも人間の特徴の1つである。

どれだけ高価なダイヤモンドであっても

どれだけ容姿端麗であっても

最新技術が次々開発されて暮らしが豊かになっても

常にその眩しい光を見ていると慣れてしまい

眩しさを感じなくなる。

これは何故なのだろうか…。

人間は常に満たされない『欲』でできた生物。

今よりも明日、 明日よりも明後日という感じに

『完全』なるものを目指し、 向かっている。

だが離れてしまえば近づけたくなり、

近づくとまた離したくなる。

そうやって人間はまた同じ所へ返ってくる。

流行のファッションが良い例えだ。

人間は『完全』なるものを知らない…。

故に人間は完全になる事ができない。


『慣れ』

という不安定要素がある限りこの無限地獄は続くのだ…。













−ラピュラリス−

氷界ニヴルヘイム



いよいよ地球へ帰る事になった。

時が流れていないというのに

果てしなく時が流れた感じがしてならない美紅と綵。

【時】が存在しない世界…それは、

時計の無い部屋の様なもの…なのかもしれない。


 「さぁそれじゃあいよいよ地球に行くんだけど」


 「美紅〜やったねー♪♪」


 「うん♪ 綵」


 「まだまだ説明しなくちゃいけない事が

 いっぱいあるけど君達を地球に送ってから

 一つずつ教えるから☆

 じゃあ準備はいい?」


 「はい!」 「はぁいっ!」


 「頑張ってね〜!!」



美紅と綵は光に包まれフッと消えた。














次に2人が目にしたのは紛れも無く地球だった。

辺りはまだ真夜中、 風で木が揺れる音が

聞こえる程静まり返っている。

見渡すとブランコや滑り台などがあり

どうやら小さな公園の中にいるようだ。

しかしここが何処なのか…。

要約地球へと帰れた2人だがお互い首を傾げる。






 〜 帰 還 〜

T h e r e t u r n







 「綵…ここどこ?」


 「どこだろ…」



とりあえず公園を出て周りを歩いてみる事にした。

コンクリートの道路に電柱に電話ボックス

そしてしばらく行くと大きな道路が見える。

久しぶりに見る景色にはしゃぐ綵。

しかし美紅は不思議に確かめる様に辺りを見る。



 「綵…、 なんかおかしくない?」


 「おかしいってなにが?」


 「だって建物が一つも壊れてないんだよ?

 あんな大っきな地震があったのに」


 「あ! そういえばそうだ…なんで?」


 「わかんない…。

 わかんないけどなんか変…だよね?

 ダストもいないし…」


 「てかさぁ、 ここどこぉ!?」



目的もなくただ歩く2人。

歩道橋を見つけ上から周りを確認する。



 「なんかさ、 夜なのに暑くない?」


 「暑い暑い…てか夏? って感じじゃない?」



と2人が会話しているといきなり体が

一瞬ブルっと振動した。

思わずびっくりして声を上げる美紅。

それを見て綵が尋ねると綵にも同じ現象が起きた。



 「……なに今の……ひゃっ!?

 なによこれぇ〜!!」


 「あ、あやも感じる〜!?」


 「!? いやぁ!! まただ〜」



理解不能な出来事に恐怖の余り2人が抱き合った

その時だった。

お互いそれぞれ相手の腰を触ってみた。



 「ねぇ…まさか振動の正体って…」



綵が美紅のポケットに手を入れると…



 「なんだぁ携帯じゃぁぁん」



振動の正体はなんと携帯だったのだ。

こんなものに怯えていたのかと愚痴る綵。

しかし2人の携帯はまだ振動している。

見てみると着信中と出ていた。

どちらにかかってきているのも番号通知無し。

出るか出ないか迷った2人はお互いの顔を見ながら

恐る恐る電話のボタンを押した。



 「……もしもし」「…もしもし」


――あっ!! やっと繋がったぁ!!

 んもう早く出てよね〜!!

 無事に着いたかなー?――


 「ハートさんっ!?」「ハートさぁんっ!?」



2人は目を丸くしながら声を揃えた。

どちらも電話のスピーカーからハートの声が

聞こえている。



 「これ、 どうなってるんですか!?」


――これからはこうやって連絡するから☆

 で、 さっそくだけどまず…



 ごめんなさいぃぃ〜!!!!!!――



いきなり耳の鼓膜が破れるくらいの大声で謝る

ハートの声に同じタイミングで電話を離した。

耳がキーンと鳴る。

2人はまた同じタイミングで反対の耳に変える。



――あのね、 時間を操作するのって初めてでさ…

 ちょっと失敗しちゃったの…――



 「失敗? え、 どういう事ですか?」


――2012年に送るつもりがね…そのぅ…

 2010年…つまり2年前に送っちゃったの――


 「えぇ!?」


――でも心配しなくていいから☆

 今わかったんだけどそこにダストの反応があるの

 ついでに浄化してきてくれるかなぁ?――


 「ダストが? …何もいませんけど?」


――近くにいるって意味じゃなくて

 その時代にいるって事。

 ここからじゃ場所は特定出来ないから

 君達で探してね――


 「どうやって探すんですかぁ?

