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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

子連れ騎士様

作者: 鷹村紅士

 晴れ渡る空の下、街道を歩く人影が一つあった。

 土がむき出しで、馬車が何度も通ったせいで歪に波打つ道は歩き辛く、ここを通る旅人のほとんどは道の端を通る。

 真ん中よりも比較的マシ、という程度だが、歩きやすいからだ。

 しかし今、街道を行く旅人は道の中央を歩いていた。

 その足取りはしっかりとしていて、悪路をまるで石畳の上を歩いているように安定している。さらに驚くべきなのは上半身が一切ぶれていないのだ。

 普通、人は歩く時全身が上下する。なのにそれがまったくないのだ。

 上半身だけを見ればまるで滑っているかのようで、もし他の旅人がいれば、驚いて目を見開いていることだろう。

 旅人の出で立ちは汚れの目立つ外套を頭からスッポリと被っている。足元まで隠れていて、時間帯が時間帯ならその動きと合間ってさ迷い歩く亡霊と間違われることだろう。


 ふいに、旅人が足を止めた。


 ほんのわずかに外套のフード部分が揺れる。

 周囲には柔らかくも爽やかな風が吹いている。

 街道の左右は大人の膝くらいの高さの草が生い茂っていて、青々としたそれらが風に吹かれて出す音が世界を満たす。

 周囲に目立った変化はない。

 ただ、旅人の胸元でなにかが蠢いていた。

 旅人はそっと外套の前を開き、


「どうしました? 姫様」


 そう声をかける。

 そこには抱っこひもがあり、小さな赤ん坊が笑顔で手足をばたつかせていた。


 ◇◇◇◇◇


 その日、アモス王国の王城に衝撃が走った。

 忠臣として名高き宮廷魔導師団の筆頭、導師エンディミオンが王国の至宝たる王女を拐ったのだ。

 導師エンディミオンは齢二十五にして魔導の秘奥に最も近しいとまで呼ばれる才気溢れる男であった。彼の実力は凄まじく、周辺の国には並び立つ者がいなかったほどだ。

 それほどの実力者でありながら、彼は自らの才に驕らず、常に己を律した。また周囲の人間への配慮を欠かさず、困っている者には手を差し伸べることができる優しい心を持っていた。

 彼は常に自分の持つ力を王国のために、臣民のために使ってきた。

 そんな男が、人を拐うなど、一体誰が想像できたであろうか。

 事件は王女の十五回目の誕生祝賀会で起こった。

 アモスの至宝として周辺各国から縁談がひっきりなしに届く美しい姫はその日、集まった王国貴族たち、また各国の大使たちに心からの笑顔で感謝を述べた。

 そして、挨拶を終えた次の瞬間、導師エンディミオンは姫の背後に突然現れると、姫を魔導で眠らせてしまった。

 城内には魔導の効果を無効化する結界が張られていたため、魔導師が魔導を使えるわけがないと皆思い込んでいた。

 結界を張ったのは導師エンディミオンであり、誰も破れないと。

 彼は自分のみ対象から外し、ただ一人存分に力を振るえる環境を整えたのだ。


「私はこれよりこの国を出奔する。この国は私がどれだけ身を粉にして働こうとも変わらなかった。貴族は放蕩を続け、王すら欲に負け続ける。民は己の足で立つことさえ拒否し、際限なく甘え続ける」


 その言葉に、王国の者たちは気まずそうに俯く。

 逆に他国の大使たちは嬉しそうに笑っていた。


「もはや我慢の限界だ。今までの仕事の対価として姫はもらっていく。さらばだ!」


 一方的な宣言をして導師エンディミオンと意識のない姫は城から姿を消した。


 祝賀会は急遽中止となり、国王以下重臣や貴族たちは対策を練ろうと会議を開くが、内容は責任の擦り付けあいだった。

 この行動が見限られる理由のひとつだと誰も理解せず、しようともしない。

 会議という名の罵り合いは七日ほど続いてもまったく建設的な意見は出てこなかった。


 事態が動いたのは事件から十日たった昼過ぎの事。

 国王たちが罵り合いに夢中になっていたせいで国政が滞り、民が不満を溜め込んでいるとの報せを受け、王たちが脂汗を流していたら、会議室の窓を突き破って何かが飛び込んできた。

