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15.真のステータス

「では、改めまして。ライクレイのお二人にこちらを」


 そう言って、長老は妖精石のついた可愛いブローチをライクレイ姉妹に手渡した。


「隠れよと唱え念じながら妖精石を撫でると姿を隠せます。女神からすら身を隠せるでしょう」

「俺の分はねぇのか?」

「もちろん、こちらをどうぞ」


 長老が取り出したのは、でかい妖精石のついたゴツゴツした趣味の悪い腕輪だった。

 大抵の人は似合わない、しかし2メートル超えのモヒカンマッチョなら別。そんなデザインだった。

 デザインまで気を使ってくれた妖精たちに感謝しながら、俺は腕輪を受け取った。


「使い方は同じでいいのか?」

「はい。単純に使った妖精石が大きいだけで無く、強い魔法がかかっています。これならばカーン様でも隠し通せるかと」

「……物凄く使い勝手がよくて不安になるな」

「使っている間は当人の魔力を消費しますので。お気を付けください」


 魔力か。俺の魔力ってのはどうなってるんだろうな。そろそろ魔法についてシーニャにちゃんと聞かなきゃならん。


「女神が現れ、女妖精がいなくなった危機に、ライクレイの子孫と『妖精の曙光』が神の使徒を伴って現れる。運命でしょうかなぁ……」

「良き運命であったと言えるように頑張りますわ」

「お世話になりました。本当に」

「いつかまた、落ち着いたら里においでください」


 そう言ってライクレイ姉妹の礼へ返答する長老の表情は穏やかなものだった。

 

「そしてカーン様、お気を付けて。サンシター様の加護がありますように」

「お、おう。サンシターの加護がありますように」


 サンシター神、早くも定着したか。俺が布教活動して、この世界で広がったらどうなるんだろう。

 

「それでは、フェアリーサークルまでご案内しましょう」


 こうして、俺達は妖精の里を去ったのだった。


○○○


 フェアリーサークルから森の外に出ると、俺は早速バギーを呼び出した。

 

「さて、久しぶりに愛車に乗るか!」


 キーを掲げると、目の前が強烈な光に包まれる。

 

「派手だな……ん?」

「カーン殿。三台あるように見えるのですが」


 セインの言う通り、バギーは三台あった。似たような形だが、俺のやつより一回り小さいのが二台増えている。

 

「ちょっと待ってくれ!」


 俺は慌ててノートに書き込んだ。


[カーンのノートへの記述]


 バギーが増えてるんですけれど、どういうことでしょうか?


[神様からの返信]


 私からのプレゼントです。移動手段としてご利用ください。

 また、貴方にステータス鑑定技能を付与しておきました。戦闘時にいちいち私に聞くのは効率が悪すぎると思ったからです。

 ただ、ステータスはこれまで私というプライバシーフィルターを通して不適切な情報を削除していました。

 かなりプライバシーに踏み込んだ情報が出てくることがあるのでご注意ください。



「………………」

「ど、どうだったんですの?」

「バギーが三台に増えたのは神様からの粋な計らいってやつらしい」

「おお、では私達もバギーに乗って良いのですね! 実は乗ってみたかったんです!」

「どうやって動かすんですの! 教えてくださいませ!」

「おう。ちょっと少し教習をするとしようか」


○○○


「ヒャッハー!」

「ヒャッハーですわー!!」

「…………」


 俺の目の前で、白い鎧を着た美人騎士と、露出度の高い服を着た美人魔法使いが、バギーを運転して叫んでいる。

 どうやら、普段俺がバギーを運転してるところを見て「ヒャッハー」と叫ぶものだと思っているようだ。

 俺は、とんでもないことをしているのかもしれん。


 街道から離れた平原で、運転を教えられた二人はもう二時間ほどバギーで走り回っている。なかなかの上達速度だ。

 とはいえそろそろ夕暮れ時だ。出発しなければならない。


「大分慣れて来ました。力強い走りです」

「馬よりも揺れないし、座り心地も良いですわね」

「そ、そうか。二人とも上手いもんだな」

「どうしたのですか、カーン殿。何か心配事でも?」

「いや、何でも無い……」


 実は何でもなくないのだが、それはとても口に出せることじゃない。

 原因は、二人のステータスにあった。

 神様というフィルターの取れた二人のステータスはこんな感じだった。


【シーニャ・ライクレイ】

種族:人間

職業:魔法使い兼犯罪者(馬車を襲ったため)


力 :20

魔法:143

速さ:35

防御:28

魔防:106


スキル:

・一般攻撃魔法全般L10:属性に関係なく攻撃魔法全般を使える。

・一般防御魔法全般L10:結界に代表される魔法全般を使える。

・一般援護魔法全般L10:回復、能力強化などの援護魔法全般を使える。

・古代魔法全般L4:忘れられた古代の魔法を使うことができる。主に印刷系。

・作家(微エロ)L7


備考:学生時代に友人と古代の印刷魔法を復元。友人は世界初の出版社を作り上げた。



【セイン・ライクレイ】

種族:人間

職業:聖騎士兼犯罪者(馬車を襲ったため)


力 :92

魔法:44

速さ:102

防御:78

魔防:43


スキル:

・一般防御魔法全般L3:結界に代表される防御魔法(下級)を使える。

・一般援護魔法全般L3:回復、能力強化などの援護魔法(下級)を使える。

・神聖魔法L5:神より賜る奇跡の魔法。光の至高神の神聖魔法を使える。

・神の加護L2:世界を作りし光の神から、たまに啓示がもたらされるなどの弱い祝福。

・光神騎士団剣術L8

・光神騎士団槍術L8

・腐女子L8


備考:光の神殿の優秀な騎士。数年前、帰省した姉の持ってきた本を読み、腐女子となる。



 ……作家(微エロ)と腐女子。

 正直、ステータス表示のバグだと思いたい。いや、しかし、きっと正しい情報なんだろう。わざわざ事前に「注意してください」と書いてきたし。


 作家(微エロ)も腐女子も別にいい。趣味嗜好は他者に迷惑をかけない限り自由だ。しかし、なんで二人がそんなことになったのかは非常に気になる。


 それぞれに話を振ってみたい誘惑に駆られるがいきなり「セイン、お前は美少年同士が抱き合う物語が好きなのか?」とか質問したら大変なことになると思う。

 いや、ほんとどうしたもんだろう、この情報。


「カーン様、どうしたんですの。難しい顔をして」

「体調でも悪いのですか? 魔法をかけましょうか?」


 二人が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。のんびりした口調とは裏腹に意外と凜々しい顔立ちのシーニャ、鎧姿の出で立ちに似合わず柔らかい物腰のセイン。

 どちらも性格のいい美人(しかも巨乳)だ。それでいいじゃないか。……誰にだって趣味の一つくらいある。


「いや、二人とも美人さんだと思ってな」

「あらあら、いきなり褒められてしまいましたわ」

「カ、カーン殿、いきなりなんなんですか!」

「言葉どおりの意味だぜ。よし、二人とも運転に慣れたみたいだし、行くとするか!」


 俺がそう言うと二人は頷いた。


 夕刻が近づく草原に「ヒャッハー!」という叫びを響かせ、俺達はバギーを走らせるのだった。

妖精の里編は終了です。

次回から人間の街に行きます。ようやくですね。

それとストックが尽きました…。

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