 てかぁ地球まるまるって事ですかぁ!?」


 「え、 せ、世界!?」


――大丈夫大丈夫!

 君達はもう普通の人間じゃないから

 世界を探すなんてすぐすぐ♪

 霊力を解放するとびっくりするから☆――


 「は、 はぁ…」


――ダストの反応の捕まえ方を説明するね!

 やり方は簡単、 霊数を見るのと同じやり方

 霊数の見方わかるよね??――


 「あ、 はいわかります」


――うん! それじゃあまた……えーと…

 電話するからね☆

 あと、 ご飯はちゃんと食べないとダメだよ?――


 「あ、 はい…あれ?」


 「…切れちゃった…」



美紅は何気無しに携帯の画面を見ると

日付は2010年7月4日となっていた。



 「7月4日か…。

 あたし2年前なにしてたっけなぁ…」


 「綵、 とりあえずここがどこか調べてみようよ」



美紅と綵は何か手掛かりになる物を探し始めた。













2010.7.4

am5:13




夜が明けてきた。

数時間歩き続けた美紅達はコンビニを見つけ

そこで地球へ帰って来てから初めての

人との遭遇である。

自分達以外に人間を見るのが久しぶりの2人は

思わず感激してキャッキャ騒ぐ。

まるで芸能人と会ったかの様なテンション。

コンビニの前でタバコを吸っている

中年のサラリーマンに声をかけてみる事にした。



 「あ、 あのぅ…えっと、 は、 始めまして…

 あた、 あたしは…」


 「バカッ! なに言ってんの!!

 あはは、 すいませぇ〜ん!

 ち、 ち近くに駅ってありますかぁ?」


 「………」



男は黙ったまま携帯を見ながら

タバコをふかしていた。

返事を待ってはいたがこちらを振り向く事もない。

完全なる無視である。



 「あのぅ、 …すいませ〜ん」


 「綵…他の人にしよ?」


 「…うん」



男性を後ろに首を傾げながら綵は

美紅に引っ張られてその場を後にした。

周りは住宅地が並んでいた綵は右、 左と

キョロキョロ何かを探している様に家を見ていた。

決して何処かに向かっていると言う訳ではないが

2人はとにかく歩き、 すれ違う人に話しかけてみる。

だが先程と同様に皆無視を決め込んでいた。


いや、 これは無視ではない。


美紅達が見えていないと言った感じだった。

そうそれはまるで2人が幽霊の様で…。

2人がその事に気づくまでには時間は必要なかった。



 「だよね…やっぱり」


 「じゃなきゃありえないってシカトなんてさぁ」



そう言いながら綵は近くの家の前に走って行くと

その家の前でほうきを持った女性に近寄り

女性の瞳に顔を近づけた。



 「ちょ、 ちょっと何やってんの〜!」


 「…ほら、

 こ〜んなに顔を見ても何も言わないんだから」



綵はジロジロと女性の周りを見ていると

そこに美紅がやって来て綵の腕を掴んだ



 「こっち来なって!」


 「い…痛い痛い! 痛いって!!」


 「ご、 ごめん…! だってあんな事するから」


 「いいじゃん別に見えてないんだからさぁ」


 「見えてなくてもダメなの」


 「…あんた昔からそうだよね。

 あの時も無茶してさぁ」


 「あの時って?」


 「あたしがまだ不良ぶってた時だったから

 中学かな? イジメられてた子をあんたが

 かばってボコボコんなってた時あったじゃん?」


 「あ〜ぁ、 あったあった! あの時かぁ。

 それで偶然綵達が通りかかって助けてくれたんだよね」


 「正義感がバカみたいに強いってゆーか

 そういうの許せない性格だよねあんたは」


 「……それ、 褒めてんの…?」


 「一応褒めてるつもりだけど」



そんな話をしながら2人が歩いていると

前から白髪の老婆が杖をコツコツと

地面を突きながら向かって来ていた。

2人は会話をしながら老婆とすれ違う。



 「…待ちなさい」



いきなり老婆が話しかけて来た。

振り返ると腰が曲がった老婆の背が見え

もっさりとした動作でこちらを向いた。



 「美紅と綵菜ってのは…

 あんた達かい…?」



その言葉につい嬉しくなって綵は即座に返事をした。

地球に来てから何人かの人を見てきたが

話かけられるのは初めてだった。

しかし何故この老婆は2人が見えるのだろうか。

美紅も老婆に返事を返しその疑問を投げかける。



 「あたし達…見えるんですか?」


 「…見えとるよ。

 あんた達“ダストブレーカー”なんだろ?」


 (ダストブレーカー?)


 (たぶん、 ダストをやっつける人達って事だよ。

 だからあの事を言ってるんじゃない?)



2人でコソコソとやり取りをしてる内に

美紅は自分が言った言葉に引っ掛かり

疑問が再び頭に現れた。



 「…あれ?

 どうして知ってるんですか?」


 「………」



老婆は沈黙を決めたまま口を閉ざしてしまった。

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