 悲鳴をあげて逃げ惑う貴族たち。

 腰を抜かして失禁する重臣たち。

 気絶する国王。

 混沌とした状況を止めるべく、近衛騎士たちが突入した。そこでようやく会議室に飛び込んできた不審物の正体が判明した。

 魔導、『天行く報』。遠くの場所に手紙を届けるために使われる伝令魔導によって届けられた手紙であった。

 それは、姫からの助けを求める手紙であった。


『私は今、王国より北にある朽ちた遺跡に監禁されています。あの方は狂っています。早く助けて』


 慌てて書いたのであろうか、とても汚い筆跡で書きなぐられた文字を見て、国王はすぐさま逆賊エンディミオンの討伐隊を編成しようとした。

 しかし、民たちがあちこちで小規模な暴動を起こし始めたために、騎士たちを動かすわけにはいかなかった。

 そこで少数の精鋭たちを動かし、事態の解決を図ることにした。

 だが、適任がいない。

 それもそうだ。相手は最強の魔導師。たった一人で国を相手取れる存在を討伐できるほどの猛者など、いるわけがない。

 どうしたものかと悩む国王たち。

 するとそこへ、再び『天行く報』が届いた。


『姫を返してほしくば、あの生意気な騎士、ロウガルド・マクテニーを一人でここに来させなさい』


 エンディミオンからの手紙にはこう書いてあった。

 王はすぐさま件の騎士を連れてこさせた。

 ロウガルドという騎士は平民の出身で、騎士団では最下級に位置している。

 以前、姫が城下町を馬車で移動していた際に他国の手の者が襲いかかったことがあった。その時、ロウガルドは姫を助けるために奮戦し、姫に気に入られて騎士に取り立てられた経緯があった。

 そこから、エンディミオンは姫のお気に入りで平民のロウガルドが気に入らないのだと結論付けた王たちは、勅命をもってロウガルドを王城から叩き出した。


 いきなり近衛に取り囲まれ、連行された挙げ句に最強の魔導師を討伐して拐われた姫を無事に連れて帰れ、などと無茶振りをされたロウガルドは途方にくれた。

 ロウガルド・マクテニーは元々は孤児であり、山奥で世捨て人をしていた男に拾われて育てられた。

 育ての親は鍛え上げられた肉体を誇り、剣を振るえば巨大な獣すら両断する猛者であった。

 そんな彼に育てられたロウガルドは幼い頃から戦い方を教え込まれてきた。

 しかし育ての親も寄る年波には勝てず、ロウガルドが成人したくらいの頃に老衰でこの世を去った。

 ロウガルドは遺言として『世界を見てこい』と言われたのに従って旅に出た。様々な場所で様々な出会いと別れを繰り返し、その戦闘能力を活かして傭兵の真似事をしつつ旅を続けてきた。

 やがて彼はアモス王国にたどり着いた。

 さてどうするか、と悩んでいたら、大通りを進んでいた馬車がいきなり襲撃を受けていたので思わず助けに入ったことで彼の人生は大きく変わる。

 襲われていたのがアモス王国の姫であり、なぜか彼女に気に入られたロウガルドは王国騎士団へ入隊を薦められた。あまり堅苦しい生活は嫌だったので最初は断ろうとしたのだが、今まで粗野な生活ばかりしていたロウガルドにはお貴族様の上手いあしらい方が分からず、結局入隊するための試験に参加する羽目になった。

 結果、武力は騎士団最強を軽々と圧倒。ただし知識の方は壊滅。

 騎士は文武両道であらねばならず、これでは合格は無理かと思いきや、姫がごり押ししたせいで合格し、最下級の騎士としての生活が始まった。

 三十歳の時である。

 騎士団での生活は大半がつまらぬものであった。日々雑用を押し付けられ、周囲は敵愾心をむき出しにされる。

 けれど雑用など簡単なことしかなく、他は専門の使用人がいるために手を出す必要はなかった。さらにロウガルドの武力は圧倒的なせいで暴力を振るわれることもなかった。せいぜいちんけな嫌がらせをされるくらいだった。

 ただ、一番困ったのは姫が頻繁にロウガルドの下に訪れることだった。

 何がそうさせるのか彼には分からないし、聞いても秘密だと言ってはぐらかされるだけ。

 そんな生活をしていたせいか、別に国への忠誠心や帰属意識はない。

 それと同時に、最強魔導師は姫を好きで、まとわりつくロウガルドを邪魔に思っていたのだろう。これを期に姫を手に入れ、ロウガルドを自分の手で殺そうという腹積もりか。

 そうとしか思えず、ロウガルドはこのまま逃げるか、とも考えた。

 しかし姫のおかげでおいしい思いをしたのも事実。その恩を返すために動こうと決めたロウガルドは、自宅から愛用の装備を引っ張りだし、使い道がなく溜め込んでいた給金を惜しみ無く使って支度を整えると、さっさと王都を出た。


 エンディミオンが姫を監禁しているとされる北の遺跡は、とても遠い。

 実際には三つほど国を越え、さらに人の住めない不毛の荒野を進んで、果ての山とも言われる険しい山脈の麓にあった。

 ロウガルドは道中、商人の護衛やら盗賊退治などで資金を稼ぎつつ北へ進んだ。

 彼が最北の国に着いたとき、事件から一年半が経過していた。

 不毛の荒野は食料もなにもないため、盗賊から接収した馬を数頭に積めるだけの物資を積んで荒野に入った。

 それから百日ほどかけてなんとか遺跡に到着したロウガルドは、入り口付近の廃墟で一夜を明かした。

 いくら鍛えているとはいえ、流石に長い旅をしてきたロウガルドも疲れきっており、英気を養いたかった。

 目が覚めると目の前には魔導師と姫がいた。

 エンディミオンは元々細い体格であったが、久々に見た彼はより細くなっていた。頬はこけ、目の下には隈があった。

 逆に姫は変わらず美しいままだった。

 こんな、何もない辺境でも髪の毛は艶やかで、肌は滑らかで、ドレスもまるで新品同然で、とても嬉しそうに笑っていた。

 慌てて動こうとしたロウガルドであったが、全身が縛られていて身動きが取れず、ただもがくばかり。

 そんなロウガルドにドレス姿の姫はゆっくりと近づき、彼をの頭を抱き締めた。

 驚くロウガルドを他所に、エンディミオンは高らかに詠唱を始める。風が渦を巻き、床に刻まれていた魔導陣が妖しく光り出す。

 こうなれば彼にはどうすることも出来ない。否、最初から勝てる見込みはなかったのだ。

 ロウガルドは静かに目を閉じた。


 瞼を閉じていても感じるほどの光が収まると、ロウガルドは体に違和感を感じた。

 頭を抱え込んでいた姫の温もりはなくなり、全身を締め付けていたロープの感覚もない。それにしっかりと装着していた防具の感覚も。

 目を開けて周囲を確認すると、場所は遺跡の中で、先程まで姫とエンディミオンとでいた場所であっった。

 今はエンディミオンの影も形もなく、魔導陣も見えない。

 ただロープがほどけていて、自分の防具も散らばっていた。よくみるとインナーもブカブカで、まるで自分の体が縮んだようにかんじた。

 事実、彼の体は縮んでいた。正確に言えば若返っていた。無精髭を生やした三十過ぎの男が、成人したての十代半ばの少年へ。

 一体何が起こったのか分からず、混乱したロウガルドにさらに追い討ちをかけたのは赤子の泣き声であった。

 起き上がったロウガルドのすぐ側には豪奢な、先程まで姫が着ていたドレスにくるまれた赤ん坊がいた。

 混乱の局地にいたロウガルドはとりあえずドレスごと赤ん坊を抱き上げてみた。

 すると赤ん坊はピタリと泣き止み、笑顔で手足をばたつかせた。


 一先ず街に行って落ち着こうと思い、身支度を無理やり整えたロウガルドは赤ん坊を抱いたまま馬たちの下へ急いだ。

 そこには物資を限界まで積んだ馬たちがいた。ここに来るまでにほぼ全ての物資は使いきっていたはずなのに、それが補充されていたのだ。

 もう何がなんだかわからないロウガルドは馬に飛び乗って早くこんな場所から離れたかった。

 なのに、鐙に括り付けられた手紙が再び邪魔をした。

 苛立ちながらもロウガルドは手紙を読む。

 赤ん坊は姫御本人であり、あの魔導陣は若返りの効果があって姫とロウガルドは十五と少し程若返ったこと。馬には荒野を越えるための水と食料のほかに、姫の世話のために必要なものが詰め込まれていること。旅している間に王国はクーデターによって王族が全員処刑されたため、このままどこか別の場所にいけとの忠告。あとは赤子の世話の仕方を記した本が荷物のなかにあるからそれを参照すること。

 手紙にはそんなことがびっしりと書かれていた。


 ◇◇◇◇◇


 ウフ、ウフフフフ!

 ああ、今わたくしはロウ様に抱き締められている! ああ、ダメ、鼻血出そう!


 ああ、失礼しました。

 わたくし、エミューラ・リューン・アモス、アモス王国の王女だった者ですわ。

 今は赤子にまで逆行して、愛しいロウ様に抱き締められてますの!

 わたくし、王族に生まれましたが王宮での生活に嫌気がさしておりました。

 わたくし、一度見聞きしたことはすぐに覚えてしまうので幼い頃から才女として周囲からちやほやされてきました。もちろん、ただ覚えるだけでなくダンスや馬術などすぐに実践できる程の運動能力もありました。

 さらに至宝とも呼ばれる美貌もあって、王族の中では一番の人気を誇っておりました。

 他人からすれば羨ましい限りでしょう。実際、そう言われ続けましたし。

 でも、それらのせいでわたくしは常に狙われてきました。

 筆頭は血の繋がった家族でした。

 実の父は自分より人気のあるわたくしを疎ましく思いつつも、実の娘に劣情を抱くような下衆でしたし、母は王の寵愛を奪う敵としてわたくしを見てきました。

 兄や弟たちは自分達の立場を脅かす邪魔な存在として命を狙われて。臣下である貴族の男たちには美貌と権力のために。他国の間者には自国へのいい土産として。

 もう、うんざりです。

 唯一の楽しみが城下の孤児院への慰問でした。子供たちは裏表がなくて楽でしたから。

 けれどある日、慰問の帰り道で堂々と襲撃を受けてしまいました。護衛に騎士がおりましたが、容易く首を刈られてしまって……精鋭だと豪語してましたのに。

 わたくしは死を覚悟致しました。こんな場所で死にたくはありませんでしたが、見ず知らずの者たちに誘拐されるなんて真っ平御免ですわ。懐剣を握りしめ、呼吸を落ち着けようとしました。

 その時です! ロウ様が助けに入ってくれたのです! ああ今での鮮明に思い出せますわ。長年の旅のために刷りきれた外套を翻し、使い込まれた愛剣を振るうそのお姿。敵を見据えるその鋭い眼差し。敵を切り伏せた後、わたくしへ見せてくれた柔らかくて優しい微笑み。

 アア、アア、タマリマセンワー!

 あの笑みだけでパン一斤ペロリイケますわ! ミルクもゴクゴクですわ!

 しかもお声が低くて、聞き取りやすいのもグーットですわ。

 わたくし、決めましたの。このまま王族として怯えながら暮らすより、愛しいと思える殿方の伴侶として幸せを掴もうと!

 そう。わたくし、ロウ様に恋をしました。こんな気持ち初めてです。

 わたくしの我が儘で自由を愛するロウ様に窮屈な生活を強いてしまいましたが、あのままお別れをするなんて耐えられなかったのです。

 練兵場で汗を流すお姿は絵にして永遠に飾っておきたいほどで、鍛えられた肉体はもう……うへへ。おっと失礼しました。

 あれから秘密裏にわたくしは炊事洗濯など、平民の生活に欠かせないことを学びました。

 おいしいお料理を作ってさしあげたい。

 一日頑張って働いて汚れた服を洗ってさしあげたい。

 そしてわたくしの全てを……きゃーはしたない! でも、そうしたい!

 あとはどうやって王族から抜け出るかで悩みました。

 できれば穏便に行きたかったのですが、それも無理そうだったので、どうせなら派手にやりましょう。そういうことでわたくしは最強魔導師エンディミオン様を巻き込みました。

 彼は国を正そうと頑張っておりましたが、如何せん周囲が聞く耳持ちません。力で押さえつけるなら兎も角、対話と友愛で解決するには腐敗と強欲が蔓延りすぎていましたから。

 あと、エンディミオン様も恋仲のご令嬢がおりまして。実はこの方が平民の方で、貴族令嬢などよりも器量が良く、エンディミオン様を心から愛しているのが一目でわかりましたわ。

 でも、最強魔導師と婚姻するには障害が多く、エンディミオン様も苦労しておりました。

 わたくしの計画に、エンディミオン様は最初は渋っておりましたが、恋人が某貴族の馬鹿息子に乱暴されそうになった事件を期に賛同の意を示して頂けました。

 ちなみにその乱暴されそうになった恋人さんを助けたのはロウ様でして、馬鹿息子は数日後、自室で変死体になっていたそうですわ。

 コワイデスワネー。

 国を見限ったわたくしたちは今回の事件を起こし、ロウ様を王国から引き離しました。

 その間にエンディミオン様は恋人さんとその家族を転移魔導で遠く離れた街に引っ越しをさせ、ロウ様が来るまでわたくしは花嫁修業に勤しみました。

 頑張った甲斐もあって免許皆伝をいただきました!

 その間、エンディミオン様は古代遺跡で発見されて、復旧途中だった時空間魔導陣を完成させました。

 エンディミオンは随分前に復旧させ、実験して効果を検証されていたのですが、功績を独占したい他の魔導師が作業に参加させてくれなかったのです。

 愚かですわね。

 そしてわたくしとロウ様は魔導陣の効果によって若返りました。

 ただ逃げてもあの粘着質な貴族たちは追っ手を差し向けてくるでしょうから、こうして年齢を誤魔化せば発見されることはないでしょう。

 どうせならロウ様と同じ年齢になりたかったのですが、これも愛ゆえの行動です。

 ロウ様にはわたくしの全てを受け入れて頂きたいのです。

 ロウ様にオシメを変えていただき、ミルクや離乳食を食べさせて頂く……うふふ。

 数年は不自由な生活を強いてしまいますが、成長した暁には全身全霊をもってご奉仕させて頂きます。

 殿方は若々しく未成熟な果実を貪るのを好むそうなので、存分に食べていただきますわ!


 ◇◇◇◇◇


 アモス王国がクーデターによって崩壊してから数年後、遠く離れた辺境の村に一人の若者と小さな女の子が住むようになった。

 若者は卓越した剣技で田畑を荒らす害獣や盗賊などを撃退し、村人たちに好意をもって受け入れられた。

 村娘たちはこぞって若者の気を引こうとしたが幼い少女がそれを頑なに邪魔をした。

 やがて娘たちの誘惑は鳴りを潜め、少女は蕩けるような笑顔で甲斐甲斐しく、熟練の主婦の如く若者を世話した。

 数年後、少女が成人を迎える頃、村の若者たちの誘いを全て断った彼女は獣のように育ての親ともよべる男に襲いかかり、既成事実を作った。

 二人は晴れて夫婦となり、仲睦まじく暮らしたそうな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 喰われたのか……お幸せに……?
[良い点] 姫様が一番怖いよ~ この人お赤飯来てすぐ襲ったんじゃないだろうか。 これが愛なのか。
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